イベント初出走のウマ娘キャストも全力で駆け抜けた後半戦!
ここからはアニメ「うまよん」コーナー。「ぴょいっと♪はれるや!」は、のぐちゆりさん、田澤茉純さん、和氣あず未さん、花井美春さん、佐伯伊織さんの歌唱で、センターは和氣さん。和氣さんがまんなかでやわらかく笑ってくれているだけで安心感がすごい。
ほかにないタイプのセンター像かもしれない。リズミカルな早口歌唱で軽妙に歌い継ぐ楽曲だが、DAY1と歌唱メンバーが変わるとカラーががらっと変わるのが楽しい。注目したいのは、楽しくてハッピーな楽曲をあえて感情表現を抑えて歌っていた田澤茉純さんで、再現度の高いビジュアルもあいまって、どんどんイクノディクタスそのものに見えてくる。特に花井さんのツインターボらしさあふれる歌唱との対比は、お互いに引き立てあっていて、チーム<カノープス>としてのシナジーを感じた。
田澤さんの冷静な歌唱からのぐちさんの元気いっぱいな歌唱につないだりと、緩急を作れる意味でも面白い存在だ。間奏では佐伯さんが「あなたたち、さらにエールを贈る権利をあげるわ!」と、らしさあふれるあおりを決めていた。
「Ring Ring ダイアリー」は前田佳織里さん、田所あずささん、Machicoさん、矢野妃菜喜さん、立花日菜さんという組み合わせ。歌い出しでは田所さんとMachicoさんが「こうして一緒に歌えるのも何かの運命かな、テイオー」「うん、カイチョー♪」と言葉をかわした。Machicoさんのロングソロに優しく田所さんが応え、そこに3人の歌声が加わっていく。2番は矢野さん、立花さんのかけ合いがメイン。となると2対2の印象なのだが、ところどころのポイントでささる前田さんの繊細で美しい歌声が絶妙なアクセントになっている印象だ。激しいレースをちょっと小休止するような、おだやかな時間だった。
「逃げ切りっ!Fallin’ Love」は、のぐちゆりさん、長谷川育美さん、高野麻里佳さん、花井美春さん、田澤茉純さんが歌唱。
オリジナルの逃げ切りシスターズから長谷川育美さんと高野麻里佳さんが出走。それに逃げウマ娘多めという構成だ。冒頭で「今日はスズカに宣戦布告だ~!」と拳をつきだす花井さんがとてもキュート。唯一逃げウマ娘ではないイクノディクタスを演じる田澤さんだが、“戦略なんてナシナシ”のフレーズを戦略の塊の役である彼女が歌っているのが面白いところ。手元で小さなハートを作る振付を真顔でやっているところもつい見てしまうし、やはりイクノディクタスはズルい。
のぐちさんの陽性の爆逃げはパフォーマンスに華やかな色合いを加えていたが、のぐちさんは最初に見た時からこの曲のファンだったそうだ。そしてオリジナルメンバーだが、高野さんと長谷川さんがこの曲調の楽曲を楽しそうに歌っているのはとても貴重で魅力的。彼女たちをチームに引きこんでくれたファル子自身のライブ参戦も待たれるところだ。
「Enjoy and Join」は上田瞳さん、近藤唯さん、渡部恵子さん、渡部優衣さん、長谷川育美さんが披露。「BNWの誓い」ED主題歌を、チームNメンバーで歌唱した。パフォーマンス面では、「トレーナーさん、エンジョイしてくださいね~!」の渡部優衣さんの一発目がもう、チケゾーそのもの! アップテンポな楽曲のソロを、キャラクターらしさをぶらさずに歌いきるBNWのスキルには感嘆するほかない。センターの渡部恵子さんの凛とした姿が、ライブで本気を出したタイシンに重なって見えた。間奏では近藤唯さんと渡部恵子さんが「トレーナー君、誓いあった仲間たちとのパフォーマンスを」「あたしたちのことを一瞬も見逃さないでよね」とリレーを見せた。
「Find My Only Way」は田所あずささん、のぐちゆりさん、佐伯伊織さん、田澤茉純さんが披露。ステージの階段に腰かけた4人が、しっとりゆったりと歌声を響かせる。それぞれの表情を切り抜いたスクリーンの映像はモノトーンで、静かな雰囲気を作り出す。動きが少なめの中で、“星が照らした”のフレーズに合わせてきらめきを表現する4人の手元が残像を残す。後半は立ち上がった4人が、サイドからの強いライトに照らされて、決然とした足取りでステージを歩み出す。力強さを増した歌声は、希望の余韻を残した。
このブロックは美しく想いのこもったバラード曲が続く。ステージにMachicoさんが歩みだし、歌うは「願いのカタチ」だ。まっすぐに憧れを歌う歌声は、泣きたくなるような切なさとあたたかさに満ちている。明るく元気なだけでなく、苦難にあっても立ち向かい、仲間やトレーナーに支えられて進み続けた強さがそこにあった。間奏ではやわらかい笑顔で、会場中の、一番遠くのトレーナーさんまで届くように身体いっぱいに手を振るMachicoさん。落ちサビでは今にも泣き出してしまいそうなほどの想いを感じさせながらも、決して崩れない強さがあった。
ステージに静かに登場した石見舞菜香さんが、繊細なピアノとともに「ささやかな祈り」を歌い出す。ひとつひとつのフレーズをていねいに歌う姿からは、この曲をどれほど大切にしているかが伝わってくる。三日月に訥々と語りかけるような、素朴でやさしい歌声がそのまま聴くものの心にストンと入ってくるような歌唱だ。それでいて“秘密だよ”と語りかける笑顔はいたずらっぽく、ライスのトレーナーさんならライスを抱きしめたくなったのではないだろうか。
ふと見るとステージの階段のライトが三日月型になっていて、まるで月の上で歌っているようだ。間奏では「お兄さま、お姉さま、今日は本当にありがとう。ライス、最後までがんばるから!」のやさしく強い声。聴いている側の心も浄化されるようなステージだ。歌声が少し力強さを増したものの、“もう泣かないよ”のフレーズには涙の気配が顔を出す。それでもがんばり、ふるえながら、強く歌いきった。歌い終えた石見さんがマイクに乗せずに笑顔で残した言葉は“ありがとう”だったと思う。
「木漏れ日のエール」はTVアニメ第2期12話Ver.(ふたりの歌唱パートを入れ替えている)で、Machicoさんと大西沙織さんが歌唱。TVアニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」は、やはりこの2人の交わりそうで交わらない、切なくも熱いライバルストーリーが柱にあった物語だ。
歌い出し、大西さんが想いを込めて“通り雨に凍えながら ぎゅっと膝を抱いて”のフレーズを歌う間、隣のMachicoさんが我が身をかき抱いて、寒さにふるえるような身ぶりがものすごく切実で目を引きつけられる。涙の気配を漂わせながらもみずからのパートを歌いきった大西さんを引き継ぐMachicoさんの歌声がなんとも力強く、本当に頼もしい。サビでぴたりシンクロしたキレのいいダンスを見せる2人の背後に、トウカイテイオーとメジロマックイーンの激走のシーンを重ねるのが本当にズルい。
2人の歌声と想いが溶け合い、力強さを増しながら終盤へ。背後のスクリーンには雨中で崩れ落ちたマックイーンの姿が流れる中、ステージでは大西さんが膝をつく。その姿に気づいたMachicoさんが、片膝をついた騎士のように右手を差し出す。振り返った大西さんは手を差し出し、笑顔をかわす2人……それは物語のように美しい瞬間だった。ラストのサビを歌い終え、お揃いのハンドサインを示した2人。暗転した明かりの中、祈るように、舞うような動きを見せたMachicoさんと大西さんは、静かに視線を合わせて見つめあった。
雄大なオーケストレーションとともにウマ娘たちが静かに入場すると、本編のラストナンバーは全員での「Special Record!」。まさに大団円という感じだが、エンディングを感じさせるエモーショナルなバラードを連打した流れだとまた違った感慨が湧いてくる。間奏では大西さんが「トレーナーさん! わたくしたちの奇跡を……」、Machicoさんが「奇跡は起きるんだよ! 見ててね~!」と2人でひとつのリレーを見せた。Machicoさんの「トレーナー、これでゴールインだよ! 今日は本当にありがとうございました!」の声で、ライブ本編は締めくくられた。
手拍子のアンコールが巻き起こると、スクリーンではこれからの最新情報が公開された。TVアニメ「うまよん」Blu-ray BOXの発売は嬉しい情報。そして最大の拍手が上がったのが、2022年に4thイベント開催決定の報だ。詳細については近日情報公開される予定だ。
アンコールステージの1曲目は「Never Looking Back」。ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のハーフアニバーサリー曲とあってはこのタイミングでは外せないところだ。力強い歌声からは、前だけを見つめて、ひたむきに走り続けるウマ娘の意志と情熱が伝わってくる。スタンドマイクがそれぞれのウマ娘の鋭くかっこいい姿を引き出しているのも印象的で、特に高野さんのスタンドマイク使いがあんなに絵になるとは思わなかった。
出走者を代表した挨拶では、石見さんが「会場にお越しのお兄さまお姉さまの皆さん、配信をご覧になっているお兄さまお姉さまの皆さん、今日は見てくれてありがとうございました。元気を届けようって気合いのもとみんなでがんばったんですけど、こちらが元気をもらっちゃったなと思いました。人生初めての大きなライブをライスと、みなさんと一緒に迎えられて、本当に嬉しかったです」と初めてのライブを振り返った。大西さんは「『ウマ娘』はオーディションを含めたら5年ぐらい前から動き出したんですが、キャストも、作っているスタッフも、ここまで愛される大きなコンテンツになるとは思わなかったってみんなが言うんです。いろいろなきっかけで『ウマ娘』を好きになってくれた方々がひとつになって応援してくれて、みんなで揃って元気にライブができたのはすごく素晴らしいことだと思います」と感謝を伝えた。
Machicoさんは「このご時世の中トレーナーさんを会場にお招きして、ウマ娘たちが誰一人欠けることなくステージに立てているのは本当に奇跡だと思っています。ゲームだけでなくアニメやコミック、いろんな場所でウマ娘たちが夢を見られるのは本当にトレーナーさんたちの応援のおかげだと思います。今回4thイベントが決定した嬉しさもひとつの夢にして、夢を見続けていきたいと思います」と誠実に語った。最後にMachicoさんが「私たちと新しい夢を一緒に駆け抜けてくれますか?」と問いかけると、会場は万雷の拍手に包まれた。
そしてラストナンバーは、もちろん「うまぴょい伝説」だ。逆光の中、スタンスを広くとったウマ娘たちの力強いシルエットが浮かび上がる。こんなにかっこいい楽曲だったっけ……と思わせつつも、本編はもちろん最高に明るく、楽しく! 間奏では明坂聡美さんの実況に呼びこまれて、出演ウマ娘たちからトレーナーたちへの感謝が伝えられた。それぞれの「らしい台詞」が飛び出す中、なんと言っても印象に残ったのは、田所さん=シンボリルドルフによる「ありが父さんで、ありがとさん」という新ギャグだろうか。キタサンブラックからテイオー、サトノダイヤモンドからマックイーンへの憧れの矢印や、近藤唯さんの「見たかブライアン、この姉の背中を!」という、今日は参加していない妹への言葉など、関係性の見えるやりとりも印象的だった。
テイオーとマックイーンの関係性が軸になったDAY2だったが、間奏の感想パートから楽曲に戻る「トレーナーさん、ラストスパートでいきましょう!」の声かけはスペシャルウィーク役の和氣さんが務めるのが、コンテンツとしての分厚さを感じるところだ。ゲームで「うまぴょい伝説」がエンディングで流れる楽曲になったことで、いくつもの感動とともにある楽曲になったように、2日間の特別なライブを締めくくる「うまぴょい伝説」はまた別の感慨ときらめきに包まれていた。
2日間に渡るイベントのラストは、Machicoさんの「トレーナーの熱い想い、本当にありがとうございます。また、次のレースで会おうね~!」の言葉から、全てのウマ娘の「ありがとうございました!」の声で締めくくられたのだった。
(取材・文/中里キリ)
●ウマ娘 プリティーダービー 3rd EVENT WINNING DREAM STAGE DAY2
2021.8.29.東京ガーデンシアター セットリスト
M01:GIRLS’ LEGEND U(ウマ娘)
M02:ユメヲカケル!(上田瞳、高野麻里佳、和氣あず未、Machico、大西沙織、大橋彩香、木村千咲)
M03:Make debut!(長谷川育美さん、近藤唯さん、石見舞菜香さん、渡部恵子さん、矢野妃菜喜さん、渡部優衣さん、立花日菜さん)
M04:はじまりのSignal(大西沙織)
M05:七色の景色(高野麻里佳)
M06:ENDLESS DREAM!!(佐伯伊織、花井美春、前田佳織里)
スペシャルパフォーマンス「ぱかチューブっ!出張版」
(はちみーのうた~ぱかチューブっ!ですが、何か?)
M07:SEVEN(田所あずさ)
M08:アウト・オブ・トライアングル(前田佳織里)
M09:グロウアップ・シャイン!(渡部恵子、立花日菜、木村千咲、矢野妃菜喜、近藤唯、渡部優衣)
M10:ぴょいっと♪はれるや!(のぐちゆり、田澤茉純、和氣あず未、花井美春、佐伯伊織)
M11:Ring Ring ダイアリー(前田佳織里、田所あずさ、Machico、矢野妃菜喜、立花日菜)
M12:逃げ切りっ!Fallin’ Love(のぐちゆり、長谷川育美、高野麻里佳、花井美春、田澤茉純)
M13:Enjoy and Join(上田瞳、近藤唯、渡部恵子、渡部優衣、長谷川育美)
M14:Find My Only Way(田所あずさ、のぐちゆり、佐伯伊織、田澤茉純)
M15:願いのカタチ(Machico)
M16:ささやかな祈り(石見舞菜香)
M17:木漏れ日のエール[TVアニメ第2期12話Ver.](Machico、大西沙織)
M18:Special Record!(ウマ娘)
-encore-
EC1:Never Looking Back(ウマ娘)
EC2:うまぴょい伝説(ウマ娘)
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© 2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会