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「弱キャラ友崎くん」から、日本と中国の価値観の違い、「リア充」と「現充」の違いについて考えてしまう人も
中国のオタク界隈では、今年の1月の新作アニメは、内容に関する議論が妙に盛り上がっている感があるそうですが、なかでも大きな議論となっているのが
「弱キャラ友崎くん」だそうです。
「弱キャラ友崎くん」の序盤を大雑把に説明すると、
「人生はクソゲーと言い放つ陰キャでありながら、作中世界で大人気のゲームでランキング1位をキープする凄腕ゲーマーの顔も持っている主人公が、ある日オフ会で会ったランキング2位のゲーマーが実は同じクラスの、何かと完璧なヒロインだと判明。さらに、そのヒロインから主人公の生き方を否定されるものの、同時に『リア充』になる手法を提示され、リア充を目指していく……」
といった展開なのですが、その際にヒロインが否定する主人公の生き方や、作中で提示される主人公の目標である「リア充」に関して、中国のオタク界隈では結構な反発や、理解できないという反応が出ているという話です。
聞くところによると、近頃の中国のオタク界隈では日本の「リア充」から来たとされる「現充」(現実充実)という言葉が使われており、日本語の「リア充」の訳語に関しても「現充」とされるのが一般的だそうです。
しかしこの「弱キャラ友崎くん」のアニメを見た結果、これまで中国のオタク界隈で何気なく使われていた「現充」に関して、実は日本の「リア充」との間には無視できない違いがあるのではないか……などといった方向で疑問が生まれ、イロイロな考察が行われたりもしているそうです。
また作中で提示される「リア充を目指す」という目標に関しても、作中の日本の学校生活におけるリア充像が中国の感覚からは「リアルの生活が充実している」ように見えないということで、作品の中で正しいとされる価値観に関しても議論の的になっているそうですし、そこから日本の学校生活事情における価値観に関する考察なども行われているのだとか。
この辺りに関して中国のオタクな方から話を聞いたりするなどしてみましたが、中国でこういった受け取り方になることに関しては
「日本と中国ではリア充になるために必要とされるものが違う」
というのが理由として大きいのではないかという意見が出てきました。
中国では「現充」になるためにもっとも必要とされるのは「お金」であり、お金があればモテるし、他人から憧れられるような生活ができる。逆に言えば、お金がなければ「現充」にはなれないといった認識が強いといった話もあるそうです。
これは現在の中国社会の事情も影響しているそうで、中国では小さい頃から何かと「お金の有無」が意識される環境になっていますし、学生時代に関しても、建前として一定の平等さが維持され、学生時代特有の価値観が構築されている日本の学校生活とはさまざまな部分が異なります。
そのため、「弱キャラ友崎くん」の作品内で提示される「日本の学校のリア充」やそれを目指すために頑張るという展開に違和感を覚える人も出ているのではないか……といった話も教えてもらいました。
またそれに加えて、主人公が「大人気ゲームのランキング1位の凄腕ゲーマー」という設定も、あえて学校内のリア充を目指すことに関する疑問につながっているそうです。
中国ではeスポーツ(e-Sports)が日本と比べて大きく盛り上がっていて、eスポーツの強豪選手はわかりやすい「現充」的な存在ですし、「ゲームが強ければ性格などのほかの部分がダメでも人生の勝ち組になれる」というイメージも強いのだとか。
そんなわけで、作中における主人公の扱いやステップアップのための行動方針に関して、逆に非現実的に感じられてしまうところもあるそうです。
もちろん中国のオタクな人たちも日本と中国ではeスポーツの扱いが違うことや、原作が始まったのが2016年なので、現在とは事情が異なるといった情報は知っているそうですが、それでも中国の感覚では「強過ぎる」とすら思えるスキルを持った主人公が、作中の価値観に合わせてわざわざ学校生活におけるリア充を目指すという展開には違和感が生じてしまうとのことです。
「弱キャラ友崎くん」に関して中国のオタク界隈からは
「番組が始まる前は、推しヒロインをめぐる争いで熱くなるのかと思っていたのに、始まってみれば価値観の問題に関して熱くなるとは完全に予想外だった」
などといった話も聞こえてきます。
またそれと同時に
「今の日本社会の若者の悩みや迷いを理解する材料となりそうな興味深い作品」
といった評価も出ているそうですし、「弱キャラ友崎くん」は、中国のオタクな人たちにとってイロイロな意味で考えさせられる作品になっている模様です。
(文/百元籠羊)