【インタビュー】作曲家・立山秋航に聞く。バージョンアップされた『ゆるキャン△ SEASON2』の音楽

2021年04月03日 11:000
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リンには、マンドリンの音色が合うように思ったんです


── 伊豆キャンのお話を最初にうかがったので、そこからストーリーを遡る形で、サントラの収録曲についておたずねしたいと思います。DISC2の11トラック目から13トラック目は、リンちゃんとおじいちゃんのツーリングの楽曲になっています。

立山 ここも、監督サイドから、ちょっと特別な音楽にしたいという要望がありました。おじいちゃんの曲を書いたのは劇伴制作の終盤で、伊豆キャンの曲をはじめ、ほとんどの曲ができ上がった後でした。それまでいろいろなことをやってきて、じゃあ、おじいちゃんの曲はどうしようかと。それで試したのが、ファゴットという木管楽器を取り入れることでした。僕のイメージでは、ファゴットの音色がおじいちゃんを表していて、この3曲はすべてファゴットがメインのメロディを担当しています。たとえば、「おじいちゃん、また走ろうね」という曲は、リンとおじいちゃんが朝、暗いうちから出発して、朝焼けの中をツーリングするシーンにつけた音楽なんですけど、原作やシナリオを読んだときから、ここは絶対にいいシーンになるだろうなという確信があって。ファゴットを中心に、グッとくる音楽を書きました。おじいちゃんと孫の触れあいというと、僕は映画の「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出して。そこからの影響もこの曲には出ているような気がします。

── ファゴットは低くてやさしい音色の楽器ですね。

立山 オーケストラの中では花形の楽器ではないんですが、くすんだ感じの音色がいいんですよね。

── ほかにも、このキャラクターにはこの楽器が合うだろうと思って使った、ということはあったんですか?

立山 リンの曲はマンドリンがメロディを取ることが多いですね。マンドリンを使った「ソロキャン△のすすめ」という曲が、第1作目でリンがソロキャンをしているときによく使われていたんです。なので今回は最初から、リンの曲はマンドリンだなというイメージがありました。改めて考えてみれば、マンドリンの音色はリンの性格や行動に合っているような気がするんですよね。


── では、なでしこはいかがですか?

立山 なでしこのキャラクターをイメージした曲というのは第1作目には実はなくて、今回、初めて書きました。僕から見たなでしこは明るくてきらびやかで主人公なので、王道のピアノでいこうと。

── DISC1に「なでしこ」と「なでしこの思い」の2曲が収録されています。

立山 「なでしこのテーマを書いてください」という発注を受けて作った2曲です。どちらもドミドソという四つの音階を中心にメロディが構成されていて、どうしてかというと、「なでしこ」という名前は4つの音の発音ですよね。その四つの発音に音階をつけたら、「ドミドソ」になるなと思ったからです。だから、この4つの音が鳴ったら、心の中で「なでしこ」という歌詞をつけながら聴いていただきたいですね(笑)。劇伴でたくさん曲を作るときは、こんなふうにキャラクターの名前や性格や言動など、あらゆることをヒントにして書いていくんです。


── ボーカル曲とドラマを除くと、2枚組で45曲の劇伴が収録されているんですよね。1クールのアニメとしては曲数が多いと思いました。

立山 ボリューム的には普通の1クールアニメの1.5倍くらいの量があるかもしれないですね。長い曲がいくつもあるのは、フィルムスコアリングをしているからです。『ゆるキャン△』では「何話のこのシーンに流れる曲を作ってください」と求められることも多くて、「初めての本栖湖~はじまりはここから~」とか「浜名湖のテーマ~ゆりかもめに囲まれて~」とか、タイトルの中に「~」が入っている曲のほとんどは、フィルムスコアリングで作った曲です。

── なるほど、具体的な地名が入っている曲のほとんどは、フィルムスコアリングでそのシーン用に書いた曲だったんですね。

立山 僕からすると、このシーンに合う曲を決め打ちで書いてくださいと言われるほうが、曲数は多くなっても、逆にやりやすいんですよね。「それぞれの大晦日」もフィルムスコアリングで、みんなの大晦日を描いたシークエンスの頭から最後まで通して流れる、4分50秒の長い曲です。初日の出がクライマックスとして描かれるので、曲も徐々に盛り上げていって、いよいよ陽が昇るというところで最高潮になるように作りました。途中、なでしこがバイトで年賀状を配っているシーンが入ってくるんですけど、そこにはなでしこのテーマのメロディを挿入しているんです。フィルムスコアリングだからこそできる方法ですね。

── 『へやキャン△』はすべての劇伴がフィルムスコアリングだったとうかがっています。

立山 その通りです。『へやキャン△』の経験があったので、『SEASON2』でもフィルムスコアリングがスムーズにできたという一面があります。

── 第1作目のときは、どうだったんですか?

立山 第1作目のときも、キャンプ場のテーマはフィルムスコアリングに近かったように思います。でも、映像をいただいて、それに秒単位で音を合わせて曲を書いたということはありませんでした。ここも第1作目と今作の劇伴の違いですね。

── 『ゆるキャン△』の場合は、夜に流れる音楽なのか、朝に流れる音楽なのかという、時間をイメージすることも大事なように思うのですが、いかがですか?

立山 時間を意識した曲は、確かにありますね。たとえば先ほども話題に出た「ようこそジオパークへ」は、朝みんなで集合して、伊豆キャンに出発するときのわくわく感を表現してほしいと言われた曲で、朝陽が昇り始める時間帯の風景をイメージしながら作曲しました。同じく伊豆キャンの「星空のチャランゴ」は、なでしこと斉藤さんが深夜に語らうシーンのための曲で、夜の風景や空気感を意識しました。


── DISC2のラストは「しまリンだんごアイス」という、短くてかわいい曲で締められています。

立山 第1作目のときに、しまりん団子のCM曲として「しまりん団子のテーマ」という曲を作りまして、その続編です。劇中内CMに当てる曲では何か面白いことをやらなきゃいけないという決まりがあって(笑)、今回は神秘的な雰囲気の女性コーラスに「し~ま~りん」という歌詞を付けた曲を作りました。

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