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“猫背戦闘機”風のナヨッとしたシルエットのメカ、誕生!
ロボットのプラモデルは、手足の可動のため「胴体で前後から挟む」構造が多い。今でこそ手足は後からハメこむのが当たり前だが、80年代のロボットプラモデルはもっと土木作業。工事。もう、構造として強度を出す。手足の動きを獲得する。そのためのパーツ分割。このパンドラも例外ではない。まずは組み立て済みの腕を上下から胴体ではさむ! 構造で可動を獲得しろ! 工事開始!
▲胴体の上下パーツで、腕をはさんで接着。腕には左右の区別があり、ミサイルが並んだような例のパーツは後ろ側を向く。ということは、ミサイルではなくて噴射口なんだろうな
▲胴体を組んだ後、インテークのような円柱パーツを胴体前部に取りつける。この手の小さなパーツが左右に分かれていて、いちいち組むのも大変ではあるのだが、説明図には「向きに注意」と書かれている。取り付け部のピンが、やや上を向くのが正しいようだ
▲胴体後部には、四角いスラスターが付く。ワンパーツの内側にスリットが彫ってあり、胴体にピタリとはまる。こういうのは気持ちがいい
▲胴体の左右に、斜めに翼を取りつける。ただし、翼のパーツは「切りとったところをたいらにしてから接着します」の指示。注文が多いのだがまあ、バンダイさんの気持ちもわかる。接着個所が、ゲートに直結しているのだ。確かに、ここは気をつけて削らないと接着不可能だ
▲こうして、折り鶴のようなロボット?が誕生した。胴体の長さは6センチほど、手のひらサイズである。両肩が下がって頼りなくみえるが、金田伊功氏の案出した“猫背戦闘機”の流れをくむと、こういったシルエットになる
▲腕は、ここまで振り上げることができる。「どのようなポーズが正解のなのかわからない」という状態も、なかなかエキサイティングなものである
▲首も前後に可動するのだが、首が動かないのでお辞儀するような格好になってしまう。ちょっとだけ前傾させると、作画の雰囲気が出るようだ
▲問題は尻尾。前方向にしか動かないので、ベースの支柱にコツンと当たってしまう ……ということは、手で持って遊ぶのが正解か?
「機動戦士ガンダム」は、アニメーションを作る前に、富野由悠季監督が従来とは異なるロボットの概念図をスタッフに提示し、それを元にデザイン作業が行われた。いっぽう、「ゴッドマーズ」の場合は主役ロボットの玩具用デザインが先行し、敵側メカは完全に作画の現場にまかされていた。常に時間に追われる作画現場から逆算すると、簡単に引ける線のみで印象的なシルエットを追求することになり、このパンドラのように「細長い首」「下に垂れた両腕」「板のような胴体」「背中から突き出た翼」……と、放射状の描線で構成されることとなる。
それを1982年のバンダイ模型がプラモデル化すると、「ガンダム」よりは「ヤマト」のノウハウを駆使して、戦闘機のような、戦艦のような方法論でパーツ分割することになる。ガンプラのように、「もし本物が存在したらこうなるだろう」と概念から逆算した模型だけが、ロボットのプラモデルではないのだ。まだ答えの出ていない、あるいは誰も手をつけていない領域があるのではないだろうか。
(第3回へつづく)
(文/廣田恵介)