個人クリエイターと共同で小さなプラモデルを創りだす! 「キャビコ」ブランドを展開する金型メーカー、エムアイモルデが製品づくりの舞台裏を明かす【ホビー業界インサイド第70回】

2021年05月30日 10:000

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地方の蒸留所がつくる美味しいお酒のような感覚で、小さなプラモデルをつくる


── では、今月発売のチョイプラ最新作、「Smart daughter / eos(エオス)」について聞かせてください。

宮城島 チョイプラ第1弾のイグザインを発売するとき、秋葉原のイエローサブマリンさんの場所をお借りして、大河原邦男さんのサイン会を開催しました。その席でなっちん、クレオパトラ、アモデウスなど後続のラインアップを発表、同時に「本気のクリエイター発掘大作戦」というプロジェクトを立ち上げました。キャビコブランドでプラモデル化したいオリジナル作品を、プロアマ問わずに募集して、一般人気投票の第1位を実際に製品化する企画です。募集する作品はイラストでもデータでも、すでに立体化されている作品でも、何でもOKとしました。「集まった作品を10作品にしぼり、その中から決選投票で1点だけグランプリを選ぶ」ルールでしたが、正直、10作品も集まらないかも……と心配していました。しかし、いざ募集をはじめてみると、なんと243作品も集まったので驚きました。
集まった作品を10点にしぼって、いよいよ一般投票に移るわけですが、作為的に我々が票を投じることもできたかも知れません。メーカーならば、しっかり採算まで考えて、作品を選ぶべきでしょう。だけど、それではプロジェクトの意義に反しますし、クリエイターさんの思いへの裏切りになるので、純粋にファンだけの投票におまかせました。クリエイターさんの固定ファンの票もあったかもしれませんが、それこそ僕らがコントロールすることではありません。あくまで、クリエイターさんに寄り添ったメーカーでありたいのです。


── さて、ファン投票でグランプリとなった「Smart daughter / eos(エオス)」ですが、どのようにチョイプラ化したのでしょう?

宮城島 もともとは原作者のARATAさんの作ったガレージキットで、サイズは15センチでした。チョイプラにすると6センチ程度なのですが、単純なスケールダウンにせず、6センチ大にふさわしい形をARATAさんにリデザインしてもらいました。たとえば、フトモモは元のガレージキットよりも太くなっています。頭とフトモモが大きくなることで、相対的に胴体が細く見えるんです。作者さん自身がリデザインすることで、新しいオリジナルが生まれた好例だと思います。

── チョイプラならではの金型の大きさが決まっているからですか?

宮城島 金型というより、枠の大きさが決まっているんです。決まったパッケージとランナーの枠の中に、どうパーツを落とし込めるかです。


── チョイプラの一種として発売された「チョイプラ スコープドッグ」について、話を聞かせてください。

宮城島 2年前の静岡ホビーショーで、サンライズさんに声をかけていただいたのがキッカケです。なっちんのデザイナーさんにアレンジを頼んだので、今までにないデフォルメになりました。ファンの方がどう反応するか怖い部分もありましたけど、サンライズの担当の方から「自信をもってください」と励まされました。結果、「スコープドッグの特徴である脚部が小さくなってしまっている」などの否定的な意見もありましたが、むしろそれは成功だと思いました。華奢(きゃしゃ)なアレンジの脚が最大の特徴なので、そこを注目してもらえたからです。肩の位置も普通のロボットのデフォルメよりも高い位置になっているなど、ほかにない個性的なアレンジこそが「チョイプラ スコープドッグ」のアイデンティティなんです。

── 確かに、ロボットのデフォルメといえば、足首がすごく大きくなりますよね。

宮城島 ええ、「ボトムズ」に登場するロボットというよりも、なっちんの派生型ととらえるユーザーさんもいられます。それもひっくるめて、「チョイプラ スコープドッグ」は今までにない新しいデザインを提示できたと思います。これぐらい小さなパッケージのプラモデル製品は他社からも発売されていますし、透明パッケージも珍しいものではありません。しかし、チョイプラシリーズは今までにないロボットのプラモデルとして、ユーザーさんに認識してもらえているのではないでしょうか。積み重ねてきた成果が、少しずつ出てきていると感じています。


── 今後のキャビコブランドのプラモデルとしては、1/12スケールの「HAKOBU/RIKU」がラインアップされていますね。

宮城島 はい、「HAKOBU/RIKU」は、MARUTTOYSさんというクリエイターさんの作品です。MARUTTOYSさんはワンダーフェスティバルにも参加されていて、2019年冬にはWSC第36期アーティストに選出された方です。コトブキヤさんからも、商品化されているアイテムがあります。今回「HAKOBU/RIKU」は、チョイプラとは別のカテゴリーで製品化します。もちろんチョイプラ化も検討しましたが、HAKOBU/RIKUの魅力を表現できるサイズ感を重視しました。

── キャビコというブランドは、今後どうありたいと思っていますか?

宮城島 最初にイメージしたのは、インディーズレーベルです。まだメジャーデビューしていないミュージシャンのCDを出すような感じ。今でこそ一般流通で全国の模型店さんで取り扱っていただいていますが、最初はその仕組みもわかりませんでした。1万円のガレージキットだと手にとりづらいけど、千円ちょっとのプラモデルなら買ってもいいかな、と思えるはずです。そのキットを買ってくれた人が「この作者は、ほかにもこんな活動をしているのか」と気がついて、クリエイターさんがほかのチャンスを得られる媒体として役立てれば。“マイクロディスティラリー”と言って、地方の小さな蒸留所が、こだわりの美味しいお酒を小規模につくられていますよね。キャビコのプラモデルは、そんなイメージなんです。



(取材・文/廣田恵介)

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