【Steam】読書の秋にゲームで物語を!PCビジュアルノベルゲーム特集

2020年10月10日 12:000
【Steam】読書の秋にゲームで物語を!PCビジュアルノベルゲーム特集

アキバ総研をご覧の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。ゲーム買いすぎちゃう系ライターの百壁ネロでございます。 皆さんは、ノベルゲームはお好きでしょうか? 筆者は、アキバ総研で連載中の「つみゲ部!」にて、「夜、灯す」という、ホラーアドベンチャーノベルゲームを紹介するにあたり実際にプレイをしましたが、仕事でゲームをしているということを忘れて、普通にニヤニヤしたりウルッときたりゾクッときたりしてしまいました。物語に入り込むという体験は心地いいなと改めて認識した筆者でしたが、今回は「読書の秋」ともからめて、ゲームで読書体験ができるビジュアルノベルゲームをご紹介していきます。



1.“昔話”を題材とした幻想的和風ノベルアドベンチャー「徒花異譚(あだばないたん)


  • 徒花異譚」(Liar-soft)
  • 2020年6月18日発売
  • 価格:1,870円(2020年9月26日現在)
  • コピーライト:(C) 2020 Liar-soft

誰もが一度は聞いたことがある「昔話」を題材にしたゲームは、古今東西、数多く存在します。今年新作が発売されることでも話題の「桃太郎電鉄」は、もともとは「桃太郎伝説」という昔話をモチーフにしたRPGの派生作品だったりします。

ご紹介する「徒花異譚」もまた、そんな日本の昔話を題材にしたビジュアルノベルゲームです。



本作「徒花異譚」は、純白の着物をまとった記憶喪失の少女・白姫(しろひめ)と、筆を刀のように操る謎の少年・黒筆(くろふで)が主人公の物語です。 舞台は、昔話が記された本・絵草子(えぞうし)の中の世界「徒花郷(あだばなきょう)」。この世界では“紙魚(しみ)”と呼ばれる奇妙な生物によって絵草紙が食い荒らされており、人々がよく知る昔話の筋にゆがみが生じてしまっています。白姫と黒筆の役目は、“紙魚”を捕まえて墨に変え、文字にするという能力を用いて、荒らされた昔話の世界を渡り歩き、修復していくことです。 しかし、白姫は記憶喪失であるため、「自分が何者なのか」や「黒筆とどういう関係だったのか」、そして「自分がなぜ絵草紙の修復を役目としているのか」といった事柄をまったく覚えていません。これら白姫のなくした記憶が物語をけん引する大きな謎となり、プレイヤーを「徒花異譚」の世界にぐいぐいと引き込んでいきます。



本作の物語としての大きな特徴は、誰もが知る昔話が用いられている点にあります。


たとえば最初に2人が訪れることとなる「花咲かじいさん」のお話では、正直じいさんの畑でここ掘れワンワンと吠える「犬のシロ」や、隣のよくばりじいさんによって、シロが「殺される」という部分が、“紙魚”によって食い荒らされて失われています。さらに、物語のゆがみが加速して“徒花荒らし”と呼ばれる怪物が現れ、物語をめちゃくちゃにしてしまうという出来事も起こります。この「よく知る昔話に異変が生じる」という設定によって、「この先に何が起こるか予想がつかない」という興味とスリルをプレイヤーに与えることに成功しているように筆者は感じました。



また、それだけではなく、それら「物語のゆがみ」と向き合い、悩み、考え、決意し、選択をしていく主人公・白姫の存在もとても魅力的です。


筆者は、昔話を生まれて初めて聞いたときの淡い記憶を、無垢な白姫の想いに思わず重ねながら「徒花異譚」の世界に浸りました。触れると消えてしまいそうな、美しくもはかなげな、そのビジュアルも相まって、白姫はプレイヤーにとって目が離せない存在となります。



「徒花異譚」の魅力は、物語やキャラクターだけではありません。
まずプレイヤーの目を引くのは、やはりその美しいグラフィックでしょう。淡く繊細なタッチで描かれた和風のイラストは、「絵草紙」という世界観にこの上なくマッチし、プレイヤーをゲームに深く没入させてくれます。


また、テキストの文体がとても美しいことも特徴的です。細やかな心情描写や比喩表現には、どこか文学的な香りすら漂います。一見、難しい言葉や漢字が多く、読むのが大変そうに思える本作のテキストですが、ゲームを進めて世界観に慣れるにしたがって、するすると頭に物語が自然と流れ込んでくるような心地よさが味わえます。 さらに、BGMも透明感があり、心地よい響きで物語を盛り上げてくれます。音楽鑑賞ができるモードも用意されているので、好きな曲をじっくり聴くことができるのも、うれしいポイントです。
グラフィック・テキスト・BGMと、ゲームを構成する要素のすべてがバランスよく組み合わさり、「徒花異譚」のハイクオリティな世界を造り上げていると言えるでしょう。



「昔話を題材にしている」と聞くと、もしかしたら「子どもっぽいストーリーなのでは?」というイメージを持ってしまうかもしれません。しかし「徒花異譚」は、そんな昔話を掘り下げて再解釈し、大人が楽しめる味わい深い物語へと昇華させています。
心を動かされるような上質の物語体験をしたい方はぜひ、この「徒花異譚」をプレイして、白姫・黒筆と共に昔話の世界を冒険してみてください。



2.あの世とこの世の狭間にあるコーヒーショップで紡がれる物語「Necrobarista


  • Necrobarista」(Route 59)
  • 2020年7月22発売
  • 価格:1,980円(2020年9月26日現在)
  • コピーライト:(C) 2020 Route 59.

皆さんは、コーヒーはお好きでしょうか。筆者は、かなり飲むほうでして、仕事をしながら、アイスコーヒーをがぶがぶ飲むのが日課になっています。疲れた頭をリフレッシュさせてくれ、心をゆったりリラックスさせてくれるコーヒーですが、これからご紹介する「Necrobarista(ネクロバリスタ)」は、そんなコーヒーがキーアイテムとなっている作品です。



本作の物語の舞台は、メルボルンの裏路地にひっそりとたたずむ「ターミナル」と呼ばれる1軒のコーヒーショップ。そこは、死者と生者が共存できる唯一の場所であり、死者が最後の24時間を過ごす、この世とあの世の狭間です。


「ターミナル」で働くネクロマンサー兼バリスタの女性・マディを中心に、「ターミナル」を訪れた死者の青年・キシャン、元ターミナル経営者でありマディの師匠であるチェイ、カフェイン中毒気味の天才少女・アシュリーなど、個性豊かな登場人物たちが物語を紡いでいきます。


独特な雰囲気が漂う幻想的な世界観の中で、しっとりと静的に物語が進んでいくのが印象的です。



本作は、クリックをして文章を読み進めていく、オーソドックスなビジュアルノベルゲームのスタイルとなっています。しかし、キャラの立ち絵があって文章が表示されるウィンドウがあって……というような、一般的な見た目のゲームではありません。


本作「ネクロバリスタ」の最大の特徴は、キャラクターも風景もすべてが3Dで描かれているということです。



画面をクリックすると3Dで描かれたキャラクターが動き、セリフの文字が浮かび上がり、そしてカメラのアングルが切り替わります。3D空間を舞台に繰り広げられる「Necrobarista」は、ノベルゲームでありながら、すべてのシーンが映画のワンカットのようであり、また、漫画のひとコマのように感じられ、唯一無二のプレイ感をもたらしてくれます。この斬新な会話劇の演出は、画像だけではなかなか伝わりづらく、ぜひ実際にプレイして見てみていただきたいところです。



「Necrobarista」では、メインシナリオ以外に、世界観やキャラクターをより深く掘り下げるサブシナリオも存在します。メインシナリオの中で集めたキーワードを使って、サブシナリオをアンロックしていくシステムとなっているのですが、ここは一人称視点でコーヒーショップ「ターミナル」を自由に歩き回るという、一風変わった探索要素になっています。 メインシナリオでマディたちが物語を紡いでいた「ターミナル」を自分の視点で歩けるというのは、まるで映画やドラマのロケ地を訪れたようで、なんだか筆者は少しミーハーな気持ちになりました。



3Dモデルを用いた映画のようなシナリオの演出もさることながら、本作は、ゲーム内のインターフェイスなど、細かな部分まで実にスタイリッシュに作り込まれています。「生と死の狭間にあるコーヒーショップ」という物語の特殊な世界観にマッチしたやわらかなデザインは、ゲームをじゃましないどころかゲームをさらに盛り上げる装置として機能しています。


筆者、正直、こんなにかっこいいセーブ&ロード画面、初めて見ましたよ……!



「死」と「コーヒー」という、一見交わらない2つの要素が静かな世界観の中でしっかりとブレンドされ、ここでしか味わえない体験を生み出している「Necrobarista」。少し変わったノベルゲームを遊んでみたいという方はぜひ、コーヒーショップ「ターミナル」に足を運んで、マディたちの物語を実際に体験してみてください。

3.手紙の文章を操作して人々の運命を変える! パズル風ノベルゲーム「WILL: A Wonderful World / WILL:美好世界



皆さんは、神様に何かを願ったことはあるでしょうか。
「苦しい時の神頼み」という言葉もありますが、なにかどうしようもなく困ったことが起きたとき、何か超常的な力に頼ってしまうというのは、もしかしたら人間という存在の不安定さの表れなのかもしれません。 ご紹介する「WILL: A Wonderful World / WILL:美好世界」は、そんな神様が主人公のノベルゲームです。



本作の主人公は、記憶喪失の少女・ユアン。見知らぬ部屋で目覚めた彼女は、しゃべる犬(のような神様)“イシ”から、自分が、助けを求める人間の運命を変える役割を担う神様であると告げられます。

こうしてユアンは、人間たちから送られてきた願いがつづられた手紙を読んで、彼らを幸福へと導いていくことになるのでした……というのが、本作のストーリー。 なかなか奇妙な設定ではありつつも、それを無理なく読ませるパワーがある、キャラクターたちの生き生きした会話が特徴的なシナリオとなっています。



本作のメインとなるゲーム部分は、「人間たちから届いた手紙」です。人々はみな、何かしらピンチな状況に陥っていたり、悩みを抱えており、それをよい方向へと導いていくのが、神様であるプレイヤーの目的となります。しかし、いわゆる一般的なノベルゲームのように、選択肢を選ぶ形式で問題を解決していくわけではありません。


本作は、「手紙の文章の一部分を入れ替えて物語を変える」という、独自のシステムが採用されており、これこそが本作の最大の魅力になっています。たとえば、「テニスコートの電気が消えたあとに、路地へと向かった」という内容の文の順序を入れ替えて「テニスコートから路地へと向かい、電気が消えた」というようにすると、電気が消えた場所が「テニスコート」ではなく「路地」へとなり、これにともなって物語の結末が変化します。

手紙の文章は複数のブロックに分割され、入れ替え可能なブロックはその中の一部となっているため、入れ替えが極端に複雑すぎるようなことはありませんが、とはいえ、どこを入れ替えれば成功するかじっくり考える必要があり、ノベルゲームでありながらパズルのようなプレイ感覚が味わえます。



さらに、ひとつだけではなく同時に複数の手紙を読み、それぞれ手紙内の文章入れ替えを要求される場面も用意されています。 手紙Aの文章を手紙Bに入れるという、手紙をまたいだ操作も可能となり、思考すべきことが増え、パズル的には複雑になっていきます。しかし、その分、解けたときの爽快感は高く、さらに物語的にも、2つの手紙の送り主2人が互いに関係しあうような流れとなるため、目が離せない深みのある展開になっていきます。



手紙の送り主である人間たちは、いずれもみんな個性的。テニスとチョコレート牛乳が大好きな明るい女子高生、恋愛に慣れていないコンピューターオタクの美少年、希望を失い自殺をしようとする画家など、ひと癖もふた癖もあるキャラクターたちの運命がプレイヤーの操作によって交差していく様子は面白く、先の展開が気になって、ついついプレイをする手が止まらなくなってしまいます。



ゲームシステムやストーリー面以外での本作の特筆すべきポイントとして、筆者はローカライズ(日本語化対応)のクオリティの高さをあげたいと思います。 この「WILL: A Wonderful World」は、中国のスタジオが開発した作品なのですが、シナリオやインターフェイスに関して、全体的にとてもていねいに日本語翻訳がされています。「手紙の文章を入れ替える」という、言葉に重きを置いたゲーム性であるため、翻訳次第では面白みが大幅に損なわれてしまうおそれもある作品かと思います。しかし、もともと日本語のゲームであるかのように思えるぐらい、翻訳に違和感がなく安心して遊べるというのは、とてつもないことだなと筆者は感じました。



ノベルゲームが好きな人はもちろん、パズルゲーム好きにもおすすめできる本作。ぜひ、あなたも神様になって、人々の運命を導いてみてください。

秋の夜長にゲームでのんびり物語体験を!

 

というわけで、おすすめの3作をご紹介しました。

私事で恐縮ではありますが、筆者、小説家でもありまして著作をいくつか出しているのですが、今回ビジュアルノベルゲームをプレイして、「物語」というものの面白さを再認識し、自分でも何か新しくお話を書きたいなというモチベーションが大いに湧きました。普段あまり小説を読まないような人でも、ゲームで物語体験を楽しめるというのが醍醐味であるビジュアルノベルゲーム。ぜひ、皆さんも気になる作品をプレイして、のんびりと「読書の秋」を楽しんでみてくださいね。

筆者:百壁ネロ
ゲーム買い過ぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)、「母の嘘(「悪意怪談」所収)」(竹書房)。

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