カップヌードルのプラモデルって、本当に組み立てて面白いの? BANDAI SPRITSさんに聞いてみた!【ホビー業界インサイド第62回】

2020年08月29日 11:300

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変化球に見えて、実は金型づくりの基本に立ち返った製品


── しかし、カップの赤いロゴは実物では印刷なわけですから、こんなに細かくパーツ分割で再現しなくてもシールでいいじゃないか、という考え方にはならないのでしょうか?

寺島 弊社には、1枚のランナーに4色のプラスチックを成形できる「イロプラ」技術があります。弊社ならではの持ち味を生かしつつ、組み立てるのが楽しいと感じてもらえる商品にしようと考えるなら、いちばん目立つ部分をシールですませてしまう選択肢は、企画当初からあり得ませんでした。可能なかぎり成形色で表現して、パーツ単位で色分けしています。ただ、パーツ強度や組み立てやすさを考慮して、一部にシールを貼る箇所もあります。

── それは、どういう部分でしょう?

寺島 カップ側面の注意表記や栄養成分表示などの細かな文字は、シールを貼る仕様です。とはいっても、実は細かな文字は彫刻でも再現してあって、よく見ると文字の形に凹んでいることがわかるはずです。ですから、シールを貼りたくない方はスミイレするだけで、栄養成分表示などの細かい文字を表現できます。ほかには、フタも大判のシールになっています。裏側はちゃんと銀色になっていて、貼ったり剥がしたり出来ます。ほかにシールを使った部分は、具のエビの色味表現などです。



── エビの表面の複雑な色味が、シールになっているんですね?

寺島 はい、エビはオレンジ色で成形してあるのですが、さらに質感を増すためにシールを使います。凹凸のある曲面に貼るので、伸縮性の強いカイナスシールを採用しました。


── すべて組み上げるのに、何分ぐらいかかるのでしょう?

寺島 取材があると必ず聞かれることなのですが、3分では組み上がりません(笑)。慣れている人なら、30分ぐらいで組み立てられると思います。パーツ自体が大きかったり、ロゴなどのパッと見て判別のつきやすいパーツが多いですから、プラモデルを作るのは初めてという方でも、パズル感覚でどなたでも組み立てられるかと思います。

── 以前、「Figure-rise LABOシリーズ」でホシノ・フミナが発売されたとき、成形と量産が大変だったという話を聞きました。BANDAI SPRITSさんが新機軸のプラモデルを開発するたび、「生産数は大丈夫なのかな?」と気になってしまうのですが……。

寺島 ホシノ・フミナでは、人間の肌の質感を成形のみで表現するという今までにない技術を使いました。その点、このカップヌードルは既存の技術を組み合わせて、あの手この手で形にしています。そういう意味では、基礎に忠実なプラモデルです。プラモデルは金型をつかった成形品ですから、今回のカップヌードルは、金型づくりの基本に立ち返った感じですね。

── 一般の人には、なかなか金型づくりの部分までは伝わらない気がします。

寺島 初めてプラモデルに触れる方には、もちろん伝わりづらいでしょう。ただ、ほかの分野でも金型づくりに精通した方なら、裏方の地味な努力をわかってくれると思います。また、最初に言った“モノづくりの楽しさ”を新しいお客様に伝えるためには、今回のカップヌードルのようなわかりやすい一般的な題材が、もっとも適していると思います。

── 最近のBANDAI SPRITSさんは、ENTRY GRADEなどの子ども向けプラモデルも出していますね。ほかに、一般向けのプラモデル展開はありますか?

寺島 「小学8年生」10・11月号の付録でティラノサウルス、「小学一年生」10月号にはトリケラトプスの、それぞれ全身骨格のプラモデルがつきます。「BEST HIT CHRONICLEシリーズ」は弊社だけつくれるものではなく、ゲーム機や食品など、他業種さんとコラボしなければ実現できないので、すぐ次の何かを発表できるわけではありません。ただ、対象年齢を問わず、まだ弊社のプラモデルに触れたことのない方たちに向けて、製品ごとに魅力的なキャッチポイントをもったモノづくりができれば……と、考えています。その方針は弊社の得意なキャラクター物でも、今回のようにキャラクターでない題材でも変わりません。



(取材・文/廣田恵介)
(C) NISSIN FOOD PRODUCTS CO., LTD.

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