宅録、配信、DTMと「withコロナ」の時代に大活躍! リモートワーク時代に注目を集める声優&マルチクリエイター・小岩井ことり ロングインタビュー

2020年06月28日 10:000

自分は“無料で使えるモデル”

──写真集「イヤホン・ヘッドフォンことり図鑑」についてうかがっていきたいと思います。まず、ヘッドホンやイヤホンの収集家として知られる小岩井さんですが、そういった機材の楽しさ、奥深さを教えてくれたアイテムは何ですか?

 

小岩井 写真集(「イヤホン・ヘッドフォンことり図鑑」)の表紙でつけている「K701」という白いヘッドホンがそれです。あれはかなり初期に、背伸びして買ったヘッドホンだったので、すごく思い入れがありますね。

 

──現在、イヤホン類は何個くらいお持ちですか?

 

小岩井 最近は数えてはいないのですが、80から100の間だと思います。さすがに全部を普段使いはできないので、きれいに飾っているものもあります。

 

──今回の写真集はそういった機材の活躍の場でもあったわけですね。

 

小岩井 まさに。みんなかわいいし、みんないい音なのでお見せしたいんです! 写真集という機会をいただけたので、うちのかわいいペットちゃんたちを紹介できて嬉しいです。

 

──そんな写真集について、改めてコンセプトを教えてください。

 

小岩井 カタログに写るヘッドホンやイヤホンってキリッとしてかっこよくて、人間で言えば宣材写真のようなものだと思うんです。私は写真集を見る時に、そういうちょっと硬い写真とは違う、自然な姿が見えるのがいいなと思っていたので、イヤホンやヘッドホンの日常の姿と、それを身に着ける私の日常の姿をお届けできたらいいなと思いました。

 

──どの写真からも小岩井さん自身の意図が見えるのがとても素敵だったと思います。写真集全体の印象として、これは普通掲載しないのではと感じる写真も結構あった気がします。

 

小岩井 私、すっぴんもそれはそれでいいじゃん、と思う人間なんですよ。すっぴんの写真で毛穴が見えるような写真は、普通光を当てたり加工したりすると思うんですけど、自分は逆にそういうのをなるべく残したいと思ってるんです。

 

──写真集に関しては、基本的に「ぜんぶ」小岩井さんがやられてるんですよね。

 

小岩井 デザインとか、写真を納品したあとの作業は出版社さんにお任せしましたが、そこまでの作業は全部自分でやっています。

 

──そもそも写真集の話は、どういう流れで出てきたのでしょうか。

 

小岩井 写真集はずっと出したいなと思っていて、いろんなところで話してはいたんです。それを知った一迅社さんからお話をいただいた感じですね。最初、イヤホンとヘッドホンの写真集が出したかったんですよ。でもせっかくだから私も写ってみようかなとなった感じです。

 

──当初からメインは機材の側だったんですね! 撮影はどんなチームで動いたのでしょうか?

 

小岩井 基本的には私が全てのプランを立てています。どんな場所でどんなヘッドホンやイヤホンを使うかを自分で決めて、事務所にスケジュールを確認してスタジオを押さえたりしました。撮影の時はメイクさんとマネージャーさんと一緒に動くのが基本でした。

 

──実際の撮影は、どのように行なうのでしょうか。

 

小岩井 まず私が撮影する場所と画角を決めて、私が移動して、そのままマネージャーさんかメイクさんにシャッターを押してもらって撮影する感じです。とにかくたくさん撮影して、その中からいいものを選ぶ戦法です。

 

──飛行機の中で、アンダー目の光で、寄りで撮影した写真は次ページとのつながりも含めてインパクトがありました。

 

小岩井 あれは韓国のイベントの帰りに撮影した写真だったかな~。

 

──全国津々浦々、春夏秋冬撮影しましたね。

 

小岩井 そうですね、私的に2019年は全国でイベントをやってみようという年だったので、イベントで北海道に行ったらそのついでに撮影も、という感じでいろいろな場所で撮りました。ありがたい経験でした。

 

──印象に残った撮影ポイントはありますか?

 

小岩井 水中撮影があるんですが、あれ、2月なんですよ。すごく寒くって! かなりがんばって撮りましたし、マネージャーさんたちもがんばって撮影してくれたので、部活のような雰囲気でした。

 

小岩井ことり1st写真集 「イヤホン・ヘッドフォンことり図鑑」 より

 

──カメラの防水ケースと防水イヤホンも用意して。

 

小岩井 そうですね。水中で撮るから用意したというよりも、防水イヤホンを活用している様子を見せたいから水中撮影をしたんです(笑)。

 

──イヤホンの「Push Truly Wireless Earbuds」と和服の色合いを合わせた写真がとても印象的でした。ファッションの一部としてのイヤホン、ヘッドホンというのも意識している感じでしょうか。

 

小岩井 そうですね。以前電車に乗った際に着物で完全ワイヤレスイヤホンを使っていらっしゃる方を見かけて、とてもいいなと思って、いつかやりたいなと思っていたことが今回できました。そのイヤホンが若竹色だったので、竹のあるところで撮影しました。

 

──色という意味では、その次のページにある、モノクロにヘッドホンの赤だけが浮かぶ写真もすごく鮮烈でかっこいいです。

 

小岩井 あの写真は印象的と言ってくださる方が多くて、1MOREさんのヘッドホン(MK801-RD)が謎の売れ方をしたりしているみたいです。動きのある写真は髪の毛をメイクさんにぴょんと動かしてもらったところをとにかく連写で撮影しました。

  

──撮影の使用機材はどんな感じですか?

 

小岩井 カメラはソニーの「α6500」で、これは前から使っている私物です。レンズはソニーの「SEL35F14Z」、「SELP1650」、Carl Zeissの「Batis 2/25」ですね。

 

──α6500を選んだ決め手は5軸ボディ内手ブレ補正でしょうか。

 

小岩井 やはりプロの方はキヤノンのフルサイズカメラを使っている人が多いので、それにしようかなとも悩んだんです。それでもソニーのα6500を選んだのは、4K動画が撮れて、手ブレ補正が効くのが大きかったです。

 

──レンズもSEL35F14Zといえば、Distagonを冠したツァイスの単焦点レンズですし、とてもこだわりを感じます。

 

小岩井 最初は35mmのレンズ(フルサイズ換算だと50mmの標準レンズに近い焦点距離)を使っていたんですが、それだとどうしても画角がキツい撮影場所があったので、必要にかられてBatis 2/25を買った感じです。

 

──ではメインはSEL35F14Zを使う感じですか。

 

小岩井 そうですね、やっぱりボケ感が一番きれいに出るレンズなので。

 

──発売後の配信番組などを見ていると、小岩井さんがすっぴんの女の子が好きだということをはじめ、趣味や好みがかなり入っている写真集なんだなと感じました。そういう第三者的な視点での好みとかフェティッシュさを、自分を被写体に表現するのってちょっと面白い感覚だと思いました。

 

小岩井 私はずっとそういう感覚で生きてきて、どうやらそれはちょっと変わっているらしいということを最近自覚しはじめました。「小岩井ことりさん」というボディと声を持った存在を、私がロボットに乗るみたいに操縦しているような感覚なんですね。私にとって自分は無料で使えるモデルでしかないんです。外側と内側の自分は別物って考えながら生きてるんだと思います。ちなみに、このボディは気に入っています(笑)。

 

──これは写真集にしても、イヤホン「KPro01」にしてもそうですが、小岩井さんは商売っ気が薄いというか、本当に自分がほしいもの、作りたいものを作っているのかなと感じます。

 

小岩井 写真集も、この内容をプロのカメラマンさんとかに撮ってもらうと、大変なお金がかかってしまうと思います。だからできることは全部自分でやって、なるべくクオリティの高いものを、なるべく安くお届けしたいなとどの活動でも思っています。

小岩井ことり1st写真集 「イヤホン・ヘッドフォンことり図鑑」 より

 

YouTubeでの活動も自分の「好き」の表現

──最近、小岩井さんはYouTubeでも活躍されています。動画の撮影編集もご自分でやられているそうですね。

 

小岩井 はい、ちょうど1年ぐらい前にマイスタジオを作ったのでそこで収録して、自分で編集してアップしています。

 

──変な質問ですが、なぜ声優さんはみんなASMR動画(Autonomous Sensory Meridian Response。身体がゾクゾクッとするような音の入った動画)をやるんでしょうか。

 

小岩井 なんででしょうね……。私自身は、もともとASMR動画が好きだったんです。結構フェチズム的なものが好きなんですね。ちょっとドキッとするようなものが好きなので、それにASMRが合っていたのかなという感じです。

 

──ASMR動画で使っているノイマンのダミーヘッドマイク「KU100」はお値段的にも、あまり個人で使うものではないですよね。

 

小岩井 あれはFitEarの社長さんから、ご厚意でお借りしてるものでなんです。FitEarさんはライブで使うイヤーモニター(密閉度の高い、カスタムメイドのプロ用イヤホン)で大きなシェアがある会社さんです。以前FitEarさんのイベントで、私がダミーヘッドマイクにささやいて、お客さんはイヤホンでそれを聴くという面白いイベントがあったんです。それで私が「ダミーヘッドマイク、いいなー」と話していたら、FitEarの社長さんが「僕が持っていても宝の持ち腐れだから」と貸してくださったんです。

 

──FitEarさんとの最初の縁は、「アイドルマスターミリオンライブ!」などのライブでしょうか?

 

小岩井 FitEarさんとは全然別のご縁がきっかけで、その後ライブでもFitEarさんのイヤモニを使うようになったりしたので、実は順番が逆なんです(笑)。

 

──ダミーヘッドマイクを活用してのASMR動画を実際にやってみてどうですか?

 

小岩井 私は元々、はさみの音とか、耳かきの音とかを聴くことが多かったんですけど、やっぱり私の動画を見てくださる方は声が入っているものを求めてくださる方が多いですね。だから最近は一時間ささやき生放送をやってみたりして、ご好評をいただいています。

 

──試してみたのですが、お話が面白くて最後まで聴いてしまいました。

 

小岩井 それもありがたくて(笑)、見てくださる方も寝る派の人と最後まで見る派に分かれますね。YouTubeをきっかけに私を知ってくださった方もいて、音質がいいと言っていただけるのはすごく嬉しいです。

 

──やっぱり「KU100」は音質も違いますか。

 

小岩井 マイクももちろんですし、防音室があるのが大きいんだと思います。環境音が入らないので、音を思いきって持ち上げてもノイズが乗りにくいんです。ただ、まだ私のASMR技術がともなってないので、耳かきの力が強すぎるという声はいただきます(笑)。どちらかというと不器用なもので、練習したいと思います。

 

──ご自身の動画だけでなく、朗読企画などにBGMを提供したりしているのも小岩井さんならではの活動だと思います。

 

小岩井 みんな朗読とか素敵な試みをしているので、自分にもできる範囲でやれることはないかなと思って、作らせていただいたりしています。

 

──ありがとうございました。いろいろなお話から、小岩井さんの魅力の一端を知ることができたように思います。最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 

小岩井 自分の「好き」を追求した活動をしています。それを一緒に楽しんでもらえたら嬉しいなと思っているので、YouTubeのASMR動画や写真集なども楽しんでもらえたらと思います。これからオーディオとかのおすすめもお伝えしていきたいと思うので、よろしくお願いします!

 

(取材・文/中里キリ)

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