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「Re:ゼロ」の劇中で「Wishing」が流れたときは、自分の曲なのに泣いてしまいました(笑)
── TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」からは、後期エンディングテーマの「Stay Alive」(歌:エミリア/CV:高橋李依)と、第18話挿入歌の「Wishing」(歌:レム/CV:水瀬いのり)の2曲が収録されています。「Re:ゼロ」のお仕事はいかがでしたか? ヒゲドライバー 楽しかったですし、「Re:ゼロ」は物語にもハマって、毎回楽しく見させていただいていました。だから、第18話で「Wishing」が流れたときは、自分の曲なのにめちゃめちゃ泣いてしまって(笑)。しかも、ファンのみなさんからの反響がすごく大きかったんですね。アニメの物語があって絵があって声優さんの芝居があって、それとうまく噛み合ったときの音楽の爆発力を感じました。僕にとっては、ひとつの転機になった曲です。そして、水瀬いのりさんのボーカルが本当に素晴らしくて。ご本人もアーティスト活動をされてますが、出るべくして出てきた方だなと思いました。
── 水瀬さんは今回のアルバムで、「Wishing」を含めて3曲に参加されています。 ヒゲドライバー そのうちの「More One Night」(TVアニメ「少女終末旅行」エンディングテーマ/歌:チト(CV:水瀬いのり)、ユーリ(CV:久保ユリカ))は、ほぼemonさんという方が作っていて(作詞・作曲・編曲)、僕は共同作曲者として名前を連ねているだけなんです。作曲の仕方も特殊で、こういうメロディを作ってほしいというリクエストに合わせて、まずは曲のフックになるメロディを2人で作って、それをBメロに置いて。そこから、前のAメロと後のサビを一緒に考えていくという。
── パズルみたいですね。 ヒゲドライバー そうですね。ひとつのメロディから、その前後を作っていくというのは、面白い体験でした。
── ラストに収録されているTVアニメ「宇宙よりも遠い場所」のエンディングテーマ「ここから、ここから」(玉木マリ/CV:水瀬いのり、小淵沢報瀬/CV:花澤香菜、三宅日向/CV:井口裕香、白石結月/CV:早見沙織)は、水瀬さんを含み、全員がアーティスト活動をされている声優さんです。しかも実力派揃いですね。 ヒゲドライバー この曲の成り立ちも面白くて、まず、監督さん(いしづかあつこ氏)が「スピッツみたいな曲を作ってほしい」とおっしゃったんです。「僕はきっと旅に出る」という曲があるんですけど、そういうイメージでと。
── ヒゲドライバーさんの音楽のルーツであるバンドの名が、発注として出てきたんですね。 ヒゲドライバー そうなんです。2017年になって原点回帰の曲を作れたのが楽しかったですし、アレンジは僕がやっているバンド、ヒゲドライVANのみんなでやって、爽やかなロック感を出し、自分にとってもしっくり来る曲ができました。そして歌ってくださった4人が本当にうまくて、レコーディングは、少し歌っていただくだけで、「はい、OKです!」という感じで、一瞬で終わりました。
── さすがです。ところで作曲家は、レコーディングのディレクションも仕事のうちなんですよね。 ヒゲドライバー 作曲家がメインでディレクションする場合と、そうでない場合があります。今回の収録曲では16曲中7曲が僕のディレクションですね。ほかの方がされる場合でも、レコーディングにはほぼ立ち会って、意見を求められたら発言しています。
── アニソンのディレクションをするとき、どんなことに留意していますか? ヒゲドライバー 鈴木このみさんや原田ひとみさんといったアーティストさんに提供した曲は、本人の世界観で自由に歌っていただければいいんですけど、キャラソンの場合はキャラクターの範囲内で歌を表現していただくというのが難しいところで、レコーディングの現場は三者のバランスで成り立っているような気がします。
── 三者というのは? ヒゲドライバー 歌を実際に歌う声優さんと、曲を作った僕らクリエイターと、作品の監督さんやプロデューサーさんといったアニメ制作サイドです。それぞれに楽曲に対する思いがあって、バランスを取りつつ、ひとつの曲を作り上げていくので、ときとしてすり合わせが大変だったりしますが、その分、うまくいったときの達成感は大きいです。
── 声優さんは、キャラクターとして歌うことへの対応力が高いというイメージがあります。 ヒゲドライバー そうですね。キャリアがある方ほど、自分のできることがはっきりわかっていて、それを踏まえつつ完成形に落とし込んでいくのがうまいなと思います。ディレクションに対する反応もすばらしくて、こちら側の言葉を汲んでくださる力も高いですね。
── 「ここから、ここから」のようにユニットで歌う曲のレコーディングについてはいかがですか? ヒゲドライバー 声優さんのスケジュールの関係もあるんですけど、歌っていただく順番が考えどころですね。最初に歌っていただく方は仮歌しかガイドがない状態なんですけど、2人目の方は最初の歌った方のボーカルを、3人目の方は前の2人のボーカルを聴きながら歌えるので、判断材料が増えていきます。ただ、後ろになればなるほど有利なのかというとそうでもなくて、歌のイメージが固まってくる分、自分はどう歌うかという自由度が少なくなるんです。
── 歌う順番によって、いろいろと状況が変わるわけですね。 ヒゲドライバー だから、ほかの人の歌声に引っ張られないように、あえて聴かせないでレコーディングするというディレクターさんもいますね。僕はほかの人の歌がある場合は、それを聴いて歌ってもらうようにしています。そのほうがやっぱり、歌う側の不安は少なくなると思うんです。