※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
中国に展開するコンテンツに関して強まる新たなリスク。フェミニズム的な観点からの批判
中国に入ってきた日本の作品が、現地の事情や日中関係の悪化などにより批判され、規制あるいは自主規制の対象となるのは、言っては何ですが、昔からよくあることでした。
またこれは日本の作品に限った話ではありませんが、そういった批判の際に特に大きな問題となるものや、落としどころを見つけるのが難しいものには、政治や歴史、領土問題などがありました。さらに近頃は、これに加えてフェミニズム的な観点からの批判も目立つようになってきているとのことです。
この問題と日本の作品に関する最近のわかりやすい例としては、1月からのシーズンに大炎上した「無職転生」の件がありますが、近年の中国では日本の作品によくあるラブコメ文脈的なキャラクターやストーリー上の各種イベントが問題視されがちなのだとか。
中国のオタクな方の話によると、中国の国産作品と違って日本の作品は、外国の作品であることやサブカル的な扱いだったことなどから、これまでそういった部分に関してあまり大きな注目を集めていなかったそうです。
しかし近頃の中国では、ネット環境や交流ツールなどの変化により、価値観の異なるコミュニティ間の摩擦や衝突が急速に増大していることにともなって、日本のアニメ作品も注目の話題のひとつとして問題とされがちな部分がクローズアップされていくようになり、フェミニズム的な観点からの批判も受けるようになってきているとのことです。
特に1月からのシーズンにおける「無職転生」の大炎上以降、日本のアニメは、悪い意味でかなり注目を集めるようになってしまっているそうです。
日本の新作アニメには、ラブコメ要素の混じった作品も少なくないですし、よくも悪くもご都合主義的なキャラの扱いやストーリー展開になることが多いことから、現在の中国では、日本の作品の「恋愛要素の安全性の判断」はかなり難しいことになっている模様です。
中国のオタクな方からは
「しばらくの間はご都合主義的な恋愛要素が目に付く、たとえばハーレムや不倫などといった現代の倫理、価値観に合わないとされるような要素が目立つ作品を中国で扱うのは難しいでしょう。それがたとえ二次元のフィクションであったとしても」
「4月の新作アニメの『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』は、原作の評価が中国でも高く注目を集めている作品でしたが、中国で正規配信するのは難しいだろうと皆が思っていましたし、実際に新作アニメとして放映権を獲得するところもなかったです」
といった話もありました。
以上のように、現在の中国における日本の作品を取り巻く環境はお世辞にもよいとは言えません。過去に発生したさまざまな規制の時期と比べても厳しいものがありますし、現在の国際的な状況や中国の外交方針を考えると、当面は難しい空気が続くかと思われます。
ちなみにこの厳しい状況で中国のオタクな人たちが楽しんでいる、比較的安心して見ることのできる作品のひとつが「ウルトラマン」だそうです。
中国では「ウルトラマンZ」がオタクの間でも大人気になったことなどから、最近は子どもの頃に「ウルトラマンティガ」でファンになった比較的若い世代もウルトラマンに戻ってきているそうで、そういった人たちの間で過去のシリーズが再評価される流れもあるのだとか。
新作の「ウルトラマントリガー」に関しても、現在出ている「ウルトラマンティガの系譜にある作品」という情報から、ティガファンの多い中国ではかなり期待が集まっているとのことです。
ウルトラマンは、ある意味では中国でもっとも人気と知名度のある日本の作品と言えます。しかし、1990年代に中国のテレビでの放映が始まって以降、現地ではさまざまな規制や批判を受けてきましたし、修正や削除の要求があまりにも増え、新規の放送ライセンス申請が通らなくなったことから実質的に放映不可能になっていた時期もあるなど、中国でもっとも規制を受け続けてきた作品でもあります。
そのウルトラマンが、現在の新作アニメが実質的な規制を受ける状況の中で日本系コンテンツとして踏ん張っているのを見ると、少し不思議な気分になってきますね。
(文/百元籠羊)