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気持ち悪くない主人公が求められた結果、女性主人公の人気が上昇?
近年の中国におけるアニメ作品の評価については、視聴者の感情移入の対象となり話題の中心にもなる主人公の影響がとても大きいとされています。
これはプラスの方向にもマイナスの方向にも働くもので、よい主人公、たとえばカッコいい主人公や頭のいい主人公、気分よく見ていられる主人公が出てくる作品はおおかた高評価となり、悪い意味で頭の悪い主人公や見ていて不快に感じてしまう主人公というのは作品そのものを否定する原因になるのだとか。
またこういった主人公の評価は、新作アニメとして話数を重ねている時期だけでなく、作品の配信が終了した後の再生数の継続的な伸び方にも影響があるとも。
そんなわけで、現在の中国のアニメ視聴者の間では
「気持ち悪いと感じない、不快ではない主人公」
の出てくる作品が評価基準としていよいよ重視されるようになり、面白い作品を探すような話題のときにも、主人公のよさがオススメの理由としてあがる頻度が高くなっているようです。
そして、そんな空気の中で男性のオタクからも注目を集めるようになってきているのが
「女性の主人公」
だそうです。
以前、中国のオタクな方たちから教えていただいた話によると、中国ではこれまで女性主人公の作品に関して男性のオタクの間ではコアなファンによる強烈なコミュニティが形成されることはあっても、広い範囲で大きな話題になる作品はなかなか出てこないとされてきたそうです。
実際、新作アニメに関しては、女性主人公作品が再生数も含めて大きな伸びを見せる作品はごく一部を除くとなかなか出てこなかったようです。
しかし最近では、「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」、「私、能力は平均値でって言ったよね!」といった作品が人気になっていますし、4月の新作でも「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」が好調です。
これらの作品に関しては作品のクオリティに加えて、主人公に対して不快感を覚えることが少ない、引っかかりがない……といった部分も人気の理由になっているという話が聞こえてきます。
もちろん中国のほうでも、たとえば「ガールズ&パンツァー」や「ラブライブ!」、さらに前ならば「魔法少女まどか☆マギカ」のように、女性キャラばかりの作品が人気になったこともあります。
ですが近頃は一般層に対して強いとされるいわゆる「俺TUEEEEE」な作品、中国では「龍傲天」というスラングで呼ばれるような、主に男性主人公が中心で展開されていたような作品に関しても、女性主人公が許容され人気になってきているという、これまでなかった傾向が出てきているそうです。
ちなみに「女性主人公で俺TUEEEEE」をする作品に関して、中国では「龍」ではなく「凰傲天」(あるいは「鳳傲天」)というスラングで呼ばれることも出てきているとか。
こういった変化に関して中国のオタクな方々から聞こえてくる話としては、まず近頃蓄積している男性主人公に関する不満があるらしく、
「俺TUEEEEEな作品に限らずアニメによくあるヒロイン関係の対応、ハーレム要素の対処に関して不快感を覚える主人公が多い」
「俺TUEEEEE展開をしても相手の頭がさらに悪くなっているだけで、主人公自身も頭が悪いと感じてしまう」
といったような諸々の不快感や、俺TUEEEEE作品の主人公に食傷気味なことなどから、主人公が批判されることが多くなっているとのことです。
そして最近の中国で人気になっている女性主人公の作品については
「なぜか男性主人公に比べて不快感が少ない」
「感情移入は少々難しいかもしれないが、ネタとして話題にする分には楽」
という評価も出ているそうですし、私も以前
「最近は女性主人公のアニメも普通にチェックするようになりましたね。恋愛要素があまり表に出ないなら男の自分でも問題なく楽しめます」
「ギャグ路線なら楽しめる人、作品の話題で盛り上がれる人は増えましたね」
という話を聞いたことがあります。
もっとも単純に女性主人公であればプラスになるというわけではなく、コメディからシリアスになったり女性的な視点や感覚、恋愛要素が前面に出てきたりすると厳しいと感じる人や、自分の好みに合わなくなってくるという人も少なくないそうです。
4月の新作アニメの「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」に関しても、原作を把握している層の中には、原作の恋愛要素の描写が厳しくて脱落したという人や、いわゆる「メアリー・スー」的に思えて無理だったという人もいるそうです。
しかし「原作はダメだったがアニメは楽しめている」という人もいるとのことなので、このあたりに関してはアニメの演出や構成、そしてクオリティ次第で変わる部分でもあるのかもしれません。
この女性主人公の件に限らず、現在の中国におけるアニメ作品、特に新作アニメの人気の動向に影響する要素については、イロイロなところで変化が起こっているのが感じられますね。
(文/百元籠羊)