【インタビュー】冬ならではの楽曲を集めた3rd EP「narrow」。楠木ともりが作り出す世界には可能性しかない!

2021年11月14日 12:000

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みずから作詞・作曲するシンガーソングライターとして、声優アーティストの中でも、強い存在感を放つ、楠木ともり。普段見せる21歳の明るくナチュラルな表情とはうらはらに、表現者としてのすごみまで感じさせる作品をリリースし続けている。
そんな彼女の最新EP「narrow」のリリースが決定。表題曲「narrow」をはじめ、全4曲を収録した本作は、“冬を感じさせる1枚”として、やさしく温かな楽曲が中心となっている。自身の誕生日である12月22日とクリスマスイブの24日には、メジャーデビュー後初となる有観客ライブの開催も決定。若き才能を目撃してほしい!

表題曲「narrow」を筆頭に、冬らしい曲を集めたEPになりました


── 2nd EP「Forced Shutdown」に続いてのインタビューとなります。約半年の時間がありましたが、楠木さんにとってどんな時間でしたか?

楠木 声優のお仕事がかなり充実してきて、いろいろな役に挑戦させていただきました。演じることは自分以外の誰かになることなので、今まで思いつかなかった考え方が自分の中に入ってくるんです。また、多彩な作品の世界観に触れることによって、自分のやりたいことも豊かになってきたような気がして、生まれてくる曲も少しずつ変わってきたなと思います。

── 役を演じる中で、心が受ける刺激というものは、かなり大きいのでしょうね。

楠木 プロファイリングみたいに、そのキャラクターの気持ちや思考回路、行動パターンを分析していけばいくほど演じやすくなるので、そういう体験を重ねていると、自分自身の考え方も変わる気がします。

── キャラクターをしっかり分析して、収録に臨むタイプなんですね。

楠木 そのキャラクターは普段どんなことを考えているんだろうとか、どうしてその発言をしたんだろうと、その人の心のあり方を大きくとらえて、実際に演じるときは、演技パターンをあまり決め込まないようにしています。お芝居は共演者の方の出方によっても変わっていくものですし、そのキャラクターの考え方というか、その人の核の部分だけを固めて、現場で思いついたものを出すことが多いです。

── キャラクターの本質を理解すれば、おのずとその人に合った演技ができるということですね。演技と曲作りはきっと心の中で密接に結びついていると思うのですが、楠木さんは普段から曲を書きためていくタイプなんですか?

楠木 今回のEPで言えば書きためておく時間はなく、スケジュールに追われながら曲作りしていました。2nd EPのイベント稼動がひと通り終わったあたりから曲を書き始めたので、すぐに3rd EPの制作に移っていった感じですね。インプットする時間が、ちょっと欲しかったなあというのはありました(笑)。

── 忙しい中で制作していった3rd EP「narrow」。全4曲、どれにも冬らしさを感じました。でも、今のお話だと、曲を書いたのは主に夏の間ですよね。

楠木 冬ってどんなだったかな?と思い出しながら、曲を書いていました。でも、夏か冬かで言ったら、私は冬のほうが好きですし、曲にもしやすいんです。

── 冬のどういうところが好きですか?

楠木 まず単純に自分の誕生日が12月22日で、そのすぐ後にはクリスマスとお正月があってイベントが多いことと、寒さには弱いんですけど、寒いという状態は好きなんです。冬ならではの匂いだったり、みんなの着ている服だったり、街のイルミネーションがきらびやかだったり、コーヒーのクリスマスブレンドが深煎りで心がホッとしたり、冬の曲にも好きなものが多くて、いろいろなことに五感が刺激される季節だなって思います。その分、歌にもしやすいんです。

── 4曲はどういう順番で作っていったんですか?

楠木 「タルヒ」が最初で、ほぼ同時に「熾火」を作って、次に「narrow」、最後に「よりみち」でした。

── YouTubeでのビデオのアップも「タルヒ」が最初でしたね。

楠木 「タルヒ」のリリックビデオ、「narrow」のミュージックビデオ(MV)、「よりみち」のリリックビデオと来て、最後に「熾火」のリリックビデオを公開しました。

── どれも素敵な曲です。1曲ずつ詳しくお話をお聞かせください。


「narrow」は、今までに作った曲とストーリーがつながっているんです



── まずは表題曲の「narrow」。温かくて、冬らしい曲だなと思いました。

楠木 今回の4曲の中でもっとも冬を感じさせる曲になったと思います。歌詞では、冬の光景を頭の中で思い浮かべて具体的な情景描写ができましたし、サウンド的にも冬感があり、聴きやすさを重視して作っていきました。

── タイトルの「narrow」は、歌詞には出てこない言葉ですね。

楠木 「狭い空」という言葉が歌詞に出てきて、そこから取りました。この曲は東京で路上ライブをしている子が主人公なんです。「狭い空」は東京の象徴だと思って、そういう意味で「narrow」とつけました。それからこの曲は、1stEPに収録されていた「ロマンロン」と「僕の見る世界、君の見る世界」の主人公同士が出会うストーリーにもなっていて、世間の狭さというか、都会の片隅で偶然出会うという意味でも「narrow」にしました。

── 以前の曲とストーリーがつながっているんですね。とても面白い試みです。

楠木 実は今回のEPは、今までの曲の登場人物同士を出会わせたり、掘り下げたりという仕掛けを入れていて。そういう作り方を今後は取り入れていこうと思っているんです。

── この手法は、どのようにして発想したんですか?

楠木 初回生産限定盤にも収録されている『Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」』を構想しだした頃に、思いつきました。朗読と歌を交互に披露する配信ライブだったんですけど、朗読によって歌詞の世界観を補完することで、歌詞のストーリー性をより楽しんでいただこうという試みだったんです。それを踏まえて、曲と曲のストーリーがつながっていたら、より楽しんでいただけるんじゃないかなと思うようになりました。

── 楠木さんの歌詞全般に言えることなんですけど、描写が具体的すぎない分、聴いている側としては自由に想像をふくらませることができて、それが心地いいんですよね。

楠木 ありがとうございます。ドラマがある歌詞を書くときは、こういう人とこういう人がいて、こういうことがありましたとはっきり書くことはせずに、聴いてくださる方の想像に任せたいなと思っていて、意識的に具体性を消しているところがあると思います。それに私自身、これが正解ですとズバリと答えを提示されるような歌詞が苦手というか、聴いていて距離を感じてしまうんです。

── 歌詞の中に具体的な描写があったとしても、これはどういうことだろう?と思わせる余白があると言い換えてもいいかもしれません。「narrow」で言うと、抽象的な言葉が続く中に「何度も見せてくれた イヤホン外す仕草」という具体的なアクションが唐突に入ってきて、これはどういう意味なんだろうと思いながら、聴いていました。

楠木 これは路上ライブを見に来てくれたお客さんの動きをあらわしているんです。私は普段、イヤホンでお気に入りの音楽を聴きながら街を歩いているんですけど、新宿で路上ライブをしている人を見かけたとき、気になってイヤホンを外したんです。そういうふうに歩行者がイヤホンを外して立ち止まってくれることは、路上ライブをしている人にとってはすごくうれしいことなんだろうなと思って。そして、いつかは自分の音楽が、その人のイヤホンから流れている音楽になったらいいなと。

── いつかはCDデビューして、ヒットを飛ばして。

楠木 はい。「何度も見せてくれた イヤホン外す仕草」というフレーズは歌詞の中で2度出てくるんですけど、最初は外してくれたことがうれしくて、2度目はイヤホンを外す仕草をもう見なくてもいいようにがんばろうと。そういう主人公の成長というか、考え方の変化を書き分けてみました。

── なるほど。主人公のそういう考え方の変化が、表現されていたんですね。

楠木 そうなんです。主人公の心情を具体的に書きすぎないように気をつけて、なんとなく「こういうことかな?」と思っていただけるくらいの表現を目指しました。こんなふうに、どこか心に引っかかる歌詞を書くのが理想なんです。リスナーのみなさんもいろいろな考察をしてくださって、それを読むごとに、なるほど、ここはこう聞こえたんだ、ここはこう解釈してくれたんだと、私自身も発見があって面白いです。リスナーさんの解釈が次の曲のヒントになることも多くて、「みんな、ありがとう」という気持ちです(笑)。

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