「伝説巨神イデオン」から40年、キャラクターデザイナーの湖川友謙氏が振り返る“あの時代”【アニメ業界ウォッチング第68回】

2020年07月29日 12:000
「伝説巨神イデオン」から40年、キャラクターデザイナーの湖川友謙氏が振り返る“あの時代”【アニメ業界ウォッチング第68回】

絵コンテなんて切ったことないけど、しかし……


── テレビの「伝説巨神イデオン」終了後、劇場版の公開前に「戦闘メカ ザブングル」(1982年)の放送が始まりますね。

湖川 そう、私は「イデオン」の劇場版にかかりっきりだったから、「ザブングル」は第1話の作監だけやって、しばらく抜けてしまったんです。ギャグをやると聞いていたのに、おトミさんが上げてきた第1話の絵コンテは普通のアニメでした。30話ぐらい進んでから、現場に戻ってきました(第27話の作画監督)。私が思ったとおりに好き放題やったら、ほかの人も好きに描きはじめてドタバタになってしまった。本当はドタバタではなくて、洒落た芝居とか洒落たセリフで、洒落た動きのギャグをやりたかったんです。

── 「ザブングル」では後半の主役メカ、ウォーカーギャリアもデザインしましたね。

湖川 ええ、ギャリアは大河原邦男さんが行き詰まってしまったようなので、私のところに依頼が来たんです。「俺がデザインするとまったく変わっちゃうけど、いいの?」と聞いたけど、まったく変えたかったらしいんですね。オープニングも途中から変わって、ザブングルの前にギャリアがドンと落ちてくる。あのカットをカッコよく描いて、ギャリアに惚れさせようと思いました。

── オープニングの絵コンテは富野監督ですよね。

湖川 そう。だけど、厳密にああいうコンテだったかどうかは覚えてません。付けPANはしていたと思うけど、私が勝手にギャリアをカッコよく描いてしまったので。

── そのように、作画の段階でアレンジすることはよくあるんですか?

湖川 私は若い頃から、タツノコプロの作品にたくさん参加していました。タツノコのアニメは、原作のないオリジナル作品ばかりです。ベースとなる物語を考える人、シナリオを書く人、絵コンテを切る人、さらには撮影の人にいたるまで、それぞれが面白いものをつくろうと工夫をこらしていたから、想像力が豊かでないと作画はできないんです。絵コンテの指示どおりではなく、「コンテよりもっとすごいものを描いてやろう!」という気概が、アニメーターには必要です。
出崎統さんのOVAに参加したとき、30~40カットほどレイアウトを描いて提出しました。すると、すべてリテイクでした。渡されたメモを読むと、「絵コンテのパースなどは気にしなくていいので、何よりもイメージを大事に描いてほしい」と書かれていました。

── 絵コンテそのままではダメ、ということですね。

湖川 つまり、出崎さんのコンテが持っているイメージやムードを主にして描いてほしい、ということなんです。初めてのことで、面白いと思いました。それで、自分の蓄積してきた技術を一度すべて忘れて、心機一転して取り組みました。

── 出崎さんの絵コンテは気迫に満ちていて、描きこみがすごいですからね。

湖川 そう、「伝わってくれ!」という熱い想いが詰まっている。あのコンテを超える作画をやろうとしたら、よほど感覚が強くないと無理ですよ。今は出崎さんのような監督がいなくて、寂しいです。今は「監督」というと、おトミさんのことが真っ先に思い浮かびます。おトミさんと出会えて、私は面白かったですよ。すごく、面白かった。「重戦機エルガイム」(1984年)のとき、オープニングとエンディングの絵コンテを切れと言われました。私はコンテなんて切ったことないから困ったんですけど、3日間ずっと曲を聴いて、30分ぐらいで絵コンテを切りました。すると今度は、本編の脚本を渡されました。「何ですか、これ?」「本編のコンテを切れ」。……ちょっと待ってよ、私は演出じゃないのに。

── つまり、富野監督はオープニングとエンディングの絵コンテを気に入ったわけですね。

湖川 だって、おトミさんの好きそうなコンテにしましたから。やっぱり、おトミさんの作品なので、彼のムードを残すべきでしょう。おトミさん自身は、「『イデオン』は俺の作品なのに、どうして湖川ばかり……」と思っているかもしれないけど、私は彼の作品で自分のムードを出そうなんて思っていません。「湖川、色彩監督をやれ」というのも、おトミさんから言い出したことです。「イデオン」から「エルガイム」まで、色だけは私がすべて決めています。ただ、私は絵描きだから、「これが面白いよな」という感覚が入ってくる。それは私の勝手な部分だから、いいことではないような気がするけど、ヒトマネだけはしない。それと、画に対する興味って、一生尽きないものですね。最近、よくわかるようになってきました。



(取材・文/廣田恵介)

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