【インタビュー】アトランジャー復活! 青島文化教材社、創業96周年にスタートする「新・合体シリーズ」の気になるアレコレを聞いてみた!

2020年06月03日 13:370

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差し替え合体、カラフルな成型色を生かしたいろプラ、接着剤を使わないスナップフィットなど、今では当たり前の仕様をいち早く取り入れ、1970年代から1980年代半ばにかけて大ヒットを記録した、青島文化教材社のプラモデル「合体シリーズ」。

アニメ・特撮に登場するキャラクターやロボットを商品化するのが当たり前だった1970年代において、いち早くキット発のオリジナルロボット「アトランジャー」を発明し、日本全国のキッズを魅了した「合体シリーズ」が、2020年「新・合体シリーズ」として復活する。

青島文化教材社の創業96周年というメモリアルイヤーに復活する「新・合体シリーズ」は、はたしてどんな商品となるのか? そして、どんな人たちが手がけているのか……。気になるあれやこれを、青島文化教材社の久保田真浩さん、企画・設計を手がけるホビーメーカー・ランペイジの清水圭さん、柳生圭太さんに聞いてみた。

 

――今回、「新・合体シリーズ」がスタートすることになった経緯を教えてください。

 

清水 自分はもともとマックスファクトリーで「ダグラム」などのプラモデルを担当していたのですが、退社する際にアオシマ(青島文化教材社)の久保田さんから「もし辞められたら、一緒にロボットものをやりませんか?」とお声がけいただきまして。久保田さんとしては、「ダグラム」みたいな「サンライズさんの80年代ロボットをやっていきませんか?」という意図があったと思ったのですが、アオシマさんはアトランジャーといういいロボットを持っているということで、「せっかくなのでアトランジャーをやれませんか?」と言ったのが発端です。版権ものは版権ものでいいのですが、せっかく自社IPを持っているのなら、まずは自社IPを生かせないか、というところですね。

 

柳生 そこからランペイジで「合体シリーズ」の新しい企画書を書かせていただきまして、最初は純粋にアトランジャーをよみがえらせようという内容で始まったのですが、やはりアオシマさんならではの「なにか」が欲しいと思ったんです。

昔の「合体シリーズ」は、当時の流行りもの──スーパーカーだの零戦だの「ヤマト」だのを取り入れてシリーズ化していった経緯がありました。そこで、今一番ホットなアイテムである女の子のプラモデルとアトランジャーを組み合わせたらどうだろうと考えて、現在の形になりました。

それに今、ゼロからランペイジとアオシマさんでオリジナルIPを立ち上げるよりは、高い認知度のアトランジャーをもう一度使ったほうがビジネス的にもいいだろうと思いました。

 

これが元祖! 合体ロボット・アトランジャー


――ランペイジのお二方は、アトランジャーなど「合体シリーズ」のプラモデルを遊んで育った世代ですか?

 

清水 世代としては若干ズレているんですよね。自分はガンプラの亜流プラモが全盛だった頃にプラモデルに触れ始めたので、僕自身にとってアトランジャーは、ちょっと前に流行ったもの、という印象でした。アトランジャーが一時代を築いていたということは、大人になってから知りました。(※編注:アトランジャーが登場したのは1975年)

 

柳生 自分は清水より2歳年下なので、同じくブームより少し後に入った世代です。アトランジャー世代ではないので、実はプラモとしては1回買ったかどうかくらいでした。ただ、いろプラで、はめこみで合体できて、破天荒なプラモデルという記憶はありましたね。

今は差し替えや組み換え、合体というギミックが一般的になっているのですが、「もともとはアオシマさんが40年も前に切り開いた道だぞ」という思いがあり、そういう意味でも改めてアトランジャーをやりたかったんです。

 

――今回の企画があがってきた頃、アトランジャーはアオシマにとってどんな立ち位置だったのでしょうか?

 

久保田 アトランジャー自体は、アオシマの中でも特別なIPですし、社の歴史においても重要な位置づけのキャラクターであり商品です。僕は今回の企画メンバーの中では一番年下で、アオシマに入る前はアトランジャーについてあまり知識がなかったのですが、社内の人間なら老若男女問わず全員知っている、特別なキャラクターでした。また社内には、当時アトランジャーを開発していたメンバーが残っているので、そういう方に話を聞いたりもしていました。

ユーザーさんからも「新しいアトランジャーの商品を作れませんか?」などリクエストを多くいだたいたり、他社さんやワンフェスのディーラーさんからも問い合わせがきたり……。アオシマはIPをそんなに持っている会社ではないのですが、その中でも唯一コンスタントにお話をいただけるのがアトランジャーで、ゲーム化やアニメ化に関する問い合わせも何年かに一度あったりします。

ただ、そんな付き合いの長い重要キャラクターなのでダメなところもよく知っていて、「今それをやって、はたしてユーザーは喜んでくれるの?」という意見も社内からよく出ていました。アオシマにとって、よい面も悪い面も、いい思い出も悪い思い出もあるのがアトランジャーなのです。

先ほど、ランペイジの清水さんもおっしゃっていましたが、「アトランジャーをやりませんか?」とご提案をいただいた時も、社内からは「え、アトランジャー? 版権ものをやったほうがいいんじゃない?」という話は出ました(笑)。

 

柳生 僕らがアオシマさんからお話を受けた時、自分の中では「ロボットものをやるならアトランジャーでしょう!」というテンションだったので、大きな温度差があったのを覚えています。先ほども言いましたけど、世代の違う僕がこれだけ知っているということは、どの世代にも存在だけは知られているだろうと思っています。ならば流行りのアニメのロボットをやるよりは、基本に戻ってアオシマさんのアトランジャーをもう一度立ち上げましょう、という方向に向かいました。

 

――今回の発表に対する反響は、ランペイジさんやアオシマさんにも届いていますか?

 

清水 3月に開催された原画展は当時を知る世代の方だけが反応するかなと思っていたのですが、ふたを開けてみれば幅広い世代に反響があったので、モデラ―という人種の記憶には潜在的に植えつけられているというか、知識として広く知られているんだな、と思いました。

アトランジャー、シャイアード、レッドホークヤマト──ロマンあふれる合体ロボット&マシンの原画が大集合! 「アオシマ 合体ロボット&マシン ボックスアート展」レポート!
 

――SNSなどでは、今も「昔のおもしろプラモ」的に紹介される機会も少なくないので、そこから知る人も多いのかもしれませんね。

 

清水 ですから新しいデザインのシルエットを公開する時、「怖いな」という意識はありました。昔の「おもしろプラモ」だったり、1970年代のスーパーロボット的なイメージがみんなにはあって、新しいものに対してアレルギーがあるんじゃないかと危惧していたんですが、SNSでの反応ではいい感じに受け入れていただいたようで安心しました。美少女が出てくる点についても、むしろいろいろ楽しんで想像してもらえたみたいですね。

 

柳生 アトランジャーと美少女との組み合わせの驚きは、当時の合体シリーズに零戦やカウンタックが出てきたのと同じようなインパクトだと思います。アオシマさんらしいと言えばらしい、という受け取られ方をしていると思います。スーパーカーや零戦など、その時の流行りのものとアオシマさんのIPを組み合わせることで「合体シリーズ」の今までの流れができているので。

 

合体レッドホークヤマト

 

清水 もともとアオシマさんがやっていた「合体シリーズ」がそういうものでしたので、むしろ「美少女プラモとロボットがどう合体するの?」という反響が多かったのが面白かったです。

 

久保田 美少女案を最初にいただいた時、社内的には「これしかないよね」という反応でした。先ほども言いましたが、アオシマはアトランジャーに自信がない会社でして、どうにも懐疑的なんです。お話を聞いてると、アトランジャーに勇気を持てないのはアオシマ社員だけなんじゃないかと思うのですが(笑)。

そういうこともあり、美少女をアトランジャーと組み合わせるという案を出していただいた際は「これならやりたい」と思ったし、アトランジャーというIPを今の若者に知っていただくいい機会になると思いました。ここを起点に、「合体シリーズ」のバックボーンや、今の主流となるアトランジャーの提案もできるので夢やパイが広がるし、さらに合体シリーズ全体も表現しやすいんじゃないかと私も興奮しましたし、ほかの社員も満場一致で推していけそうだな、と抵抗感はありませんでした。

 

――今後はどのような展開を考えられているのでしょうか。

 

柳生 「合体シリーズ」なので、アトランジャー単体だと遊び方が少ないですよね。ですので、これから何体か出ますよ、とは言えます。

 

清水 反響次第ですが、昔アオシマさんがやっていたような展開はあると思います。

 

──これは聞いておかないといけないところだと思うのですが、伝統の「首だけ」「腕だけ」マシンは踏襲されますか?

 

清水 基本として典型的な分割パターンをやりつつ、組み方はどうとでもできる遊び方ができるように設計しています。

 

柳生 本来は静岡ホビーショーで実物とパネルを出して、今後の展開をお伝えする計画だったのですが、中止になってしまいましたので概要を発表する場所がなくなってしまったんです。

 

――それは残念です……。ちなみにアオシマには「アオシマコミック」という伝統がありますが、コミック展開もあったり?

 

久保田 こちらから企画を提案させていただく場合は、プラモデル以外の場も何かしら作っていきたいと考えております。それがコミックかもしれませんし、別のメディアかもしれません。ただアトランジャーと女の子が合体するだけだと、ユーザーさんも「以前のままでいいんじゃない?」「女の子は女の子だけでいいんじゃない?」と思われてしまうかもしれないし、それだとつまらないですよね。

合体する意味をこちらから提案して、ユーザーさんからのご意見もフィードバックしたいという思いがあるので、「どうしてこういう風になるの?」という疑問に対して「新合体シリーズのチーム的にはこう考えているよ」と提案する場を作っていこうと思っています。それが何になるのかは、乞うご期待ということで。

 

柳生 そうですね。ただプラモデルを出すだけの企画ではないので。その辺はご期待いただければ。

 

――アオシマさんは、近年ACKSというブランドで、ロボットものキットも美少女ものキットも展開しており、そこで蓄積したノウハウが、今回の新合体シリーズで発揮されるのではないか、という期待もあります。

 

久保田 アオシマはなんでもやっていい、という社風があり、ユーザーからもそう見ていただいているのかな、と思うのですが、そこにようやく技術的なところが追い付いてきたのかなと思っております。V.F.G.シリーズでやってきた女の子×ロボットという方向性だったり、ロボットもののプラモデルにおいても、ずっとやってきたことで他社さんと戦える力を徐々につけつつあるのかなと。そういった流れを作れたのは、よかったと思います。

ACKSシリーズ第5弾 1/1000 ガンバスター

 

静岡は辺境の地なので、東京のメーカーさんとコミュニケーションを取ることもそこまで多くなかったのですが、いろいろなタイトルとからみ、さまざまな商品を出していく中で多くの方と交流させていただく機会も増えてきていました。その過程でランペイジさんともお知り合いになれましたし、いろいろなお話をさせていただき僕らもパワーをいただけたので、このタイミングで新しいアトランジャーを発表できたのは、とてもよかったと思います。

 

――今後の意気込み、展望を教えてください。

 

久保田 企画をいただいてから僕らも楽しんでやってますし、ユーザーさんにも楽しんでいただけるものが提案できると思います。また、今回新たなアトランジャーを発表させていただいて、過去の商品に対する反響もたくさんいただいているので、アトランジャーを含めて「アオシマは恵まれているな」と感じています。

そういった期待を裏切れないと思いますし、気を引き締めていきたいと思っています。ランペイジさんからも遊び心あふれる提案をたくさんいただいているので、そういったものを1日も早くユーザーの方々にお伝えして、それこそコロナウイルスで気が滅入っている世の中の明るい話題のひとつになれば幸いです。

アトランジャーだけのシリーズではなく、「新・合体シリーズ」としてやっていくと思いますので、長い目で応援してください。

 

柳生 設計サイドとしては、ファンの期待が高いアトランジャーを現代の技術でリメイクするということで、かなり設計にも凝っているので、ご期待いただければと思います。今後の情報ですが、合体シリーズ専用のホームページを立ち上げましたので、そちらをご覧ください。

 

清水 今回のデザインを担当してくださった貞松龍壱さんがイラストを描き起こしてくださった時、「アトランジャーってかっこいい」というのが伝わってきて「いけるな」と思いました。貞松さんは今も精力的に「使えるもの」から「使えないもの」まで(笑)、たくさん描いてくださっているので、そういったものも今後どんどん出していきたいと考えております。

もともと「合体シリーズ」は懐の広い商品なので、設計段階で「こんなこともできる、あんなこともできる」と、どんどん遊びが広がっている感じがあるので、お楽しみに!

 

――最後に、今もなおアトランジャーが幅広い世代に受け入れられている魅力は何だと思われますか?

 

柳生 よくも悪くも自由なんですよね。当時のアオシマコミックを見ても「なんだこりゃ?」というのがありますし(笑)、その辺はアオシマさんの社風というか。アオシマさんだからこそこれだけ愛されているな、というのは感じますね。

 

久保田 柳生さんは「アオシマは決まりもレギュレーションもないし、何やってもいいし、ハチャメチャでOK」と思われているかもしれません(笑)。

実際に社内やっている商品も統一性がなく、戦艦や車、雑貨、毛布、タオルを作ってみたり、一貫性がないものを組み合わせて新たな商品を作るという傾向が昔からあります。逆に言うと極端な話、ユーザーが楽しんでくれるならば、売れるのならば何でもいいという面が昔からあるのですが、だからこそアトランジャーが生まれてきたのかな、と思います。

そして、そんなアトランジャーが起点にあるからこそ、今のアオシマの自由さがあるんじゃないかとも思います。V.F.G.シリーズ関しても、メカが変形してそこに女の子が乗るというギミックは「合体じゃないか?」と社内で言われてます。それだけ社員の頭の中には「合体」というのがあるんです。

 

――「合体」がDNAまで刻まれている感じですね。

 

久保田 本当にそういうレベルだと思います。逆にそういうアオシマのDNAを築き上げてきて人たちからの教えをもとに、ロボットプラモデルなんかを考えていますので、我々もそのDNAを一応受け継ぐことができているのかな、と思います。

ひとつの商品をただロボットにするのではなくて、遊び心を入れたくなってしまうという悪い癖がありますが(笑)、そういったところもユーザーさんと共有できているのが嬉しいですね。

 

清水 アオシマさんの昔の合体マシンはフレキシブルで、好き勝手やっているように見えるのですが、実はコミックスの企画書や社内報を見たりすると、きちんと裏付けを取ったりしてて、すごくまじめに考えているんです。そこは自分も見習いたいところです。

(c) アオシマ
(c)BANDAIVISUAL・FlyingDog・GAINAX

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