ホビー

500円の“アートフィギュア”が、僕たちの価値意識を革新するかもしれない――株式会社SO-TAのカプセルトイ【ホビー業界インサイド第61回】

2020年07月18日 12:000

企画記事

ホビー業界インサイド

インタビュー

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

広告媒体として、世間でのカプセルトイの価値を問い直す

── 個人作家のアートフィギュア以外では、椅子や三味線のミニチュアがありますね。これは何なんでしょうか？

安藤　椅子（「柏木工1/12スケールチュアシリーズ」）は、柏木工株式会社さんとのコラボ商品です。柏木工さんは、飛騨高山に拠点をおく老舗の家具メーカーです。椅子のデータを柏木工さんからお借りして、実物どおりにミニチュア化してあります。「1/8津軽三味線」は、学生時代、実際に三味線を弾いていたスタッフの趣味なんです（笑）。すごく売れたわけではありませんが、エンドユーザーの評価が非常に高く、このような商品を出しつづけることがSO-TAの企業価値向上に繋がっています。

河上　ニッチな商品ではあるのですが、それなら三味線を弾いている人たちが見て完璧な構造にしようと話し合いました。普通なら、長いさおの部分は真ん中からパーツ分割すると思いますが、実際の三味線に合わせるため、3分割できるよう考えました。やりすぎるとエンドユーザーにとって組み立てが難しくなってしまうので、実物そっくりの再現度と組み立てやすさのせめぎ合いから生み出された商品です。三味線を組み立てる追体験をできることが、ひとつの課題でした。

安藤　企業コラボ商品では、金属バットもありました（「硬式野球用金属製バット ZETTパワー伝説」）。普通なら、同じバットの型をつくってタンポ印刷を変えるだけで終わらせたと思いますが、実物と同じように、微妙に形を変えてあります。同じ金色に見えても、よく見ると1本ずつ色が違います。監修してくださる方がいなければ、僕たちはそこまでこだわらなかったと思います。ですから、苦労することになっても、必ず専門家に監修をお願いするようにしています。

── しかし、時間と資金に余裕がなければ、そこまでこだわり抜くのは難しいように思いますが……？

安藤　確かにそうですが、作り手のモチベーションが高いほうができあがる商品のクオリティは必ずよくなります。三味線も、「どうしても三味線をカプセルトイにしたい」というスタッフの熱い思いがあったからこそ、ここまでの完成度になったんです。
それと、カプセルトイは一種の広告媒体のような役割を果たしていると思っています。企業コラボであれ作家コラボであれ、全国で一斉に同じ立体物が発信されるわけですから。椅子のミニチュアを手にしたら、実際の椅子や家具に興味を持ってもらいたい。三味線なら、実際の三味線に触れたいと思ってほしい。作家さんのカプセルトイは、商品化の都合でどうしても省略しなくてはならない箇所が出てきます。それでも、当社の商品をきっかけにエンドユーザーが作家さんに興味を持って、個展に足を運んでもらったり何十万もする作品を購入していただいたり……といった流れを、常に意識しています。

── とは言え、カプセルトイとして売る以上、当たり外れの要素がありますよね。

河上　エンドユーザーが当たり外れを極力感じないように、商品内でのラインナップを心がけています。ただ、中には、意図的にとがったモノを入れている場合があります。例えば、Frog Treeさんのアートフィギュア「麟核」は、全4色です。もともとはソフビ商品だったのですが、海外限定で手に入りづらいカラーがあるので、それをカプセルトイで再現して付加価値を持たせてあります。

安藤　今、樹脂成形モノというと、従来どおりの美少女フィギュアやプラモデルをイメージする人が多いと思います。今はまだ、アート系の作家さんもアートファンも、樹脂成形がここまでのクオリティを出せると認識していません。今後のアートフィギュアは、カプセルトイという形態から変化していくと思います。需要が高まれば、樹脂成形による量産が可能となり、例えば何十万円もする作家さんのアート作品を1万円ぐらいの価格で、気軽にインテリアとして家に飾れるようになるかも知れない。当社のカプセルトイが、そのとっかかりになってくれればうれしいです。

河上　SO-TAは作家さんに寄り添いながら、内製で商品開発できるところが強みです。

安藤　カプセルトイの造形のディテールだけはどこにも引けをとらないようしっかり作り込んでいます。それが当社ならではの企業価値だと思います。