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メロディは、いつもぎりぎりまで修正を加えています
── 「かんなぎ」は、神前さんにとってどんな作品ですか? 神前 「ハルヒ」、「らき☆すた」の次に劇伴を手がけたのが「かんなぎ」でした。劇伴としては、ゲーム音楽的ではない、映像の一部となるように一歩引いた視点で作り始めた最初の作品です。1つひとつの曲を抽出して聴いてみると地味かもしれないんですけど、映像と合わせると力を発するという。「かんなぎ」は和のテイストがありつつギャグも入り、面白かったです。「かんなぎ」のギャグ曲は、実は「うる星やつら」のイメージで、シンセサイザーをあえてシンセらしく使って、80年代的なテイストを出しているので、「らき☆すた」のギャグ曲とはまたコンセプトが違うんです。
── オープニングテーマの「motto☆派手にね!」も、80年代テイストでした。 神前 あれは中山美穂さんの「派手!!!」のオマージュですから。こういうふうにオーダーありきで楽曲を作るのは得意です。
── ボーカル曲を書くときに、特にこだわっていることは何ですか? 神前 デモを作るときは何度も直していくんです。最初にできたメロディはいびつな部分がたくさんあって、面白くない部分もあって。ひと晩寝て忘れて、もう1回聴いてここはダメだから直そうと。そういうブラッシュアップを繰り返していきますね。自分は歌い手ではないので、一番気持ちいいメロディが最初からポンと出てくることはないんです。とにかく、コンピューターに打ち込んだメロディを粘り強く直すしかない。
── 途中で誰かに歌ってもらうとか、そういう作業はするのでしょうか? 神前 歌ってもらうのは歌詞がついてからなので、ほぼないですね。自分で歌ってみてます。ただ、歌詞が付いて歌ってもらってからも、直しを入れたくなるんですよ。この歌詞だったら、メロディは下に行くんじゃなくて、上がったほうがいいなとか。レコーディングの本番ぎりぎりまで粘って直します。
── 今回の収録曲の中で、最初に作ったメロディから大きく変化していったものは、どれでしょうか? 神前 ほとんどの曲がそうですね。変遷を遂げて原型をとどめていないものばかりです。逆に最初に作ったメロディが、つるっと完成形までたどり着いた曲のほうが珍しくて、たとえば、「モノクローム ~ version de l'apprivoiser」という「STAR DRIVER 輝きのタクト」の曲がそうですね。これは詞先だったんです。なので、詞を読んだ瞬間にメロディが出てきて、鼻歌で歌ってみたときにほぼ完成していました。そういう制約があったほうが迷いがないんです。自由に作れるときは、いくらでも可能性があるじゃないですか。直しというのは、結局それを狭めていく作業なんですよね。そういう意味で詞先はメロディが作りやすいです。
── さらにいえば、これは気多の巫女(CV:戸松遥)が歌う曲で、コンセプトもはっきりしているんですよね。 神前 そうですね。あとは「恋愛サーキュレーション」も、悩まなかった部類の曲ですね。やりたいことがはっきりしていて、アレンジもデモからほとんど変わっていないです。
── 今でこそ増えてますが、当時、アニメの楽曲にラップを取り入れたのは目を引きました。 神前 実は声優さんとラップって相性がいいんです。声に説得力があるので。僕の曲は、声優さんが歌っているのがほとんどなんですよね。
── 声優さんが歌うことを前提に作ると、楽曲に何か特徴が出たりしますか? 神前 作曲の段階では、普通のポップスとの違いはそれほどないんですけど、メロディや歌詞だけではなく、声色でも表情が表現できるので、そこは強みだと思います。特にキャラクターソングは、笑顔で歌っていたり、すねてみたり、そういう演技がボーカルに乗るのは大きな武器ですよね。