日本文化と共存する“和”の模型メーカー、童友社の「かんたんプラモデル」に大阪城がラインアップされた理由とは?【ホビー業界インサイド第60回】

2020年06月27日 12:000

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東京スカイツリーに始まる“タワー系プラモデル”の流れ


── 「かんたんプラモデル」シリーズの第1弾は、東京スカイツリーですよね。その前に、普通のプラモデルとしても発売されていましたが?

内田 まず、東京スカイツリーという名前に決まる前、弊社に「台東区か墨田区に、新東京タワーが建つんだけど、プラモデルを出したら売れるかも知れないよ」という話が来ました。それ以降、私の前の社長(内田守会長)が、スカイツリー建設の会合があるたびに呼ばれるようになったんです。それぐらい早い時期から話を聞かせてもらっていたので、他社さんよりも早くプラモデルを開発することができたという、それだけの話なんです。

── 童友社さんは荒川区にありますが、場所が近いことが有利だったんですね?

内田 それもありますし、弊社はお城のプラモデルをずっと販売してきましたから、「売れるかどうかわからないけどスカイツリーを出してみれば?」という程度の軽い話から始まりました。最初は無塗装の普通のプラモデルで発売して、一般の方向けに塗装して電飾もされているスナップフィットの「粋風」「雅風」の2種類を2,800円で出しました。その後、タワーブームになったので、東京タワーと通天閣も2,800円で発売しました。ただ、タワーが売れるのはお土産屋さんなので、安いほうが観光客に手にとってもらいやすいのです。それで周囲の建物などを減らして、1,000円まで価格を落としました。その後、「かんたんプラモデル」として金型を転用して、塗装済みで接着剤不要の統一シリーズ「かんたんプラモデル」としてスカイツリー、東京タワーを改めて発売しなおしました。それらタワー系の流れと、お城プラモデル系の流れが合わさって、今回の「かんたんプラモデル 大阪城」へ繋がります。

── この大阪城は、細かく塗装もされていますが、それなりに組み立てやすさも考えないといけませんよね。

内田 簡単でありながら、ちょっとした満足感を得られることが大事です。白い本体の部分が一体成形されていて、技術的にもっとも難しいそうです。ワンパーツでありながら、すべての面に彫刻が入っていますから。当初は、食玩ブームのときにコンビニなどで販売していた完成品のお城シリーズを転用できないか考えていました。当時、380円で塗装までされていたシリーズです。なぜその食玩をつくれたかというと、お城のプラモデルをたくさん発売していたので、その図面を縮小できたからです。そこが、他社さんにはない弊社ならではの強みですね。


── ところで、なぜ大人気の姫路城ではなく大阪城を選んだのですか?

内田 知名度と、組み立てやすさを考えた結果です。姫路城をこの大きさで出すと、かなりパーツが細かくなって、一般の方には組み立てが難しくなってしまうんです。それと、大阪という場所は海外からの観光客が多いので、大阪のお土産物屋さんに並べば、海外の方たちが買ってくれます。

── そういえば、童友社さんのお城シリーズはスケールが統一されていませんよね。「かんたんプラモデル」シリーズとして見ても、1/3000とか1/900とかバラバラですが?

内田 たとえば自動車のプラモデルなら、大型トラックなどは別として、乗用車はほとんど同じ大きさですよね。1/24スケールに統一すれば、箱の大きさは変わらないわけです。しかし、お城というのは大きさがバラバラで統一できないんです。もしスケールを1/700などと統一してしまったら、松山城が500円なのに大阪城が3,000円といった価格設定になってしまい、お客さんには買いづらい。それと、箱の高さや大きさがまちまちだと、お店に並べてもらえません。それで、パッケージの大きさを統一することにして、縮尺には目をつむっています。「かんたんプラモデル」も同じで、もしスケールを統一したらスカイツリーだけ大きくて、大阪城は豆粒のように小さくなってしまいます。模型マニアの方からすれば「ふざけるな」と怒られるかもしれませんが、一般消費者を相手にしていますから、買いやすさをもっとも重視しています。

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