麻倉もも、諏訪ななか、相羽あいな、南條愛乃、安野希世乃──この春、聴いておきたい旬な女性声優アーティストの新譜を徹底レビュー!【月刊声優アーティスト速報 2020年4月号】

2020年04月26日 14:000

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当月リリースの声優アーティストによる注目作品を紹介する本連載「月刊声優アーティスト速報」。この4月は、サウンドの“ミキシング”にこだわりが詰め込まれた麻倉ももさんのアルバムを筆頭に、春らしいフレッシュな作品を多めに選んでいきたい。

自身の所属ユニット「TrySail」での役回りと重なるかのように、女の子が共感できるようなかわいらしい恋愛ソングを数多く発表してきた麻倉ももさん。これまでの集大成的な位置付けとなる4月8日発売の2ndアルバム「Agapanthus」では、その名の通り“愛の花”を意味するアガパンサスの花をタイトルに掲げている。

 

 

冒頭に記した通り、同作はミキシングの手法を意識しながら視聴してみてほしい。突然だが、熱狂的な声優ファンであれば、ニコニコ生放送などの配信番組で、リアルな耳の飾りが付いた真っ黒な首上の人形を一度は目にしたことがないだろうか。あの人形は、一般的にタイピング音などの“心地よさや快感を覚える音”と定義される“ASMR”の専用マイクをセットしたもの。今作収録の「Twinkle Love」や「Agapanthus」では、そんなASMRに近いリスニング体験ができる。

 

たとえば、「Agapanthus」のBメロをレコーディングした際、麻倉さんは限界までマイクに顔を近づけ、そっと語りかけるように歌唱したという。加えて、麻倉さんのボーカルをダビングすることで、ヘッドホン等で視聴すると、彼女との空間的な距離感がぐっと縮まり、耳元でささやかれているような感覚になるのだ。そのため、その後のサビも普段以上に開放感を放ち、まるで目の前に花畑がぱあっと広がるようにも思えてくる。

 

もちろん、トラックも語りどころに尽きない。同曲を制作した渡辺翔さんと倉内達矢さんは、上品で繊細なサウンドメイクを得意とし、これまでに、TrySail「whiz」も手がけてきた名コンビ。「Agapanthus」でも、サビ半ばで幻想的なハープが奏でられたり、軽やかなギターが一貫して楽曲の背景を彩ったりと、その手腕がよく光っていた。もちろん今作の収録曲は、よい意味でどれも麻倉さんの今の全力が伝わるものばかりで、必聴の価値ありだ。

 

人気ユニット「Aqours」のメンバーとしても活躍する諏訪ななかさん。ソロアーティストデビュー作となった4月15日配信リリースのアルバム「So Sweet Dolce」は、「サンリオ」好きな彼女の性格を反映したような、甘くメルヘンな世界観で統一されていた。リード曲「So Sweet」MVが先行解禁された当初こそ、きらびやかなエレクトロサウンドを主軸にするのかと思えたが、ふたを開けてみれば、アルバム後半に進むに連れてギターポップや激しめなロックの楽曲が顔を出すなど、ジャンルとしての守備範囲の広さにまず驚かされた。

 

 

なかでも、諏訪さんのハイトーンでわずかにソリッドな歌声は、エレクトロ色にもマッチしそうなだけに、ラウドロックな「Strawberry Egoist」などで不意を突かれたファンも少なくはないはず。ただ、ライブ映えを意識した同曲でも、コーラスなどを多用しながら彼女の“かわいさ”を常に忘れないなど、激しめなサウンドでもうまく立ち回れることが示されていたようにも思う。そんな同作については、制作ディレクターが直々に全曲レビューを記しているため、詳細はそちらを参考にしてほしい(参考:諏訪ななか 音楽公式サイト)。

 

ガールズバンドユニット「Roselia」のボーカルとしても知られる相羽あいなさん。作曲家集団・Elements Gardenの全面プロデュースによる、4月15日発売のミニアルバム「SiGN」は、元プロレスラーという彼女の異色の経歴が大いにいきた作品となった。というのも、同作のリード曲「Beauty or Beast」は、女子プロレス団体「スターダム」の2020年団体テーマとして起用。Roseliaとも親和性がありそうな、まっすぐで緊迫感ある相羽さんの歌声が、ダイナミックで力強いトラックに合わさった楽曲だ。

 

 

また上記「Beauty or Beast」とは一転して、3曲目「センスオブワンダー」は、彼女の愛称である“あいあい”らしさが引き出された楽曲。どこか新しい世界へと旅立つ意志を歌ったポジティブな印象の同曲からは、等身大な彼女の明るさも感じられるはず。前述したような力強い方向性の作品に注目が集まりやすい相羽さんだが、だからこそ「センスオブワンダー」のような温かみのある楽曲もひときわ輝くのだろう。

 

同じく“エレガ”繋がりで紹介したいのが、南條愛乃さんが4月29日に発売するシングル「藪の中のジンテーゼ」。同作の表題曲は、TVアニメ「文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~」(テレビ東京ほか)エンディングテーマに起用されており、しっとりと深みのある南條さんの歌声と、含みのある豊かなバイオリンとの絶妙なマリアージュが奏でられる。万華鏡の内側を永遠とたゆたうような、一抹のやるせなさもどこか感じる1曲だ。

 

 

あわせて、作詞を手がけたイシイジロウさんは、アニメの世界観監修も担当。その歌詞は、さまざまな文豪らの作品より印象的なワンフレーズをオマージュしたもの。楽曲タイトルも同様に、芥川龍之介「藪の中」を引用したのだと思われる。アニメ本編と照らし合わせての考察もはかどりそうではないだろうか。

 

 

最後に紹介するのは、安野希世乃さんが4月29日に発売する2ndシングル「晴れ模様」。同作の表題曲は、TVアニメ「アルテ」(TOKYO MXほか)エンディングテーマに選ばれている。やさしく爪弾かれるアコースティックギターと、カントリーな景色を思わせる情緒豊かなアコーディオンに、安野さんのほっと落ち着く歌声が寄り添った楽曲だ。また、そのエバーグリーンな表現は、彼女が海辺の町を自転車で周遊するノスタルジックなMVにも通ずるところ。こんな時代だからこそ、癒しの音色が響く「晴れ模様」が生まれたことに心から感謝したい。

 

現在猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響は、声優アーティストらにも大きな影響を及ぼしている。前述した諏訪さんのデビューアルバムも、フィジカル発売が5月以降に延期となっているほか、次月以降のリリース作品についても同様の可能性が見込まれる。そんな今だからこそ、本稿で取り上げたような素晴らしい声優アーティスト作品を自宅で楽しみながら、次第に暖かくなってきた毎日の生活を安らかに過ごしていきたい。

 

(文/一条皓太)

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