悪夢を終わらせるため、血に塗れて獣を狩る。病と医療の都・ヤーナムを舞台にしたアクションRPG『Bloodborne』【思い出ゲームレビュー3回目】

2021年03月10日 17:350
悪夢を終わらせるため、血に塗れて獣を狩る。病と医療の都・ヤーナムを舞台にしたアクションRPG『Bloodborne』【思い出ゲームレビュー3回目】

筆者が過去に遊んだゲームの中でもオススメの作品を紹介する企画。第3回は、2015年に発売されたアクションRPG、PlayStation 4用タイトル『Bloodborne(ブラッドボーン)』を紹介する。(記事内の画像は、『Bloodborne The Old Hunters Edition』で撮影)

暗く淀んだ街・ヤーナムと、蔓延する「獣の病」



『Bloodborne』の舞台となるのは、古都ヤーナムと呼ばれる街。レンガ造りの歴史的な建造物が立ち並び、市街を通る道には、ガス灯や、技巧の凝らされた彫像、金属類などが見て取れる。ヤーナムがどのような場所にあるのかは判然としないが、公式サイトに「19世紀のビクトリア時代」、「同時代のロンドンとは異なる」と書いてあるように、19世紀のロンドンをモチーフにしているのは間違いないようだ。



ヤーナムには古くから「獣の病」と呼ばれる疫病が蔓延しており、一度でもかかれば正気を失ってしまう。「狩人」たちは、夜な夜な街にくり出しては、獣の病に侵された者たちを狩り続けている。いっぽうで、ヤーナムは医療を奨励しており、そうしたものを頼って街に訪れる病人たちも多い。



娯楽である以上、ゲームにはだいたい救いがあるが、『Bloodborne』にはない。病が街をむしばみ、今まさに滅びようとする状況には、陰鬱や陰惨という言葉がふさわしいだろう。正気を保っているわずかなキャラクターたちも、達観というよりは諦観(ていかん)しているようで、希望はみじんも感じられない。医療を求めてヤーナムを訪れたプレイヤーはあるきっかけから狩人となり、そんなヤーナムを歩き回りながら、浮浪者のように各地を徘徊する罹患者たちを狩っていく。フロム・ソフトウェアが過去に手がけた『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』と同様、全体マップはなく、構造は頭に叩き込むしかないため、プレイヤー自身が町中をくまなく歩き回る必要がある。「狩人の夢」という拠点を介して各エリアへ移動することはできるが、昨今のゲームのトレンドとも言えるファストトラベル機能はない。だが本作の場合は「探検」という要素が重要なので、むしろ不便なくらいが心地よい。「死にゲー」である以上、下手に動くべきではないが、通路の最奥になにがあるのかは気になる。強い装備が手に入るかもしれないし、敵や罠のせいで死ぬかもしれない。陰鬱でホラーな雰囲気と、情報がないからこそ確かめたくなる好奇心が、『Bloodborne』ではバランスよく融合している。

過酷な世界だからこそ、安全なルートの構築や、ショートカットが開通してマップがつながった瞬間の達成感はひとしお

 

血で血を洗う狩人の高速戦闘、死闘を演出するシステム

 

 

右手に「仕掛け武器」、左手に「銃器」を用いる本作独特の戦闘スタイルは、非常に攻撃的と言える。「仕掛け武器」は、ひとつの武器が2つの形態を持つという特徴があり、短剣から大剣、曲剣から大鎌、杖から鞭など、さまざまな姿に変化。形態ごとに攻撃モーションやリーチも変わる。通常時は攻撃速度が速い代わりに威力が低くとも、形態を変えれば手数を犠牲に高威力かつ長射程の攻撃をくり出せるという具合に、戦術の幅は広い。1つの武器に、長所短所の異なる、2つの戦法があるのだ。

 

 

武器を変形させるまでの動きは、すべて細かく表現される。攻撃しながら流れるように駆動する機構は、ロマンの塊だ

 

プレイヤーのステータスは、体力、持久力、筋力、技術、血質、神秘の6種類がある。敵を倒したり、特定のアイテムを使用したりすることで得られる「血の遺志」と引き換えにステータスを強化できる

 

スタミナを消費してふるう仕掛け武器と違い、「銃器」は「水銀弾」という専用アイテムを消費するため、主力にはなりにくい。だが、攻撃される瞬間に合わせて敵に銃撃を当てれば、体勢を大きく崩させることが可能。この隙に接近するとくり出せる「内臓攻撃」は威力が非常に高く、雑魚敵ならほぼ一撃。ボスでも大ダメージを与えられる。銃器の中には盾もあるが、すばやい敵が多い本作では扱いが非常に難しい。ステップやダッシュを駆使し、プレイヤーも高速で戦うのが基本となる。

 

 

仕掛け武器と銃器、内臓攻撃に加えて、本作の戦闘で欠かせないのが「リゲイン」だ。これは、プレイヤーがダメージを受けた直後に敵を攻撃すれば失った体力を回復できるというもの。ダメージを受けたら一度退いて回復アイテムを使うのがふつうだが、「Bloodborne」ではこのリゲインを利用し、逆に攻める手もある。窮地に陥った状態で、安全に立ち回るか押し切るか。こういった駆け引きも、本作のテーマである「死闘」を際立てている。

 

プレイヤーを強化する要素のひとつ「カレル文字」。装備すれば、回復薬である「輸血液」の所持上限を増やしたり、リゲインの効果量を高めたりと、さまざまな効果を得られる

 

高速かつ回避が中心の戦闘ともなるとアクション性も高く、本作が「死にゲー」である以上、当然難易度も上がる。そのためか、物語上必ず戦うボスとして最初に立ちはだかるガスコイン神父の突破率は、2021年2月26日時点で45,8%(トロフィー「ガスコイン神父」を参照。)。つまり、2人にひとりは序盤で脱落している。

 

 

ありがたいことに、『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』のように根気よく敵を倒してレベルを上げ続け、ステータスの差で力押しすることもできる。入るたびに構造が変化する「聖杯ダンジョン」であれば、レベル上げに必要な「血の遺志」や戦闘で使うアイテムも効率よく手に入る。聖杯ダンジョンは初心者救済という側面もあるが、ボスを倒した際に手に入る「血晶石」を厳選するという目的でもよく利用され、上級者たちのエンドコンテンツとして機能している点もおもしろい。ネット上では考察だけでなく聖杯ダンジョンに関する情報も盛んにやり取りされているので、もしこれから始めるという人がいれば協力者を募るのもオススメだ。

 

血晶石を武器に装備すると、対象に特殊効果を付与できる



底知れぬ世界観

 

 

物語や世界観から『Bloodborne』を見ると、インディーズゲームと言われてもおかしくないレベルのとがりぶりだろう。情報の断片をかき集め、点と点を結び物語を浮かび上がらせる手法はフロム・ソフトウェアのお約束だが、それにしてもとがっている。主人公がなぜヤーナムに来たのか、「青い血」とはなにを指すのか、「ビルゲンワース」や「医療協会」といった各勢力の成り立ち、エンディングでなにが起こったのか。考察する材料はあるが、『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』以上にほのめかされ、隠されているのだから、雲をつかむような話だろう。

 

 

ストーリーが進んでいくうちに、神秘的な要素を絡めたゴシックホラーだったはずが、いつの間にか宇宙にまつわる恐怖を題材にするコズミック・ホラーに変貌していくのは、本作を遊んだ人の多くが気づいたのではないだろうか。獣を狩っていたはずが、気づけば「上位者」という超自然的な存在と戦っている。「星の瞳の狩人証」の「すなわち、地上にある我々のすぐにこそ、まさに宇宙があるのではないか?」や、「上位者の叡智」の「我々は、思考の次元が低すぎる。もっと瞳が必要なのだ」など、武器やアイテムに記載されていたフレーバーテキストの意味が物語の後半になってわかってくる。ヤーナムという街がいかに狂っているのか、実感できる瞬間だ。

 

 

以前、筆者が『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の記事を書いた際にも言及したが、フロム・ソフトウェアのタイトルならフレーバーテキストは不可欠だ。上記のようなすぐれた台詞回しや言葉選びに触れると、世界観が一気に広がる。それらしい言い回しなら誰でもできるが、そこに深みや技巧を加えるなら話は別だ。個人的には、こうして上質なテキストに触れられることは、ファンとしてだけでなく物書きのはしくれとしてもたまらない。

 

 

昨年に「コロコロオンライン」で掲載された記事で、『Bloodborne』のプロデューサーである山際眞晃さんは「本作の物語の公式的な資料はなく、ディレクターの宮崎英高さんから話を聞いたそれぞれの担当が、メモを取ったり個人的に資料を作成したりするくらい」という旨の発言をしている。宮崎さんの頭にしか答えが存在しないというのは、意図したものか偶然なのかはわからないが、「高次元的思考」や「脳に瞳を得る」など、得体のしれない要素が散りばめられた『Bloodborne』らしくもある。

 

 

物語は人を選ぶが、バトルはむしろ万人向けだ。今回取り上げた『Bloodborne』の攻撃的な高速戦闘だけでなく、パリィとバックスタブをからめた『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』、激しい剣戟から必殺の一撃を狙う『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』も変わらない。フロム・ソフトウェアの作品には、まずプレイヤーのゲーム体験がある。それは、テレビで遊べるようになる前、アーケードの時代から変わらないゲームのお約束だ。物語だけ見れば「カルトゲーム」と言われてもおかしくない本作が世界中で売れているのは、バトルや探索といったゲームらしさとのバランスがうまい証拠なのだ。

 

『DARK SOULS』シリーズのあいだに

 

 

2011年の『DARK SOULS』、2014年の『DARK SOULSII』と、『DARK SOULS』シリーズも盛り上がり、世界中で続編の登場が待ち焦がれていた。そんな中、2015年には『Bloodborne』が発売された。『DARK SOULSII』と『Bloodborne』の発売間隔は約1年間であり、開発期間を考えれば、『DARK SOULSIII』よりさきに『Bloodborne』を出すという決断は、相当早くされていたに違いない。発売が待たれる『DARK SOULS』シリーズへの期待をいい意味で裏切り、完全新作を生み出すという重圧は、当時どれほどのものだったのだろうか。

 

 

ともあれ、完全新作の『Bloodborne』は全世界で200万本以上を売り上げ、発売から6年近くたった今もファンから続編を熱望されている。そして、『DARK SOULSIII』が発売されてシリーズが一段落したところで、今度はPS VRを使った新作アドベンチャー『Déraciné』が出た。時勢や潮流に乗らず、今自分たちが作れる、作りたいと思えるものを生み出すという、一見古めかしい職人気質な考え方が、フロム・ソフトウェアの強さなのかもしれない。

(文・夏無内好)

【作品情報】
■Bloodborne(Bloodborne)
ジャンル;アクションRPG
対応機種:PS4
プレイ人数;1人(オンライン:1~5人)
CERO:D(17歳以上対象)
発売日:現在発売中
価格:
Playstation Hits版:1,990円(税別)
The Old Hunters Edition:3,990円(税別)
※ダウンロードコンテンツ単体は2,000円(税別)

(C)2015 Sony Computer Entertainment Inc. Developed by FromSoftware, Inc.

画像一覧

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