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「ウマ娘」は中国に刺さるのか?
以上のように現在中国では新作アニメに関して何とも言えない状況が続いているようですが、その横では日本で人気になっているコンテンツが何かと話題になっています。
今年もすでにさまざまな作品が世に出ていますが、現時点でもっとも人気と実力と勢いを兼ね備えたオタク向けの作品は「ウマ娘 プリティーダービー」ではないかと思われます。そして日本のオタク業界の動向に対して常にアンテナが張られている中国のオタク界隈でも、日本における「ウマ娘」のアプリ版リリース以降の爆発的な人気や影響力に関して驚きとともに注目が集まっている模様です。
中国のオタクな方の話によると、過去には「艦隊これくしょん-艦これ-」や「Fate/Grand Order(FGO)」といった、日本で1大ジャンルを形成したソーシャルゲームの大人気作品が中国にも大きな影響を与えていることから、「ウマ娘」の今後の動向に関して気になる人も出ているのだとか。
実際、「艦これ」や「FGO」は中国でも一般寄りの層を含めた非常に広い範囲での知名度を獲得し、現地では無数のフォロワー的な作品やキャラクター、ほかにも言い方は悪いですが丸パクリ的な作品などが出現しましたし、その後の中国の二次元系業界にも大きな影響を及ぼしています。
しかし、現時点の中国における「ウマ娘」の広まり方を見ると、この作品が中国で今後どれだけの人間に刺さるのか、広い範囲での人気を獲得できるのかは不明……といった状況にも感じられるそうです。中国のオタクな方から教えていただいたところによると
「現在の中国で、ウマ娘というコンテンツに触れる際の主要なルートであるアニメ版のハードルが中国人にとっては高く、作品の布教がかなり難しい」
といった事情があるそうです。
「ウマ娘」のアニメは中国の動画サイトでも正規配信されており、アプリ版がリリースされる以前から非常に高い評価を獲得し、中国のオタク系のコミュニティでも絶賛されています。
ですが、配信されている動画サイトにおける再生数の伸びに関しては、アニメ第2期が4月のシーズンに入ってようやく1千万に到達と、ほかの新作アニメの人気作品と比べてパッとしないところもあり、一部のマニアに対して強烈に刺さる作品……といった評価もあるそうです。
また内容に関して、中国のオタクな方々からは
「アイドル系或いはスポーツ系作品として楽しむにしても、世界観や各種設定において深く考えないでおくべきお約束が多過ぎる」
「そもそも中国では競馬になじみがない。競馬が存在しないわけではないが一般人が日常的に意識する機会や競走馬の名前を聞く機会はない」
といった、中国の感覚で引っかかる部分についての話もありました。
特に「中国では日本の競馬になじみがない」というのが、アニメに限らずネックになっているようで、メディアでの扱いが活発で、学生の軍事訓練もある中国ではとても身近なネタとなっているミリタリー要素のある「艦これ」や、世界の神話伝説や偉人ネタが活用されている「FGO」などと比べると、一般の中国人にとっては大きな壁になる模様です。
さらに、内容以外の根本的な壁として、「必要とされる日本語能力が一般的な日本のコンテンツと比べてかなり高い」といった問題もあるそうです。
「ウマ娘」は競馬モチーフの作品ですから、競馬の専門用語が多いうえに、競走馬をはじめとする各種固有名詞も、ある程度詳しくなければ謎のカタカナ表記の言葉、意味不明な発音の言葉になってしまいます。そして作品の中心であるレースでは独特な実況が行われるわけですから、現時点の環境で中国のオタクな面々が楽しむ際にはかなり高い日本語能力を要求されることになります。
こういった事情などから、中国のオタクな人たちにとって「ウマ娘」は今のところ気軽に手を出して楽しめる作品とは言えないようです。
しかしそんな状況でありながらも、現在の中国では「ウマ娘」をきっかけに日本の競馬事情やエピソードを調べてハマる人がじわじわと増加しているそうで、「調べれば面白い」といったイメージも広まっているそうです。私のほうにもこの数か月で中国のオタク界隈における日本競馬の知識が随分と濃くなったという話も聞こえてきます。
またゲームのクオリティ、特にキャラクターの表現やレスポンスのよさに対する評価は高く、
「日本の二次元系ソーシャルゲームの世代が変わったことを実感させられる」
といった評価も出ているとのことです。
ほかにも「ウマ娘」の開発・運営のCygamesが手がけている「プリンセスコネクト!Re:Dive」が、中国本土向けのサービスが展開されかなりの人気となっていることなどから、Cygames作品が一定以上の信頼と知名度を獲得しているといった事情もあります。
以上のように「ウマ娘」の中国における受け止められ方や評価はいまだにハッキリしないところがあるようです。中国のオタクな方からも
「結局はアプリの中国語版が出てからでないとわからないと思います。ただ題材が競馬なので賭博のイメージが常について回りますし、中国でのサービス展開ができるのか半信半疑な人も少なくないです」
といったイロイロな意味で判断に迷っている発言が出てきました。
何はともあれ「ウマ娘」という独特な面白さと広がり方を見せるコンテンツが、中国でどう受け止められていくのかは非常に興味深いものがありますね。
(文/百元籠羊)