CGアニメーターにも個性はある! 業界で活躍しながら自主制作でも己を貫く、坂野友軌インタビュー【アニメ業界ウォッチング第83回】

2021年10月29日 11:00

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この表現でなくても、アニメ好きの人たちは受け入れてくれる。それでも……


── 今は、毎日同じスタジオに出社されているそうですが、そのメリットは何か感じますか。

坂野 毎日行く場所があって、同じ人がいると、それだけで精神的に安定するのは事実だと思います。もちろん、一定の報酬が支払われるので、生活が安定する点も無視できませんが。

── 自主制作は、自身で権利を持てることがメリットですが、いっぽうで、仕事として参加した作品に関しては異なりますよね。そのあたりに関しては、どのように捉えてますか?

坂野 それもひとつの事実ですが、仕事で担当したカットは、たとえ自分に何の権利もなくても、「これは僕のカットだ!」と言い張ります。そういう意味では、自主制作のカットも、仕事のカットも、でき上がったものに対しては同じように愛着を持っています。

── 「夜を発つ」は、最終的に「インターナル・アスリート」というひとつの作品になるとのことですが、こちらに関してはどのような展開を想定されてますか? 例えば、商業アニメとして作りたい、とか。

坂野 少なくとも、業界で演出や監督になるために「インターナル・アスリート」を作っているわけではありません。正直なところ、自分で独立してコンテンツを発信して、何とか自分ひとりだけでも食べていけないかな、というくらいの展望しか持ってないです。無責任なようですが、本当に自分ひとりで作っている作品で誰にも迷惑はかけていないので、今のところはそれでいいかな、と。


── だけど、商業アニメと同レベルのクオリティにしたいわけですよね?

坂野 完成度に関して言えば、そもそも戦う気がありません。そういった部分は、それこそ商業アニメのほうで、いくらでもできると思うので。ただ、表現としての新鮮さ、「こんなの見たことない」と言える新しさに関して言えば、勝てる部分もあると思います。そのあたりに関しては、同じレベルにしたい、というよりも、負けはしないだろう、というくらいの気持ちでやっています。

── 今回「夜を発つ」が話題になりましたが、この先視聴者はどんなアニメを求めると思いますか。

坂野 「夜を発つ」は自分の作品としては、とてもたくさんの方に見ていただけました。しかし、「夜を発つ」を見て賞賛してくださった方たちが、どうしてもあの表現でないといけないかで言えば、そうではないように思うんです。もっとカジュアルな表現で、かわいい女の子のキャラクターが出てきて……というアニメであっても、同様に受け入れてもらえるでしょう。アニメを好きな方たちはやさしいですし、多様なものを受け入れてくださいますから。ひねた捉え方かもしれませんが、そのあたりは自覚しておくべき事だと思っています。「面白いものなら、何でも見たい」という方が多いのではないでしょうか。しかし、だからといって僕は、自分のアニメを必要十分なものに変容させていく気はありません。自分の中にも、3DCGの中にも、未知なるアニメーションの可能性を感じていますし、それを形にしていくことが、そもそもの目的だからです。そんな調子で作っているので、作るのにも時間はかかりますし、予定も立たなければ、展望も持てないようなことになってしまっているのですが……いずれにしても、毎日できることを続けていくしかないように思っています。

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