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量販店でプラモを買う時代、模型屋のオヤジが果たしていた教育的役割を振り返る
── 話を「太陽の牙ダグラム」に戻しますが、マックスファクトリーが1/72で新しいプラモデルを開発しましたよね。ああした他メーカーの動きは、復刻版の販売に影響しないんでしょうか? 内田 影響しますね。おそらく、マックスファクトリーさんの1/72 ダグラムは30周年(2011年)に合わせて、発売するつもりだったんじゃないでしょうか。ファン待望の新設計だし、雑誌などで早い時期から盛り上げますよね。ところが、やはりスケジュールが遅延して、発売が延期されてしまいました。そのとき、童友社の30周年記念ボックスなら、市場にあったわけです。すると、弊社のボックスが売れる。結局、マックスファクトリーさんのダグラムは3年ほど遅れたと思うのですが……。
── はい、2014年の発売です。 内田 その間に、弊社の30周年記念ボックスが売り切れて、マックスファクトリーさんのダグラムが発売されたタイミングで、その後に発売した新しいボックスが売れてくれました。すべて偶然ではあるのですが、明らかな相乗効果がありました。
── 古いプラモデルだと、バリ(金型の隙間から流れ出た樹脂)が多くて大変な場合がありますよね。 内田 バリができるのには、いくつか理由があります。まず、もともとの金型の出来がよくなくて、最初からバリが出てしまう場合。もうひとつは、あまりに大量に生産しつづけた場合。365日、休まず成型しつづけたりすると、どうしてもバリが生じてしまいます。最後に、金型の管理が悪い場合。金型のあいだに隙間が空いていて、地面に置いてあったりすると、そこから湿気を吸って錆びてしまいます。倉庫の雨漏りが原因だったり、屋外に置きっぱなしで金型が傷んでしまうこともあります。ぴったりと閉じてあって、内側に油が塗ってあれば、そんなには傷まないはずです。金型は非常に重たいので、そう簡単に移動できないんです。今回発売する40周年記念ボックスは、もともとの日東科学さんの金型が優秀なので、それほどバリはないはずですよ。
── ひさびさにプラモデルを作る人には、ちょっと厳しかったりするかも知れませんね。 内田 大手メーカーなら、ちょっとした事でも許されないでしょう。弊社の場合、「童友社が復刻してくれるだけで本当にありがたい」と、ハードルを下げてもらえます。
── 企業イメージですか? 内田 うーん……。日本人の性癖なのか、こうしたマニア向けの製品は「ここが違う」と指摘されがちですよね。だけど、童友社の場合は逆ベクトルの視線で見てもらえている。「まあ、童友社はこの程度でいいんだよ」とバカにされているのか、期待されているのか、よくわからないけれど(笑)。何か、暗黙の了解があるみたいです。とは言っても、100人にひとりぐらいは「どうしてこんなに出来が悪いのか」と言ってくる方もいらっしゃいます。
── 最新のガンプラと比較されてしまうんでしょうか? 内田 ニッパー不要で手でパーツをもぎとれて、接着剤を使わず組み立てて、シールをちょっと貼るだけできれいな完成品を手に入れられる時代なので、同じ売り場で買ったプラモデルなのに、どうしてこんなに手間がかかるのか……と思われてしまうのは、仕方のないことです。「これは輸入キットだから」「これは復刻版だから」と分けてくれるお客さんばかりではない、ということです。何しろ、接着剤を使うことすら知らない方もいらっしゃいますから。昔は、プラモ専門店ばかりだったので、「どうなってんの、コレ?」とお客さんが聞いてきたら、「ここは接着剤で止めるんです」と模型店の主人に教えてもらえましたよね。何だったら、「そんなことも知らずに買ったアンタが悪いんだ」と怒られかねない(笑)。
── 模型屋のオヤジたちも自分で組み立てて塗装もしたりしていて、非常に詳しかったですよね。 内田 そう、プラモデル好きがこうじて経営している人ばかりでしたから。駄菓子屋のオバサンにだまされ、模型屋のオヤジに怒鳴られ……そういう経験が、我々を成長させてくれました。今は量販店がメインですから、教育する人が少ないのかもしれませんね。
弊社は、あの手この手で復刻版のプラモデルを発売してきました。決して大きな売り上げには結びつかないのですが、皆さんが「まだ、このキットを復刻してくれるのか」と、喜んでくれることが何より大事です。
(取材・文/廣田恵介)
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