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今だけでなく、“これから先”も長く愛される作品を
── 新キャラクターとして、アクビの弟プゥータが加わりました。最初は着ぐるみYouTuberとして登場して、アニメに出るのは今作が初めてなんですね。 モギ 2018年、着ぐるみYouTuberとして「ハクション大魔王」を使わせてほしいというオファーをいただきました。そのタイミングで、偶然、プゥータ(ぷぅーた)が作品50周年に向けたアイデアのひとつとして、社内でデザインされました。先行してYouTuber企画が動きだしたので、アニメに登場するのは今回が初めてです。
── 着ぐるみYouTuberでは、大魔王やアクビが派手に大暴れするので驚いたのですが……。 モギ はい、もともとアクションが得意な方たちが、「子どもたちにわかりやすいキャラクター」ということで、大魔王とアクビを使ってくださっているんです。動画としての面白さを追求するためにキャラクターの認知度を見込んでくださったわけですから、ありがたいことです。
濁川 私が今作に参加することが決まった時点で、プゥータの登場は決まっていました。くしゃみ、あくびに続いておならで登場するキャラクターは、ドタバタギャグの世界観になじむだろうと思いました。実際、プゥータが出てくると、作品が面白くなるんです。見た目はかわいいんだけど、心の中で考えていることは腹黒くて、そのギャップが面白い。声の山下大輝さんが、心の中の声も赤ちゃんの声も、とても器用に演じ分けてくれています。
── 大魔王が山寺宏一さん、アクビが諸星すみれさん、キャストが豪華ですよね。 濁川 おじいちゃんのカンちゃんを古川登志夫さん、旧作でおなじみの進行役“ソレカラおじさん”をチョーさんに演じていただいています。
モギ 「ハクション大魔王」という看板タイトルのせいか、著名な方から新人の方まで、ビックリするぐらい大勢の方がオーディションにいらっしゃいました。
濁川 もう、すべてのテープを聞くだけで大変でしたね。通常の3~4倍の応募数だと聞いています。
モギ アフレコ現場は、とても楽しいです。アドリブも声優さんたちに自由にやっていただいて、面白いテイクを採用しています。ベテランが若手をフォローしてくれて、本当にいい雰囲気なので、現場の楽しさをお茶の間に届けるのが僕らの仕事だと思っています。
── 子ども向け、家族向けのアニメは20~30年ほど定番化していて、新規参入が難しいと聞きますが、いかがでしょう? 濁川 知名度という意味では、ほかのアニメにひけをとらないはずです。それと、「ハクション大魔王2020」は思い切ってドタバタコメディに振っていますので、既存の他作品の隙間に入り込む余地が十分にあるんじゃないでしょうか。
モギ タツノコ作品の場合、前作とのスパンが長く開きすぎてしまうんです。何しろ50年ぶりの新作ですから……(笑)。「ハクション大魔王2020」に前作との大きな違いがあるとしたら、各キャラクターの“人間ドラマ”を入れたこと。色々な世代が見てグッとくる、共感できる部分を盛り込みました。目標は、いつ見てもらっても「よいアニメだよね」と言ってもらえる作品です。現代的な面白みだけ追求しても、作品として残らないだろうからです。
── その“いつ見てもらっても”とは、将来にわたって……という意味ですか? モギ そうです。今は子どもの数が少なくなってきていますから、大人も囲い込まないとビジネスとして成り立たなくなってきています。しかし、僕はアニメ番組は、まずは子どものためにつくられるべきと考えています。子どもを中心にしながら幅広い世代の人に見ていただくため、カンちゃんたちだけではなく、魔法界の3人、そして現実世界の大人たち、さまざまな視線をミックスさせています。視線を多くすることで、意外にもコアなアニメファンにも楽しめる要素があるようにも感じています。
――1969年の「ハクション大魔王」の最終回が感動的だったので、今でも語り草になっていますよね。
モギ あれだけドタバタだったのに、最終回はシリアスだったので、強く印象に残っている方が多いのではないでしょうか。当時ご覧になった方たちの気持ちは、やはり大事にしたい。そうでありつつ、今のアニメ番組として楽しめることを、第一に心がけています。
濁川 基本はドタバタギャグですが、見ている方が油断したところで、ちょっといい話が入ります。1話完結のコメディの体裁をとりながらも、全話を通してひとつの方向へ向かうようにストーリーを構成しています。まだ始まったばかりですが、「なかなかうまくできているのではないか」と、手ごたえを感じています。
(取材・文/廣田恵介)