神風動画が単独で自社制作したアニメ映画「COCOLORS」は、アニメ業界に咲いた“小さな花”【アニメ業界ウォッチング第73回】

2021年01月30日 12:000
(C) 松本大洋『ナンバーファイブ』/小学館・月刊IKKI/神風動画

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1990~2000年代、少人数でもアニメーションをつくれる時代が到来した


── 神風動画の設立は1998年ですが、その頃は個人制作のアニメがたくさん出てきた時期ですね。新海誠さんの「ほしのこえ」が2002年ですし……。

水﨑 CGソフトが、個人でも買えるような価格になってきたのが2000年前後なので、それがいちばん大きな理由でしょうね。アニメ作品といっても、何十人も集めて絵を描かなくても、ひょっとして3~4人でもつくれるんじゃないかと、一部の人たちが気づきはじめたのが90年代終わりから00年代初めのころです。

横嶋 僕は松本大洋さんのファンだったので、「ナンバーファイブ吾」のアニメ化(2003年)で神風動画を知りました。松本さんの独特のタッチを3DCGで再現する“大洋シェーダー”が気になったんです。神風動画のホームページを見たら、スタッフが本当に3~4人しかいなくて(笑)、かえって興味を持ちました。それこそ、アニメは何百人もの人たちが手分けしてつくるものだと信じ込んでいたので。

水﨑 「ナンバーファイブ吾」は4人でつくっていて、終わったあとに森田修平くん(後にYAMATOWORKSを設立)が抜けたんです。でも、作品をつくってみて「まだ今後も続けていけそうだな」という手ごたえは感じていました。そんな時期に募集をかけて、応募してきたのが横嶋くん。


── ということは、横嶋さんが入社しても4人だけですよね。不安はありませんでしたか?

横嶋 不安も、なくはなかったです。だけど人数が少ない分、ほかのアニメ会社では考えられないぐらい重要な仕事を回してもらえたんです。ですから、人が少ないことは、むしろメリットに感じていました。その神風動画が今は社員40人ですから、初期のころに入社した僕は運がよかったと思います。「絵を描いてお金をもらえるなら、ほかの仕事やアルバイトより絶対に恵まれている」と、がむしゃらにつくっていました。アニメづくりの全工程を間近に見られたのも、すごく楽しかったです。最初は何もできなかったけど、目の前の作業が作品として形になっていく現場に立ち会えて、いろいろなことを覚えました。

水﨑 少人数でアニメをつくろうという人たちが一斉に出てきた時期だけど、業界からもそうした動きを注目してもらえて、それもラッキーでした。今にして思うと景気がよかったせいかもしれないけど、カプコンさんのような大会社がゲームのオープニング映像の仕事を回してくれる。たった3~4人でつくっているのに、お金も相応の金額を払ってもらえました。だから仕事を着実にこなして、会社の基盤を安定させながら、自分たちの成長だとか技術的なテストをいつも考えていました。「次はこれを試してみたら、もっと上に行けるんじゃないかな?」といった感じです。
「ナンバーファイブ吾」の場合は、キャラクターの顔を3DCGで動かすというハードルがありました。それまでの3DCGは表情を動かすのが不得意だったから、キャラクターにマスクをかぶせていたわけです。その不得意なことに、あえてトライすることでハードルを越える。だけど、会社が大きくになるにつれて、そうしたハードルのない案件もこなさなくてはいけなくなって、横嶋くんが「辞めます」と言いはじめたのは、そういう時期だったんじゃないかな。


横嶋 そうだったかもしれません。僕が仕事をする基準は「次のステップに進めるかどうか」ですから。

── これから「COCOLORS」を見て、自分もアニメをつくりたいと志す若い人たちが必ず出てくると思います。そうした人たちに対して、横嶋さんから何か言いたいことはありますか?

横嶋 3DCGは工夫次第で、自分のやりたいことに直結できるツールです。少人数でつくれるし、納得がいくまでトライ&エラーを重ねられるので、これからアニメーションを始めたい人には非常に適しています。それと、今の3DCGはセルアニメの質感にこだわる風潮が強いようですが、せっかく違うツールを使うのだから、必ずしもセルの質感にこだわる必要はないと思います。もっと別の方向へ飛び出してもいいんじゃないかと僕自身も考えているし、3DCGという表現に対して希望も持っています。



(取材・文/廣田恵介)

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  • 神風動画代表、水﨑淳平さん

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