【インタビュー】作曲家・立山秋航に聞く。バージョンアップされた『ゆるキャン△ SEASON2』の音楽

2021年04月03日 11:000
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2021年4月1日に地上波での放送が終了したアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』。その前日の3月31日に2枚組のサウンドトラックアルバムがリリースされた。『ゆるキャン△』らしい、まったりと落ち着くサウンドに、新たな要素が加わった『SEASON2』の音楽。さらにサウンドトラック全体のコンセプトも、前作とは大きく変わったという。作曲家の立山秋航さんに、『SEASON2』の音楽について、たっぷりと語ってもらった。

伊豆キャンの曲には、南米の音楽フォルクローレを取り入れました


── 立山さんは『ゆるキャン△』『へやキャン△』、そして今回の『ゆるキャン△ SEASON2』と、ずっと劇伴を担当されています。『ゆるキャン△』シリーズの魅力について、どう感じていらっしゃいますか?

立山 間を大切にしたアニメだと思っています。セリフの量だったり情報を詰め込み過ぎず、タイトル通り時間がゆっくりと流れていく作品です。

── 音楽もそれにすごく貢献していると思います。『ゆるキャン△』の劇伴は、キャラクターやシーンではなく、キャンプ場のイメージに合わせて作っているとお聞きしました。

立山 第1作目のときはそうでした。監督から最初に伝えられた劇伴のコンセプトが、キャラクターにつけずにキャンプ場に音楽をつけるということだったんです。『SEASON2』もそのコンセプトは継続しているんですが、劇伴の柱ではなくなっていきました。キャンプ場にもいくつか曲をつけていますが、今回は、キャラクターの内面や心情につける曲を増やしていこうという話を、最初に監督としました。

── キャラクターが出そろって、みんなのキャンプ活動のスタートが描かれた第1作目を越えてのお話ということで、音楽の作り方にも変化があったんですね。

立山 僕の解釈も入るんですけど、第1作目はキャンプをするという行動自体やキャンプ中の出来事に焦点が当たっていたと思うんです。でも、『SEASON2』はキャンプをすることによってキャラクターたちが何を考え、どんなふうに仲間と仲よくなっていくか、もしくは家族同士の絆を深めていくかというドラマに焦点が当てられたエピソードが多くて、劇伴の作り方もドラマ重視に変わっていきました。だから、楽しい曲もありつつ、しっとりした曲や感情を揺さぶられる曲が、第1作目に比べて増えていると思います。


── そうだったんですね。曲名リストを見ると、本栖湖、浜名湖、山中湖、野田山公園と、キャンプ地がタイトルに明記されている曲が多かったので、キャンプ地に曲をつけるというコンセプトが、『SEASON2』でもメインになっているのかと、思ってしまいました。

立山 タイトルにキャンプ地の名前が入っている曲は、キャラクターがそこを訪れたストーリーに合わせて作った曲です。ただ、キャンプ地によって参加メンバーが違いますし、そこで起こるドラマもそれぞれなので、キャンプ地につけたというよりは、キャラクターやドラマにつけたと言ってもいいかもしれません。

── SEASON1の劇伴とのコンセプトの違いが、よくわかりました。

立山 それから、なんと言ってもクライマックスの伊豆キャンにつけた音楽ですね。「伊豆キャンに関しては、「今までの音楽と少し雰囲気が変わるとうれしいです」ということを最初に監督から言われて、僕の中でいろいろ考えた結果、フォルクローレと言われる南米アンデス地方の音楽をあてようと思いまして。そこは第1作目にはなかった大きなチャレンジでした。作曲にあたっては、フォルクローレのCDを聴いたり、演奏の映像をYouTubeで見たりして勉強したんですけど、そこで得たものをそのまま出してみても劇伴としては意味がなくて、『ゆるキャン△』という作品にどのようにフォルクローレの要素を落とし込んでいくかを考えました。

── 完全なフォルクローレを目指したわけではなく、あくまで『ゆるキャン△』の劇伴にその要素を取り込んだということですね。フォルクローレのどういうところが、伊豆キャンに合っていると思われたんですか?

立山 監督にお伺いしたのですが、伊豆は海あり山あり洞窟あり草原ありという多彩な土地柄なんです。ですから、劇伴としてもいろいろな曲調が求められて、伊豆の自然の多彩さ、広大さにフォルクローレが合うなと思いました。

── 第1作目では、立山さんがみずからいろいろな楽器を弾いて劇伴を録っていらっしゃいましたが、今回は外部からの参加ミュージシャンが増えました。それもフォルクローレを取り入れたから、ということなのでしょうか?

立山 そうですね。アコースティックギターやバンジョー、マンドリンなどは第1作目と同じで、僕が弾いているんですけど、フォルクローレにかかせない民族楽器、たとえばケーナと呼ばれる笛や、チャランゴと呼ばれる弦楽器などは、さすがに演奏できないので、専門のミュージシャンに来ていただきました。伊豆キャンの曲のために参加ミュージシャンが増えたと言っていいと思います。

── サントラCDでは、DISC2の15トラック目「ようこそジオパークへ」から、伊豆キャンの楽曲になっていきます。

立山 伊豆キャンのための曲は、本栖湖や浜名湖のように曲のタイトルに具体的な地名は入っていないのですが、伊豆を連想させるものになっています。「大ハシャギROUTE136」は、三島市から下田市へと至る伊豆の幹線道路のことですし、「魅惑のペニンシュラ」のペニンシュラは「半島」という意味の英語です。変化に富んだ伊豆の景色と、そこを楽しむなでしこやリンの姿を思い返しながら、聴いていただきたいですね。

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