感動のラストライブに辿り着くため、男たちは演出を積み重ねたSAGA!「ゾンビランドサガ リベンジ」特集第3弾──境宗久(監督) × 宇田鋼之介(演出)× 清水久敏 (演出)インタビュー

2021年10月15日 16:180

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2021年4月から6月に放送され、話題を呼んだアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」。本作の裏側を探るインタビュー連載も今回で最終回!

連載第3回目は第10話から第12話にかけて、絵コンテや演出を手がけた、「ゾンビランドサガ」シリーズの中心人物、境宗久さん、宇田鋼之介さん(演出)、清水久敏さん(演出)に集まっていただき、ラスト3話の話を中心に、制作の裏話などを話していただいた。

 

10月16日、17日にはライブイベント「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」も開催され、まだまだ熱が冷めやらぬ本作を、インタビューを通じて改めて振り返ってみよう。

 

 

「ゾンビランドサガ リベンジ」を終えて──それぞれの第2期での担当は?

 

ーー「ゾンビランドサガ リベンジ」を終えた感想をお願いします。

 

清水 第1期は頭から関わっていたのですが、やりがいがあって楽しかったんです。ただ第2期は、自分が別タイトルに関わっていたこともあって、横目で見ながらうらやましいなと思っている感じでした(笑)。

 

その後、自分の仕事が終わってから合流したのですが、最初に取りかかったのが第12話のAパートのコンテだったんです。それまで横目で見ていたとはいえ、深く関わっていたわけではないので、自分の中でのキャラクターに対しての思い入れとか、どのくらい成長しているのだろうという想像がまだまだしっくり来ていなくて、そこは大変でした。

 

その感覚をつかんでからは、キャラクターも勝手に動いてくれたんですけどね。第2期の前半に関わっていなかった差分に少しだけとまどったかなと。その後に、10話の演出に入るという時系列になります。

 

ーー最終話は大ボリュームでしたし、ファンの反応もすごかったです。

 

清水 僕としては、全然尺に収まらなくてどうしようって思っていましたけどね(笑)。僕の担当部分だけで結構なページがいっていたので、ライブ分も考えると物理的に収まらない。そこからがんばって調節はしていくのですが、最終的に「あとはよろしくお願いします!」と監督にお任せする形になってしまいました……。

 

 この絵を見せておけば話は通じるだろうというところは、それで通したりしながらね(笑)。

 

清水 その前の10話と11話で宇田さんが入られていることがわかっていたので、そこまでの盛り上がりとか、キャラクターの到達点みたいなものは僕の中で担保できていると思っていたので、それをどうやってならして、今いる場所からスタジアムまで移動させるか、というところでした。

 

 

ーー宇田さんは、率直に第2期を終えていかがでしたか?

 

宇田 僕も絵コンテに時間がかかっちゃったんですよね。しかも尺はオーバーしてしまうし。そのまま監督に丸投げして「すみません!」っていう感じでしたけど(笑)。

 

清水 僕もそんな感じでした……。

 

宇田 でも単純に楽しかったですよ。そう思える作品って少ないと思うんですけど、「楽しい!」と言える作品のひとつでした。

 

ーーどういうところが楽しめた要因なのでしょう?

 

宇田 やっぱりキャラクターが生きていますよ。コンテを切っていると勝手に動き出すときがあって、それぞれの悩み、それぞれの生い立ち……といっても死んでいるんだけど(笑)、そういう流れがあるんです。各キャラクターが個性的だったから、この子はこう言うだろう、こう動くだろうというのがつかみやすかったです。勝手に動くっていうのが、いちばん楽しいんですよ。

 

清水 なんか見えてきますよね。

 

宇田 で、尺をオーバーするんだけど……(笑)。

 

 このキャラはこう動くだろうというのはどの作品でもあると思うんですけど、あまりテンプレート的ではないのが「ゾンビランドサガ」だなと思っていて。こういう子だという個性はあるけど、前に取った行動と同じにはならずに一歩一歩成長しているんです。そういうステップアップがあるから、動かしやすいというのはあるんだろうなと思います。

 

 

ーーリアルに成長していっている感じはしますよね。ちなみに尺のオーバーって、どう調整するのですか?

 

 尺はオーバーするものだと開き直っているところはあるんですよ。実際にコンテに起こしてみてから、展開を練り直したり、間の芝居の段取りを考え直したりしていく。

 

清水 もちろんある程度考えながら描いているんですけど、もう少しブラッシュアップできないかとか、余計なことをしているんじゃないかと試行錯誤するんです。

 

 いったん紙に起こすまで、いろいろと考えているからね。

 

宇田 もう僕は、尺のこととか考えてないなぁ(笑)。自分は、頭の中でフィルムを作ってからコンテに起こすタイプなので、いちばん気をつけるのは盛り上がりをどうするか、山をどうする谷をどうするということ。そんな計算ばかりしながらフィルムを浮かべて、これなら行けるかな、というところでコンテにするんです。でも途中で変わってしまって、どうしようってなるんだけど(笑)。

 

 それこそキャラが勝手に動くと、そっちじゃないんだけどなってなりますよね(笑)。

 

宇田 だから、あとは編集で何とかしてください!っていうと、案の定、キャラが勝手に動いたところが編集でばっさりカットされるという(笑)。

 

 もどかしいのは、尺をオーバーするとお話に関係ないところから切っていくことになるんです。だからギャグの部分は切られがちなんですけど、それがすごくもったいないなぁと。

 

清水 大塚さん(大塚 学/MAPPAプロデューサー)も、「あの渾身のギャグが……」と言ってましたからね。

 

宇田 そういうところが、実は面白かったりするんだよなぁ。

 

清水 そうなんですよ(笑)。僕らもそう思ってはいるんですけど、収めるためには……と。

 

 

ーー泣く泣くカットするんですね。絵コンテは、アニメの設計図とよく言われますが、演出はそれを処理していく各話数の監督のようなところがあります。通常同じ人がやるほうがいいとされていますが、今はスケジュールの関係で、分けてやることが多いそうですね?

 

清水 基本的にはスケジュールの関係で絵コンテと演出を別の人が担当しているのですが、それは昔からなんです。あと、演出は、絵コンテを描くまでには至らないけど、という新人育成の意味もあったりするんですよ。

 

 僕は基本的に、絵コンテと演出は同じほうがいいと思っているので、この作品でも、なるべく同じ方でやれるようにと組んでもらっているんです。

 

ただそれでも「この人にはコンテをもう1本お願いしたいから、演出はほかの人に入ってもらい、次のコンテを描いてもらう」という組み方もするので、仕方なく……という言い方が正しいのかわからないですが、演出を別の方にすることはあります。でも、フィルムの流れやカットのテンポは、コンテを描いた人が自分の感覚でフィルムに落としていくべきだと思うんです。

 

清水 ただ、自分の絵コンテの演出ばかりをしていると面白くなかったりもするんですよね(笑)。

 

宇田 それはあるねぇ。

 

清水 これは個人的な意見なんですけど、自分のコンテだけだと同じことの繰り返しになってしまって、新しい技術を知れなかったりするんです。他人の思考に触れられるという意味で、ほかの人のコンテを演出するというのは、チューニングのし直しではないですけど、すごく勉強になるんです。

 

あと演出って、そのコンテに至った考えをいかに汲み取れるか、読み取れるかの勝負なんですね。それでいて演出は監督のやりたいことも再現しなければならない。しかもただ再現するだけではなくプラスアルファをどうすれば出せるかも考えるんです。だから、そういうトレーニングにもなるのかなと思います。

 

先ほどの新人育成の話ですが、ベテランの絵コンテの演出をやって全体の流れを覚えると、それまでコンテに苦戦していたのが嘘のように描けるようになったりするんですよ。基本的にコンテ・演出はひとりでやるというのはありつつ、この世界で長く生きていくためには、つまみ食いもしたほうがうまくいくこともあるんです(笑)。

 

宇田 それはそうだねぇ。これだけキャリアを積んできても、他人の絵コンテを演出するのって面白いから。

 

 

ーーちなみに絵コンテから演出をするときは、コンテマンと演出が打ち合わせをするのですか?

 

宇田 コンテマンと演出ということはあまりなくて、監督と演出が打ち合わせをするんです。

 

清水 絵コンテを誰がやっていようが、監督が最終的に確認をして、これはOKだよと通しているものなので、監督のものになるんです。

 

ーーちなみに逆のパターンで、自分のコンテを他人が演出したのを見るときは、どう思うのですか?

 

清水 それは……。

 

 言葉が濁っちゃうかもね(笑)。

 

宇田 あはははは(笑)。(清水くんは)素直だなぁ。

 

清水 まだ若いので……。

 

 結局演出はどう絵コンテを汲み取るかで、それを理解して、そこから具体的にカットごとに演出を入れたり、タイミングを取ったりしながら最終的に自分のフィルムにしていく仕事なんです。だからコンテを読み取れていなかったり、意図が伝わっていなかったりするのが見えてしまうと「うーん」と思うときがある、ということなんです。

 

清水 なるべくそうならないよう、日々努力するしかないんですけどね。でも、処理がうまい人というのは業界にもいて、そういう人たちは、ちゃんと押さえているし、その上で上乗せをしたりするから、見ていて面白いというときはあります。

 

でもキャリアを重ねてくると、逆につたないところとかも見えてきてしまったりするわけですよ。そうなると「あっ」って思ってしまうという。あと「俺も昔はこんなふうに思われていたんだろうなぁ」と、昔の苦い記憶が蘇ってきて、そっと映像を閉じるんです(笑)。

 

 

3人が活躍した第10話~第12話。フランシュシュがリベンジを果たすまでを振り返る

  

ーー第10話「ゾンビたちはどう復讐するのか SAGA」は、絵コンテが宇田さんで、演出が清水さんになります。

 

宇田 10話は、構成が難しかったです。

 

ーー第1話のスタジアムライブでの大爆死があり、そこに至るまでの話を10話でやっていました。

 

宇田 だから「金田一(少年の事件簿)」をやっているような気分というか。

 

 解決編みたいな。

 

宇田 そこで監督に聞いたのは「日付を書いていいか」ということです。日付をテロップでドーンと出さないと、視聴者もわからないと思ったんです。なんせその前の話数が時代劇だったから、いきなり現代の話をされてもついてこれないだろうと(笑)。

 

盛り上げどころは難しかったです。これをどう面白く見せようかなと思って、自分の中では対象年齢を少し上げてしまったんですよね。

 

 でも、それこそ「佐賀事変 其ノ壱・其ノ弐」を経ているからね(笑)。

 

宇田 そうだね(笑)。

 

清水 だから落ち着いた話数で、ちょっとオトナな感じだなとは、絵コンテを受け取ったときに思いました。

 

宇田 「金田一」と言ったけど、僕の中では「刑事コロンボ」をやっているようなつもりでやっていたのを思い出しました。

 

 

ーー盛り上がりどころでいうと、たえが化粧をしてくるところの長回しからの、自分たちで動こうとさくらが言うところと、幸太郎が謝るところは、盛り上がったのかなと思います。

 

宇田 あはははは(笑)。長回し、ありましたね。あれは苦肉の策です。

 

 でも、フランシュシュのメンバーが幸太郎に頼らず、自分たちで動くというところは大きいですね。「ゾンビランドサガ リベンジ」を通して、メンバーが能動的に動いていくというのが全体の流れになっていたので、どうやってそのきっかけを得たのかという話だったんだと思います。

 

ーーフランシュシュが自立し、幸太郎も自分の間違いを素直に謝り同じ方向を向く。でも、そのシリアスなシーンから、いきなり炎がメラメラ燃えるような展開で、「聖闘士星矢」みたいだなぁと思いながら見ていました(笑)。

 

宇田 「聖闘士星矢」とかロボットアニメとかですよね。

 

清水 あとは、’80年代のサンライズのアニメとか。

 

宇田 元ネタを言ってしまうと、絵コンテを描いている時にある料理アニメを見ちゃったんですよね(笑)。キッズステーションで流れてて。

 

(一同笑)

 

清水 でも、その作品のルーツをたどると「ミスター味っ子」だったりしますから、サンライズ系も遠くないですね(笑)。僕も、なるほどねと思いながら演出をしていました。

 

 

ーー演出は清水さんですが、コンテを受け取っていかがでしたか?

 

清水 絵コンテを見て思ったのは、基本的には解説なんです。解説って実は話を聞かせないといけないので、画面として面白いことはあまりやってはいけないんです。その中で変なカットがあると、「あれですね!」って思うんですけど(笑)。

 

ただ、やっぱり難しかったです。盛り上がりどころも難しかったですし、ある意味第1話で結末が示されてしまっているので、そのオリジンを描く難しさみたいなところがあって、どうしようと思いながらやっていました。

 

 いちばん難しいのは、見ている人が結果を知っているということで、音楽を付けるときも悩んだんです。Aパートもこの先どうなる?っていう、あおる曲が付けられない。見ている人は結果的にライブが失敗するのをわかっているから、そこを後押しする曲ではなく、見ている人が結果を思い浮かべてこの状況を見ている感情の音楽、みたいなややこしい付け方になるので、難しい構成でした。

 

清水 シナリオ的にも、ほかの話数だと小ネタがちょこちょこ入るんですけど、ここではあまりないので、そういう意味で笑わせるという手が使えなかったから、誠実にていねいに作るしかないなと(笑)。あと、長回しのところは、僕は楽しんでやっていました。

 

宇田 シートチェックが大変だっただろうなって。

 

清水 でも枚数が多いだけで、たいして動かさなかったので。ああいうシーンは、動かしすぎたら面白くないんです。要するに緊張感を強いるというか、視聴者に集中させて、セリフを聞かせたいところだったので、変に動かすとあまり面白くない。だから動きも最小限にして、セリフのタイミングや間合いを調整する感じだったので、あまり苦労しなかったんですよね。

 

なので、全体としてどうまとめ上げるかが大変だった印象です。でも11話と12話が大変だというが目に見えてわかっていたから、なるべく迷惑をかけないようにしようと思いながら演出をしていました(笑)。どうしても盛り上げようとか、大変なことをしがちなんですけど、それをすると周りに迷惑がかかってしまうので。

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