サーフィンが大好きな大学生・ひな子と海辺の街の消防士・港が織りなすラブストーリー。もっとも衝撃的なのは主演の川栄李奈と片寄涼太が主題歌「Brand New Story」をデュエットするシーンである。じゃれ合って音程が外れていく歌声をバックに、2人がイチャイチャするだけの映像を4分にわたって見せられるという、文字にすると地獄のようなのだが、その陶酔感が素晴らしいのだから仕方がない。 「のれたら」というタイトルからも、本作の主題は上下の移動にあることはわかるだろう。そう考えるとひな子は、下りのエレベーターに乗り遅れたり、物をよく落としたり、とろとろのオムレツをチキンライスにうまくかけられなかったりと、上から下への動作を禁じられたキャラクターのように見える。最愛の恋人を亡くしても目に浮かんだ涙をこぼすことすら許されない彼女が、その呪いを解くまでを描いた一作。
さまざまな次元のスパイダーマンたちが共闘するSFアクション。計7名のスパイダーマンそれぞれに自己紹介パートが用意されていると聞けば冗長に思うかもしれないが、むしろそこが面白く、ずっと聞いていたくなってしまうほどの軽妙な語り口なのだ。“たったひとりの”スパイダーマンであるピーター・パーカーの自分語りから始まった物語は、中年に差しかかった冴えないピーター・B・パーカーや、日本のアニメキャラのようなペニー・パーカーなど、ユニークなスパイダーマンたちの登場であらぬ方向へと進んでいき、ラストもまた自己紹介で締めくくられている。 そんな語りに時間を割くいっぽう、スパイダーマンたちはスパイダー・センスという第六感を持つため、余計なことを説明しなくてもわかり合えると割り切っている。2人目のスパイダーマンと出会ったピーター・パーカーの第一声は“I thought I was the only one.(僕ひとりかと思ってた)”と独りごちるだけで、わざわざ確認を求めないところがクールだ。
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