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誰にでも、プラモデルで精密感を楽しめる時代の到来
── しかし、プラモデルは全体的に、昔より単価が高くなりましたよね。 馬場 やれることが多くなった分、コストも高くなりました。また、一昔前より生産数も減っています。
中村 もちろん技術の進歩で安くなった部分もあるのですが、金型製作費、材料費、流通コストも以前よりは高騰しています。たとえば、スライド金型は、成型時に金型をスライドさせる仕組みですから、どうしても金型の数が増えるんです。すると、コストが高くなります。スライド金型は製品の売りにもなりますが、コスト面では足かせになっちゃうんです。1/700「世界の現用戦闘機セット2020」も、スライド金型を使わずにすむよう、分割を工夫しました。
── 1/700スケールのプラモデルは小さい分、精密な作業が要求されますよね。どこが醍醐味だと思いますか? 中村 個人的な意見ですが、最近のプラモデル趣味では、SNSの存在が大きいと思っています。同じ趣味の人たちに向けて「こんなに繊細なものを作ったよ」と、写真を見せることで賞賛を集めたい、そういう欲求があるんじゃないでしょうか。エッチングパーツを切り抜いて取りつける作業は大変なので、「ここまでできたよ」と途中経過を見せたくなりますよね。模型の展示会でも、「こんなに細かい作業をして、すごいですよね」という気持ちをお互いにわかち合いたいんじゃないでしょうか。
ひとりで組み立てて「こういう形なのか」と確かめたり、ひとりで塗装して満足するのではなく、同じ趣味の人に見せたい。その役割を、かつては模型屋のショーウインドーが担っていたと思います。コンテストを開催している模型店も残ってはいますが、数は減りましたよね。SNSは地域による情報格差がありませんから、合同で模型の展示会を開催すると告知すれば、北海道から東京に来たり、東京から九州へ行く人もいます。そういう文化が広がりつつあると感じています。
── 「小さな模型を細かく作る」ことは、万人にアピールしやすい要素ですよね。 馬場 今のプラモデルはエッチングパーツを使わなくても、普通に組み立てるだけで、こんなに精密になります。1/700 「日本海軍 駆逐艦 陽炎 就役時」も大和よりパーツ数は少ないですが、繊細さでは大和を越えています。成型段階で以前はできなかったことができるようになったので、誰にでも、お手軽に精密感を楽しめる時代になりました。
中村 1/700なら、限られたスペースでジオラマを作れますから、日本の住宅事情にもマッチしていると思います。
(取材・文/廣田恵介)
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