「映画大好きポンポさん」の色彩設計・千葉絵美さんに、アニメの色を考えることの面白さを聞いてみた【アニメ業界ウォッチング第77回】

2021年06月12日 18:000

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「ポンポさん」の世界を彩る、鮮やかなエッジの色の秘密


── 先ほど「エッジにカラフルな色を乗せた」というお話が出ましたが、キャラクターの輪郭に水色や黄色など、ビビッドな色が入っているんですよね。

千葉 平尾監督は、必ず何かひとつ、新しい表現を作品に入れます。たとえば影色をなくすとか色トレスにするとか、いつも何かしら考えるのですが、「映画大好きポンポさん」では珍しく具体的なオーダーがなかったんです。「なにか考えておいて」という程度でした。 「ポンポさん」本編の制作に入る前、短いプロモーションビデオをつくったのですが、どの色を塗ったらいいかわからない場合は、仮色を塗ってあります。それを調整して本来の色にするのですが、たまたまエッジの部分にだけ仮色が残ったことがあって、それがとてもカッコよかったんです。偶然の産物ですが、それほど手間ではありませんし、平尾監督に「どうですか?」と見せたところ、採用になりました。

── しかし、シーンごとにエッジの色を決めないといけないですよね?

千葉 はい、背景が上がってくるごとにエッジの色を決めていきました。長いシーンはいいのですが、細かなシーンは背景が上がるまで待たなくてはいけなくて、色指定検査のスタッフには迷惑をかけてしまいました。

── 作品の個性として、とても際立っていました。

千葉 色のついたエッジは、心理描写として限られた使い方をするんだろうと思っていました。「ここぞ」という見せ場だけだろうと思っていたら、日常のシーンでも多く使われていたので、それは予想外でした。こういう表現を過度にやりすぎるのは個人的に好きではなくて、見終わった後に印象に残る程度にしたかったんです。ですから、最初はエッジの色は明るめにしていましたが、作業の後半では抑え気味にして、バランスをとりました。そういう部分は、彩色のほうでコントロールする必要がありますね。

── どこにどんな色のエッジを、どれくらい乗せようという相談はしたんですか?

千葉 いいえ、おそらく演出打ち合わせで決めていたか、作画の方にお任せだったのではないでしょうか。エッジ以外の表現では、アブノーマル色もありました。

── ショックを受けたときに、キャラクターの色が紫一色になってしまうような演出ですよね。ああいう色はどうやって決めるのですか?

千葉 まず正式な色でスタッフに塗ってもらって、色検査まで済ませてしまいます。そこから自分で調整してアブノーマル色にするのですが、監督の趣味や作品の方向性が見えていないと、どんな色にすればいいのかわからないと思います。ただ変な色に変えればいい、というものでもないので……。監督からは、特にどんな色にしてほしいとオーダーされていたわけでもなくて、単に「このカットはアブノーマル色で」としか言われていませんし、「もうちょっと変な感じにして」といった感じのフワッとした修正指示しか来ません。すると、そのときの自分の感情というか、コンディションに左右されてしまうんです(笑)。


── 作業しているときの千葉さんの気持ちが、色に出てしまうんですね?

千葉 クライマックスのほうはスケジュールが詰まっていて、劇中のジーン君と同じ顔で作業していました。そのときの自分の気持ちを色に出せたので、気持ちはよかったです。だけど、色彩設計の仕事は、基本的に細々(こまごま)としています。そのカットの中で見せたい場所を見せるには、周囲の色を落とすしかない。手前にいるキャラクターは彩度を落としたり、影を濃くしたりとか、「ポンポさん」に限らず、やることはいつも同じです。そんな感じで3年間、コネコネと作っていった感じですね。

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関連作品

映画大好きポンポさん

映画大好きポンポさん

上映開始日: 2021年6月4日   制作会社: CLAP
キャスト: 清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫
(C) 2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/ 映画大好きポンポさん製作委員会

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