【インタビュー】主演の石川由依による、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズすべてを俯瞰したボーカルアルバムが誕生！

どの曲も各話の物語に基づいていて、聴いているとシーンが思い浮かんできます

── 収録曲は13曲。それぞれの曲について、石川さんの印象やレコードディングの感想をお聞かせください。まずは1曲目「Colored Memories」（作詞：安藤紗々、作曲・編曲：黒須克彦）からお願いします。

石川　「Colored Memories」はTVシリーズ第1話をイメージした曲です。歌詞からも曲調からも、見えないところに手を伸ばして、どうしてもつかめなくて、それが何かはわからないけれど、求めているものがあるという、第1話のヴァイオレットの心境を感じました。

── 重たくて切ないイントロが、まずは心に残りました。

石川　印象的な入り方で、耳に残りますよね。周りの身近な人に聴いてもらったら、この曲が好きだと言ってくださる方も多かったです。

── 2曲目は「言葉の向こう」（作詞：西田恵美、作曲：momo、編曲：前口渉）。第2話をイメージした曲です。

石川　どの曲もそうなんですけど、作家のみなさんがその話数のどこをチョイスしてくるんだろうというのが楽しみでした。「言葉の向こう」は、ヴァイオレットが第2話で学んだことがモチーフになった曲です。言葉にはウラとオモテがあって、文字通りではない気持ちを察するのは難しいよねという部分を、西田さんが歌詞として表してくださいました。やさしい風が吹いているようなメロディとアレンジで、今はまだ失敗ばかりですが、自動手記人形（ドール）を続けていきたいというヴァイオレットやエリカの決意が、さわやかに表現されています。

── このアルバムの収録曲の大きな特徴として、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を知っていれば、この話数のこのシーンのヴァイオレットのことだなとすぐわかるんですけど、歌詞には一切、キャラクター名とか作品固有の用語が出てこないので、歌単体としても聴くことができるんですよね。

石川　そうですね。歌として単独で完結しているうえで、作品を知っているとシーンが思い浮かぶという作りになっています。固有名詞は出てこないんですけど、各話のセリフが巧みに引用されていて、例えば「言葉の向こう」の歌詞の中にも、「“あいしてる”を…知りたいのです」というヴァイオレットのセリフが使われています。

── 3曲目「Sprout」（作詞：高瀬愛虹、作曲・編曲：大和）は、第3話の曲です。

石川　第3話はヴァイオレットが自動手記人形の養成学校に通って、ドールとしての道をしっかりと歩み始めた話で、そこで出会ったルクリアと、兄のスペンサーのドラマが軸になっていました。「Sprout」は“芽生え”という意味なんですけど、ルクリアがずっとスペンサーに伝えられなかった想いをヴァイオレットが代筆して、ひとつ成長したところが、この曲には表現されているように思いました。

── この曲の歌詞は、ヴァイオレット目線ではないような気がしたのですが、どうでしょう？

石川　自分の本当に伝えたい言葉をヴァイオレットに見つけてもらえたルクリアの視点かもしれないですね。そこは聴いてくださった方が自由に解釈していただければと思います。

── 4曲目「Answer」（作詞・作曲：結城アイラ、編曲：星銀乃丈）は、第4話のイメージです。

石川　結城アイラさんは作詞で5曲、作詞・作曲で2曲と収録曲の半分を手がけてくださいました。作詞・作曲の両方で楽曲提供をされたのは、今回が初めてということで光栄ですし、ご本人もうれしいとおっしゃってくださいました。私のレコーディングのディレクションも結城さんと斎藤プロデューサー、それから「Colored Memories」の作詞をされた安藤紗々さんの3人が担当してくださって、たくさんお世話になりました。

── 作詞家さんがディレクションに参加されたんですね。

石川　斎藤プロデューサーには、作詞された方がディレクションしてくだされば、歌詞の細かなニュアンスをとらえやすいのではないかという考えがあったみたいです。「Answer」は、アイリスの両親に向けての想いを歌った曲で、本当の気持ちをなかなか素直に言えずに強い言葉が出てしまって後悔して、最後は素直な気持ちを手紙にする第4話のストーリーが表現されていると思いました。

── メロディもボーカルも、すごくやさしい曲でした。

石川　第4話は親目線で見るか、娘目線で見るかで印象が変わってくると思うんです。だからこそ、幅広い年代に共感を呼びやすいというか、母と子の関係って誰もが一度は悩む問題じゃないですか。アイリスへ口出しする両親には、「お父さんお母さん、そんなこと言っちゃダメだよ！」と思うし、両親が子を心配してアレコレ言っちゃう気持ちにも「わかる！」と思ったり。でもお互いに想い合っていて、手紙なら素直な気持ちが書けるというのが、この曲のテーマです。

── 見事にドラマを補完している曲だなと思いました。5曲目は「月下の庭園で」（作詞：結城アイラ、作曲：川崎里実、編曲：多田彰文）です。

石川　シャルロッテ姫の恋する気持ちを表現した歌詞で、物語的でロマンチックですよね。楽曲的にも優雅で、王宮の音楽の雰囲気がありました。第5話のバックで流れていてもおかしくない曲なんじゃないかと思います。サビが特にかわいらしくて、シャルロッテ姫にぴったりです。

── 「カメリアが真っ白に咲いてゆきます」という歌詞があります。カメリアは椿のことですね。

石川　白椿の庭園が第5話に出てきましたが、白椿はシャルロッテのドロッセル王国を象徴する花で、歌詞にも印象的に使われていました。

── 6曲目は「beautiful sky」（作詞：結城アイラ、作曲・編曲：佐々倉有吾）です。

石川　放送前のPVで、結城さんが歌われた「Violet Snow」がイメージソングとして使われていましたが、実は「beautiful sky」のメロディは、イメージソングのもうひとつの候補だったのだそうです。それを今回のアルバムに生かせないかという話になって、新たな歌詞とアレンジで、第6話をイメージした楽曲に生まれ変わりました。京都アニメーションの八田（真一郎）プロデューサーは、当時からこの曲が大好きらしいです。

── アレンジによって、第6話にぴったりの楽曲になったと思います。間奏には石川さんによるきれいなコーラスが入っていて、第6話の満天の星空を想像しました。

石川　壮大な夜空を想像できる曲だと思います。コーラスでたくさん声を重ねて、アリー彗星が空に輝いているような印象になりました。また、最後のパートには、リオンがシャヘル天文台から旅立って、どこか遠くの街で、またヴァイオレットに出逢いたいという思いが描かれていて、第6話のラストとリンクしています。

── 7曲目は「Memories」（作詞：結城アイラ、作曲：黒須克彦、編曲：伊藤翼）。これは第7話のゲストキャラクター、戯曲作家のオスカーにフォーカスした曲になっていました。

石川　第7話は切なくて、娘さん（オリビア）を亡くして心を閉ざしているオスカーの話でした。「Memories」の歌詞も、娘を持った親目線で書かれていて、読んだだけでうるっとしてしまって。かつてオリビアが日傘を差して湖畔を歩いていた姿と、オスカーのもとにやってきたヴァイオレットの姿が重なるという場面が歌詞の中に織り込まれていて、「ああ、7話だな」と思いました。

── サウンド的には、後半に行くに従って少しずつ明るくなっていって、希望を感じました。

石川　そうですね。心を閉ざしていたオスカーがヴァイオレットと出会って、生きていく力を取り戻したように、この曲も徐々に盛り上がって、前を向いて歩いていくという展開になっています。