【70時間プレイ】現実と闘う人々の力になれるように。前作を踏襲し進化した傑作RPG「Caligula2」をレビュー!

2021年07月24日 14:000
【70時間プレイ】現実と闘う人々の力になれるように。前作を踏襲し進化した傑作RPG「Caligula2」をレビュー!

2021年6月24日、PS4/Switch向けRPG「Caligula2」が発売された。「偶像殺し」と「現代病理」を題材に描く学園ものとして登場したシリーズ作品の続編であり、「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」以来、3年ぶりの新作でもある。本稿では、そんな「Caligula2」のレビューをお届け。物語的なネタバレは一切ないので安心して読んでほしい。

理想の世界を壊して現実へと帰る



リグレットと呼ばれる謎のバーチャドールが生み出した世界「リドゥ」では、人々は後悔していることを無意識のうちにやり直して生きていた。主人公(プレイヤー)は、その中のひとりだったが、バーチャドール・キィとの出会いがきっかけでリドゥが創られた仮想世界であることを認識する。現実に帰るため、主人公は同じ目的を持つ人物を集めて「帰宅部」を結成し、リグレットと彼女を守る「オブリガードの楽士」たちと戦いをくり広げる。



「現代病理」を掲げている本作では、登場人物たちは、なにかしらの後悔を抱えている。帰宅部員も例に漏れず、帰るためにリドゥを冒険するだけでなく、彼らの事情を知ることも本作を楽しむうえで欠かせない。

メインシナリオの一幕やダンジョン攻略中に交わされるたわいのない会話などにその片鱗がさりげなく仕込まれており、個別のキャラクターエピソードをこなすと真相がわかる。

エピソードは好感度を上げたり(バトルをこなすと上がる)、メインシナリオを進めたりすると徐々に解放されていく。

相手の核心に迫る段階になると専用の画面が現れ、心の内に踏み込むかどうかを選ぶ。ゲーム的に言えば踏み込まないのは、ありえないわけだが、リドゥはオンラインゲームのようなもので、プレイヤーキャラクターと本人が同じとは限らない。誰にでもやさしい人が、実は横暴で、達観している大人が子どもかもしれない。踏み込むことは当然にしても、知ればそれまで部員に抱いていた考えはくつがえるので、後悔しないよう十分な気構えが必要だろう。



現実で後悔しているのならば、後悔できるだけの経験と視点があるはずで、そういう意味では「リドゥ」の住人は年齢に関わらず「大人」が多い。

部員たちは現実に帰るという一点で結託し、学園生活を楽しむいっぽうで背中を預けて敵と戦い、頻繁に親交を深めてはいるものの、一線を前にすると踏みとどまる。あるいは誰かが踏み込もうとすると、誰かがたしなめる。他人が誰かを救おうとすることに対する諦観なのか、価値観を尊重するべきだという達観なのか、いずれにせよ、帰宅部はそうした「大人」な関係で構築されている。一線を踏み越えるのはプレイヤーの役目だ。




メインシナリオにも「大人」な部分は色濃く反映されており、力でなにかを押しのけるのではなく、話し合いでどうにかしようというシーンが劇中でよく出てくる。

帰宅部とオブリガードの楽士の対決は、正義同士の衝突というより、衝突を通した対話に近い。相手の言い分や価値観を認め合いながらも、目的のためには反目せざるを得ない、ではどうすればいいのか。

物語では章ごとに帰宅部側と楽士側のひとりずつに焦点が当てられ、互いの心情を吐き出したり、「カタルシスエフェクト」を用いて戦ったりする。

カタルシスエフェクトは主人公たちの武器であり、心の具現化なので、帰宅部のバトルは言葉で殴っているに等しい。心情を押さえ込んでいる「大人」な帰宅部だからこそ、直接言葉にすることや、カタルシスエフェクトを振るうことに、ゲーム的だけでなく物語的な意味も付いてくる。



後悔を抱える人々が対話を通して現実と向き合うという流れからは、絶望の渦中にあっても希望はあるという、前向きな姿勢が伝わってくる。

正義を掲げる主人公たちが、楽士たちの正義を踏みにじってでも前に進むという壮絶な戦争が描かれた前作の「カリギュラ」と比べるととても明るい。

シナリオの見せ方も巧妙で、章が終わるごとに謎が提示されていき、敵味方の交錯する思わくや帰宅部たちが起こしてきた行動が伏線となり、事態が徐々に大きく深刻な方向へ動いていく。楽士を倒していくごとに、キィがまこと都合のいい能力を覚えていくのは引っかかったが、そこはまあお約束として、明暗の内在するリドゥやとがったキャラクターたちが、筋道立てて、きれいにまとめられている。

未来を予測しながら戦うバトルシステム



本作のバトルシステムはコマンド選択式で、フィールドにいる敵に触れると戦闘になる。

フィールドで流れていた曲がバトルになるとボーカル付きになるというシリーズおなじみの演出に加えて、本作からは周囲の壁にミュージックビデオが映るようになった。各ダンジョンで流れる曲は、そこを支配している楽士の内面を表しており、物語の理解を深めるうえで欠かせない。そこに映像が加わったため、曲への理解を深められるだけでなく、純粋にバトル自体が盛り上がり、ライブ会場で戦っているかのようでモチベーションも上がる。

 

実際のバトルでは、「イマジナリィチェイン」というシステムを駆使する。
未来予知のようなもので、相手の行動を十数秒先まで視覚化し、それをもとに作戦を組み立てていく。相手のあらゆる行動がこちらに筒抜けで、さらに「突撃」、「射撃」、「防御」といった属性付きの攻撃にはカウンター技が決まる。

プレイヤー側に有利な要素が多く、難易度NORMALでも苦戦することは滅多にない。難易度EASYであれば、敵の体力や防御力が大きく下がるので、ただ技を連打しているだけで勝てる。

こちらと相手のレベル差が倍近くあっても勝てるため、考えるのが面倒くさい人はEASYをオススメだ。バトルが終わるごとに体力とSP(スキルに必要なポイント)も全回復するほか、戦闘をオートモードにすれば主人公以外のメンバーは各自の判断で動いてくれるので、指示を出す手間も省ける。


キャラクターによって性能も異なる。攻撃特化、防御向き、支援役といった具合に役割がわかれているので、自分のプレイスタイルに合わせて編成を考えるといいだろう


「ボルテージ」と呼ばれるゲージが満タンになると、「フロアージャック」が使用可能になる。

発動すると、リグレットが歌っていた曲が一転してキィの曲になり、味方全員がすぐに行動可能、攻撃技のヒット数が増加といった恩恵を受けられる。奥の手ともいえる技なので序盤は使う場所を選ばないといけないが、「キィポイント」を使用すると、フロアージャックの性能を強化でき、新しい効果が追加されたり、ボルテージが溜まりやすくなったりと、徐々にフロアージャックを使える頻度も増えていく。

キィが歌う曲は楽士の曲と同じで、倒した楽士に応じた楽曲がひとつずつ増えていく。フロアージャック時に歌う曲は事前に選択可能だ。

リグレットの物憂げで悲しい声と、キィの底抜けに明るい声が対照で、同じ曲でも歌い手次第で印象が大きく変わるのも印象深い。ただ、倒した楽士の曲を順に覚えていくため、現在攻略中のダンジョンでかかっている曲を設定できない点だけは惜しく感じる。2周目以降なら可能ではあるが、やはり初見で同じ曲を聞き比べてみたかった。



一度キィが覚えた曲は、リグレット版ともども「キィトレイン」と呼ばれる拠点内のジュークボックスでいつでも聞ける。街中で引けるくじには各ボス戦用のリミックスVer.も用意されており、手に入れさえすればこちらも同様にジュークボックスで好きなだけ楽しめる。

個人的には、連続再生やランダム再生で聞き浸りたいので、ぜひともアップデートで機能を追加してほしいところだ。

膨大なサブクエストでつながる因果の系譜



帰宅部員たちを除いた人々からは、サブクエストを受けることができ、その総数は150前後におよぶ。

「因果系譜」の画面を見てみると、作中で登場するメッセージアプリ「WIRE」のアカウントを示すアイコンが蜘蛛の巣のように張り巡らされ、それぞれの人物にはプロフィールも添えられている。受けられる依頼はメインシナリオとは関係ないが、こなすことで彼ら本来のプロフィールが開示され、本当の年齢や性別、そしてリドゥに来た理由が明かされる。100人以上いるのに専用のさまざまな背景が書かれており、読み物としても読み応えがある。


中には連続で展開するタイプのクエストもある。食堂のお姉さんの恋模様だったり、不良グループ同士の抗争だったりと、バリエーションも多い


サブクエストの多くは、こなすために「スティグマ」が求められる。

スティグマは本作の装備品のひとつで、基本的にダンジョンを探索していると手に入る。なかには「パッシブスキル」が付いたタイプもあり、それがクエストに必須というわけだ。かといってスティグマ自体はクエストのためだけでなく装備としても十分強い。戦力の強化とクエストの達成を兼ねているので、スティグマ集めにも精を出せる。パッシブスキルさえあればクリアできるクエストも多く、物語のついでに挑めるおかげでテンポもよかった。特定の人物のクエストをこなした結果別の人とつながり、新たなクエストのクリア条件が解放されるケースもあり、人のつながりも意識されている。


スティグマを装備した状況でバトルをこなすと対象の「定着度」が上がっていく。一定値になると、そのスティグマに備わっているパッシブスキルを別枠で設定可能。スティグマなしでスキルの効果を得られる


遊び終わって現実へ



エンディングが終われば、その人は現実に戻ってくる。ゲームも例に漏れず、遊び終えたらそこまで。「Caligula2」では、創作のように構築されたリドゥという理想から抜け出し、過酷な現実へと戻り、闘おうとする人々が描かれる。

すでに述べたとおり、そこには最悪の状況からせめてマシな方向へ行こうという悪あがきではなく、どんなときにあっても道はひらけるという、やさしさが込められている。

物語終盤に「死にたくないではなく、生きたいと思ってほしい」という、声もない文章だけのセリフが出てくるのだが、「Caligula2」の物語はこのひと言に凝縮されている。

死にたくないとは受け身だが、生きたいというのは意志であり、意味は同じでも文脈はまるで違う。後悔から逃げるためにやって来たはずのリドゥで、プレイヤーや帰宅部員は後悔と向き合い、少しずつ成長して現実に戻っていく。

一時の非現実を楽しみ、生きていくための力にするのは、私たちが現実で作品に触れるときの感覚にも近い。そう考えると、本作にはメタ的な側面も見えてくる。



終わりが近くなるほど読み進める手が鈍ったり、ラスボス戦前でセーブして放置したりといった現象は、好きな作品に対する愛情表現としてよく聞くが、筆者にとっては逆である。のめり込んだ物語ほど結末を見届けたい、要素を堪能したいという気持ちになるので、むしろ足早になる。そのため、物語を進めるかたわら膨大なサブクエストをこなして因果系譜で見られるプロフィールも埋めていき、ジュークボックスで楽曲をヘビロテし、本作のクリア時間は70時間を超えた。



技術に偏って中身が薄いゲームも少なくないが、「Caligula2」はむしろ中身に偏って技術がもろいという昨今珍しいタイプである。グラフィックやモーションは正直なところ前時代的だが、それ以上に物語や音楽といったセンスが求められる要素が軒並みよいので気にならない。本作が激しい戦闘や美麗なフォトリアルを求められるようなゲームではない点、リドゥが現実ではなく創られた世界であり、本作が学園もののJRPGで、「お約束」的な側面があることも大きいだろう。現代病理と偶像殺しというとがったテーマを前作から引き継ぎつつ、物語面でもシステム面でも、今の人が遊びやすい工夫が凝らされている。

実家から今の住みかに移る際、いくつか持ち込んだ私物の中に「Caligula –カリギュラ-」第1作のサントラがある。曲がいいから買ったわけだが、プレイヤーがゲームを遊び終えて成長し、つらい現実と闘うというメタ的な視点が「Caligula –カリギュラ-」シリーズにあったと見れば、こちらに向かってウィンクしているバーチャドールの何気ないイラストに、イラスト以上の意味があるように思えてくる。名作を見て映画館を後にしたときのように、「Caligula2」を遊び終えた私も大きくなれた。そんな気がちょっとだけしないでもない。



(文・夏無内好)

【作品情報】
■Caligula2(カリギュラ2)
対応機種:PS4/Switch
発売日:発売中
<価格>
通常版:パッケージ版/ダウンロード版:8,778円(税込)
限定版:パッケージ版/ダウンロード版:16,280円(税込)
ジャンル:RPG
CERO:C(15才以上対象)
発売元:フリュー株式会社

(C) FURYU Corporation

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