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速くてきれいな旋律が、jiuzeの持ち味のひとつです
── どのように楽曲制作に入っていったんですか? 井上 赤根監督からいくつかメインとなる曲を作ってほしいというオーダーがあったので、それから手を付けていきました。まずはいつものように3分を超える曲を作ってイメージを固めていこうと。サントラの最初のほうに入っている「Ingenuity」「W -星合の空-」「slow and sure」「heart rate」あたりがそうですね。
── 「W -星合の空-」は「W」というタイトルで、2019年7月にリリースされた最新のアルバム「gallery」にも収録されています。もともとあった曲だったということですか? 井上 いえ、「星合の空」のためにゼロから作った曲で、すごく気に入ったので自分たちのアルバムにも収録させてほしいとお願いしたんです。「W」というのはダブルスと、相手と戦う“VS”という2つの意味を込めて付けたタイトルで、試合の興奮やめまぐるしさをイメージして作った曲です。
── アニメ本編でもテニスのシーンに頻繁に使われていて、「星合の空」の劇伴を代表する曲になっています。 片木 ネットで見ていると、毎回、「W -星合の空-」が流れたところで「キターッ」ってコメントが一斉に出るんですよね。あれはうれしいです。
── 片木さんのハイスピードのピアノがかっこよくて、みんな大好きだと思います。 井上 ああいう旋律はjizueの個性のひとつなので、絶対に今回の劇伴でも使おうと思っていました。初期の頃から「こんなん弾けるんだ」というくらいの速いパッセージを取り入れてやっているんです。その中にきれいな旋律があるというギャップがjizueらしさだと思っていて、今回もとにかく速いフレーズを作って、希依ちゃんに「これ、弾ける?」って投げて。
片木 めちゃめちゃ練習して弾きました(笑)。「W -星合の空-」は張り詰めた空気感があって、かっこいい曲だなと思います。
井上 難しいだけの曲ではなく、サビのメロディは開放感があって、ノリのいい曲になりました。自分たちがやりたいようにやった曲が、アニメのスタッフさんだけじゃなくアニメを見ている人にも気に入っていただけたので、いい曲ができたなという実感がありますね。
── 今回の劇伴を作っている間に、どんなことを考えましたか? 井上 なかには1分にも満たない曲もあるので、こんなに短い曲を聴いて、みんな楽しいのかなと思った瞬間もあったんです。でも、ミックスやマスタリングの作業で並べて聴くと、むっちゃいいなって。どうしてかというと、曲のキモ、僕らが一番聴かせたい曲のキモがずらっと並んでいるような感覚なんですね。それに気づいたとき、劇伴って面白いなって思いました。
── 普段は作らないような日常描写のための曲も、オーダーにはあったと思います。そういう曲を作ってみていかがでしたか? 井上 まったく抵抗なく、楽しんで作れました。そういう曲でもjizueらしさを出したいなという欲があって、ちょっと変わった日常曲になっていると思います。たとえば、変拍子になってるとか。
片木 典ちゃんは曲作りに関しては天才タイプなんです。適当に思いついた鼻歌を歌っただけで変拍子になっていたりするので、曲の中で7拍子になったり8拍子になったりしても、まったく違和感なく聴けるんです。それにレコーディングエンジニアでもあるので、メロディを作ったときにサウンド全体のイメージがすでに頭の中にあるんですよね。
── 完成形の明確なビジョンが、作曲の初期段階からあるということですね。 井上 ありますね。インストバンドだから特にそうなんですけど、サウンドデザインでその曲のかっこよさが大きく変わると思っているので。
── jizueの楽曲は、高度なテクニックに裏打ちされた複雑な音楽でありながら、耳なじみがいい印象がありました。 片木 普段作るときは、サビのメロディは絶対に歌えるものにしようというのが、メンバーの暗黙の了解としてあるんです。どんなに難しくても美しいものは絶対に心に響くはずだから、そういうメロディを入れられたらいいなと。