新たな地平線、メディアで紡がれる物語音楽の序曲──Sound Horizon「絵馬に願ひを!」(Prologue Edition)リリース記念! Revoインタビュー

2021年01月14日 17:000

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「Märchen」のあとから次なるメディアを模索

 

――今回、Blu-rayというメディアを「選択」されましたが、「Märchen」の段階から次なる発表方法を模索していたとお聞きしました。

 

Revo そうですね、「Märchen」のときから、次の完全新規作品はCDではない、CDという従来のメディアでのリリースは「終わるだろうな」と思っていました。ただ、この間に活動していたLinked Horizonはそういう新しい試みを始めるグループではないですし、「Nein」も既存の作品を再構築する性格のものなので従来と同じ形を選んだということで、アニバーサリーが訪れたこのタイミングになりました。でも、気づけば(「Märchen」から)10年が経ってしまっていて……。10年経っているんですよ、恐ろしいですよね(笑)。yの値が減少する場合の指数関数のように、すごい加速度で遅くなっていますよ。進めば進むほど遅くなって、最後にはブラックホールに飲み込まれた光のように……。

 

――それ、最後はもう出ないってことですよね(笑)。

 

Revo あるいは、「アキレスと亀」というパラドックスで永遠にアキレスは亀に到達できないみたいなペースに。

 

――だから、それだともう次は出ないってことですよね(笑)。ただ、今回のBlu-rayシングルという形を見ると、創作意欲が音楽という枠に留まらないという表れなのかと感じるのですが?

 

Revo でも、思いつくこと自体は突飛でも不思議なことでもないと思うんですよ。僕じゃなくても考えるようなことだと思うんですが、思いついたことを実行するのはかなり大変でした。だから、誰も実現するに至らなかったのかなと。採算考えると無謀なのでやる意義がなかった……とは思いたくないよね(笑)。

 

――でも、Revoさんとしてはその困難を乗り越えてでも、新しいエンターテインメント作品を作りたかったということですか?

 

Revo いや、一概にそういうことでもないんですよ。ただ、誰かがやらないといけないでしょうとは感じていました。思いついたときから実現までの間に10年以上の時間が経っているので、もしもその間にBlu-rayという形が(音楽の)メインストリートになってしまったとしたら、逆にやらなかった可能性もありますが。それはないだろうとは薄々感じつつではありましたが。でも、メインストリートどころかサブストリートにすらなっていなかったので。

 

――そうですね。メディア自体が崩壊し始め、配信がメインな世の中になってしまいました。

 

Revo ストリートができるどころか、そんな店はどこにも存在していなかった。だから、「やっぱり僕がオープンさせないとダメなんだろうな」という感じですね。

 

――ご自身としては新しい分野をクリエイトしている意識はありますか?

 

Revo でも、結局はイラストを描いたのも映像を作ったのも自分ではないので。その意味では、以前から変わらずプロデュースする立場ではありますね。

 

――サウンドオンリーではない、クリエイター兼プロデューサーですね。ただ、制作ではないプロデューサー視点として、Blu-rayという選択肢を選ぶことで、近年続けてきた「敷居を下げる」という点で危惧は生まれませんでしたか?

 

Revo それはありますよ。全然全然。今もあります。逆に言うと、随分前からそのことがわかっていたので、意図して敷居を下げてきた側面もあるので。CDより聴きづらくなるだろうとは思います。でも、その意味では話は戻って、そもそも盤で出す時代は終わっているんですよ。世界の潮流としては。配信という方向も模索しましたが、ストリーミングやダウンロードといったシステムに乗せるほうが敷居は高いです。届けたいのは曲単位で切り売りするやり方ではなく、選択肢云々やパッケージングまで含めて不可分な音楽作品なので。それは受け取り手ではなく、こちら側の問題としてですね。1曲だけの話ではないですからね。Blu-rayでリリースすること自体が簡単ではないですが、配信で独自規格をやろうとしたらオンラインゲームを開発するような規模になってしまいます。そういうことも視野には入れていますが……。でも、もしそうなったら商品価格に対する考え方も変わるでしょうね。なんかたとえば、欲しい曲が出るまでガチャを回さないといけない、みたいな(笑)。

 

――(笑)。でも、オンラインゲームという例えを聞いたとき、すごくイメージはつかめました。購入者がアバターを作ってログインし、楽曲の選択によってストーリーが変化する、という形ならばSHとの親和性の高さを感じますし、これまでのSHの延長的な世界でもありますね。

 

Revo さすがにオンラインゲームを作るよりは困難ではないと思いますが。音楽を作るという意味で、今までとは根本的に違うものがいろいろと求められるので、音楽を作る人がそこに参入するのはなかなか大変ですね。それは果たして音楽ビジネスの範疇に収まるのか、という問題がついてまわります。

 

――今後ますます、サウンドクリエイター、サウンドプロデューサーという枠を超えた存在になりそうですね。

 

Revo 将来的には違う形になっているかもしれないね。ハイパーメディアとか付くようなクリエイターとか(笑)。

 

――(笑)。大々的に表舞台で活躍して、女優と結婚するような存在に。

 

Revo そうふられると、こう答えるしかないね。別に・・・・・・(笑)。

 

――それもあくまで未来への選択肢のひとつ、ですね。ただ、Revoさんが表現を追求するうえで、音楽というフィールドには留まらない感覚があります。

 

Revo そうですね。音楽から始まった物語をエンタメとして提供する方向はいろいろあると思います。軸足はあくまでも音楽ではありますが。小説化、漫画化はされましたが、アニメ化はまだですし。ゲーム化とか、舞台化とかもあり得るのかな。もともと舞台でやってるけど(笑)。まあ、そういうことを言い出すとキリがないので、あくまで可能性の話として。ただ、プロジェクトの規模が大きくなるというのはなかなか大変なことですからね。一概にいいとは言い切れませんが。

 

 

音楽で物語を表現するという形のひとつ

 

――今月からAround 15周年記念祭という形でコンサートも始まります。こちらも久しぶりになりますが、どのような心境ですか?

 

Revo そうですね。「懐かしい」という気持ちがあるね。1部は「絵馬に願ひを!」からの曲が中心となりますが、3部は過去曲が中心となるので、「この曲をやるのも久しぶりだな」という感覚はありました。そして、そこに影響を及ぼしているのが「Re:Master Project」の存在なんですよ。既存の作品をリマスタリングする作業の中で一度振り返っているので、そのときに何を思ったのか、というのがこの3部に反映されているとは思います。僕自身、見つめ直した部分があるので。

 

――そのとき感じた、ある種の答えが見られるというわけですか?

 

Revo と言うと大げさかもしれないですが、選曲には関係してきているかな。今一度、15年分の歴史を再確認しましたからね。だから、コンサートの形としては、「聖戦のイベリア」時の「第二次領土拡大遠征」に近いですが、「絵馬に願ひを!」自体がSingleと呼ぶにはかなりのボリュームなので、ちょっと欲張った内容になってはいますね。それに、コンサートのネーミングからわかると思いますが、「絵馬に願ひを!」の「Story Concert」ではないんですよ。やはり「Around 15周年記念祭」ということで、新しい楽曲も、過去曲から厳選したものもやりつつ。あとは2部の「サンホララボ」でも振り返りと総括をやっていけたら(笑)。そこはでも、台本を作るつもりはないので。

 

――だと思いました。

 

Revo  Around 15周年スペシャルサイトでの「サンホララボ」もアドリブですよね。

 

――アドリブでした。

 

Revo 当番の人はなんとなく考えていたかもしれませんが、ほかの2人はいきなり話をふられてましたし。で、清水さんは大体「私は言うことありません」って(笑)。そういうわけにもいかないから、そのあとでちゃんと話していましたが。

 

――そこはさすがに。ってラボの話は置いておくとして(笑)、3部は「Re:Master Production」シリーズを聴いた人にとっての嬉しいご褒美になりそうですね。

 

Revo 最新と過去作品の両方に触れることで、「変わった」と思う部分と「変わらないな」と思う部分を認識してもらうことにはなるのかな。その両方(の認識)が宝物だとは思いますね。そう感じてくれたら嬉しい。15年応援してくれた皆さんへの贈り物だと僕は思っています。

 

――あらためてですが、Re:Master Projectで過去作に触れたとき、自身としてはどのような認識がありましたか?

 

Revo 単純に、「そういえばこんなことをやってたんだな」というところは非常にありました。「今だったらそうしないんだろうな」とか。

 

――自分を褒めるような感覚もありましたか?

 

Revo 「すごいな」とは思いましたよ。クリエイターの人ならわかるでしょうが、「こんな大変なものを作ったのか」「同じものを今作れと言われたら嫌だな」という感覚はすごくありました。10年という年月を超えてくると作ったときにどういう気持ちだったのか、なんとなく大変だった覚えはあっても記憶が薄れていますし、15年分が一気に押し寄せたというところもあるかもしれませんが。でも、いちリスナーとしてまっさらに近い気持ちで触れてみたとき、自分でも圧倒されるようなところはありました。やっぱり、あれだけの曲数が存在していて、かつ、それで「物語」を表現しようという意志が伝わってきたので。もちろん、詰めの甘さみたいなところもわかってしまうので、そこはリマスタリング作業によって「今ならこうする」という形を提示させてもらっています。ただ、作品作りに対するエネルギーみたいなものについては、自分でもリスペクトする部分は大いにあるなと。

 

――最後に、まだSH世界を知らない人も意識して、「絵馬に願ひを!」はどのような1枚であると紹介したいですか?

 

Revo 媒体からして変わっている作品なので、どう受け止めていいのか、昔から知ってる皆さんもわからないとは思います。ただ、「Sound Horizonというグループがいるらしい」「物語風な曲を作っているらしい」という人には、その最新作という部分がわかりやすく提示された作品だと思います。なので、SHをなんとなくしか知らなかった人にもぜひ触れてもらいたいですね。音楽で物語を表現する、という一つの形を知るきっかけになれると思います。逆に、「(SHを)すでに応援しているよ」っていう人は友達に聴かせてみてください。聴かせてみるっていうか、プレイさせてみてください(笑)。

 

――家に呼ぶか、Blu-rayを携えて遊びに行くかして、一緒に「プレイ」してもらうのがいいかもしれません(笑)。

 

Revo そうですね。仲のいい友達がどっちのルートを選ぶのか、「お、そっち行ったか。ちょっと付き合いを考えようかな」みたいな楽しみ方もあるかもしれないからね(笑)。

 

(取材・文/清水耕司)

 

【CD情報】

■Sound Horizon Around 15th Anniversary 7.5th or 8.5th Story BD「絵馬に願ひを!」(Prologue Edition)

・発売日:令和参年睦月拾参日 降臨

・価格 : 肆仟伍佰圓 (税別)

・総参詣時間 : 参拾伍分以上 

・壱道筋乃参詣時間 : 貴方次第

 

<初回生産封入特典>

「連動幸運券〜弐分乃壱〜」

(Full Edition発売時まで取っておくと何か良いことがあるかも!)

 

<「絵馬に願ひを!」(Prologue Edition)録音時参加者>

・歌い手:石田彩夏、香西愛美、清永大心、SAK.、神社関係者、ハセガワダイスケ、廣瀬真平、水野雅和

・楽器奏者:五十嵐宏治(Key.)、石塚由有(太鼓、神楽鈴、鼓)、大塚惇平(笙、鉦鼓)、大橋英之(Gt.)、熊田かほり(琵琶)、纐纈拓也(龍笛、楽太鼓)、淳士(Dr.)、髙桑英世(篠笛)、中ヒデヒト(Sax)、西山毅(Gt.)、長谷川淳(Ba.)、三浦元則(篳篥、鞨鼓)、本間貴士(箏)、与野裕史(Dr.)、弦一徹ストリングス

・語り部:Ike Nelson、大塚明夫、沢城みゆき、深見梨加、悠木碧、

・発売:ポニーキャニオン

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