【インタビュー】高野麻里佳がソロアーティストとしてデビュー。1stシングル「夢みたい、でも夢じゃない」は正統派の1曲に！

自分自身としっかり向き合うことが、アーティスト活動なんだなと思いました

── では、カップリング曲の「I tie U」についておうかがいします。遊び心がある曲で、歌詞には大人っぽさも感じました。

高野　私がこの曲を聴いたとき、まず衝撃を受けたのはイントロでした。カップリング曲はどういうタイプの曲がいいんだろうと考えながら、デモをたくさん聴いていった中で、「I tie U」のイントロはすごく面白かったんです。それで、ほとんど迷わずにこの曲に決めました。

── シンプルだからこその面白さがあるイントロだと思いました。

高野　音が少なくて、それがいいんですよね。「夢みたい、でも夢じゃない」のキラキラしたサウンドから一気に雰囲気が変わるので、みんな驚いてくれるんじゃないかなと思います。この曲も1番の歌詞はデモの段階からあって、すごく素敵だったんです。「おにさんこちら」という誘いの言葉から始まる不思議な歌詞で、聴いていると、歌にたぶらかされるような気がしました。そして最後は「永遠の縁結びを」という思わせぶりな言葉で終わるんです。この歌詞に歌われている2人は、どこに行き着いたんだろうと思いました。

── すごく深い関係性を歌っていて、重さを感じる大人っぽい歌詞なんですよね。

高野　重たくて粘着質な曲だと、私も思いました（笑）。「前世来の恋路」という言葉があるので、前世でも両想いだった2人が、現世でも結びついたというロマンチックな解釈をしたんですけど、もしかしたら片方の一方的な思い込みに過ぎなくて、相手は前世の記憶なんかないのかもしれないんですよね。そういうふうに甘い毒が仕込まれていて、想像力を刺激される曲になっています。

── フィクションの度合いが高いというか、高野さん本人の感覚とは違う楽曲ですよね。

高野　でも、アニメやゲームが好きなので、情熱的でありつつ、どこか怖さがある恋愛には、自然と憧れてしまいますね。現実とは違う人生や恋を味わいたいから、いろいろな転生ものが流行っているんじゃないかなって思うんです。もし、私にも前世の記憶があったら、この曲の主人公と同じようなことを考えるかもしれません（笑）。

── 「I tie U」というタイトルは日本語と英語のダブルミーニングになっていて、ここにもほんのり怖さが混じってますよね。

高野　そうなんです、日本語の「あなたに会いたい」と英語の「あなたを縛りたい」の2つが重なったときの粘着感がすごいなって思いました（笑）。相手の気持ちに考えが至っているのかわからなくなるくらいの、主人公の想いの強さが伝わってくるタイトルだと思いました。

── 「I tie U」のレコーディングはいかがでしたか？

高野　作詞・作曲・編曲の鈴木裕明さんがスタジオに、稲荷神社とか、どこか不思議な日本の伝統風景を写した写真集を持ってきてくださって、とても参考になりました。異世界転生みたいに、私がその写真集の世界に入り込んでしまったら、どういう姿になるんだろうと考えながら、歌っていったんです。アニメ作品のキャラクターソングを歌うときとは違って、あくまでもそこにいるのは自分自身だということが、アーティストとしての表現の難しさなのかなと思いました。

── フィクション性がある曲でも、あくまで自分自身の曲として表現するという。

高野　そうですね。キャラクターをイメージすることはできると思うんですけど、そのキャラクターを1から作って魅力的に仕上げるのは自分の培ってきたものしかありません。アニメのキャラクター表とは違って、輪郭の不透明な自分自身と向き合って歌うことが、アーティスト活動なんだなと。自分ってなんだろうと深いところまでたどって考えると、絶対にひとつではないじゃないですか。そうやって、いろいろな一面を持つ自分をアーティスト活動では表現していきたいなと思います。


── そういう意味でも、1stシングルでまったくタイプの違う2曲を歌えたのはよかったのではないでしょうか。

高野　はい、そう思います。今回のシングルを聴いて「高野ってどういう人なんだろう、この先、どんな歌を歌っていくんだろう？」ってワクワクしていただけたらうれしいです。

── 最後にアーティストとしての今後の抱負をお聞かせください。

高野　声優としてもひとりの人としても、新たな魅力を見出していただけるような曲作りをしていきたいです。みなさんがつい口ずさんでしまうような、耳に残るメロディをたくさん歌っていきたいなと。そのためにも、多様なジャンルの曲を表現して幅の広いアーティストになりたいと思っています。夢というか目標としては、私はゲームっ子なので、ゲームの主題歌とキャラクターの声の両方をやらせていただける機会をいただけたら、本当に幸せです。よろしくお願いします。

高野麻里佳プロフィール

こうのまりか／2月22日生まれ。東京都出身。
2014年に声優としてデビュー。TVアニメの出演作に「それが声優！」(小花鈴)、「AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-」(伝木凱にわか)、「三ツ星カラーズ」(さっちゃん)、「ウマ娘 プリティーダービー」(サイレンススズカ)、「デジモンアドベンチャー:」(太刀川ミミ)、「神達に拾われた男」(ミーヤ)など。ゲーム出演作も多数。高橋李依、長久友紀とともに声優ユニット「イヤホンズ」としても活動。

CDデータ

■1stシングル「夢みたい、でも夢じゃない」



〈収録曲〉
01. 夢みたい、でも夢じゃない
02. I tie U
03. 夢みたい、でも夢じゃない(Instrumental)
04. I tie U(Instrumental)


（取材・文／鈴木隆詩）