【インタビュー】コトリンゴが再び描く「このセカ」の音楽世界。「『この世界の片隅に』さらにいくつものサウンドトラック」が発売!

2019年12月19日 12:000

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「たんぽぽ さらにいくつのもの version」は、さりげなく曲を底上げしました


── 追加分の曲について、具体的におうかがいしていきます。まずは先行試写会でも演奏された「試験栽培」。すずさんと晴美さんが小松菜の種を植えるシーンで使われた曲ですね。

コトリンゴ はい。すずさんと晴美さんのコンビは私も好きですし、食にまつわるシーンなので、前に作った「ごはんの支度」みたいな感じで楽しんで作ることができました。

── 「知らんでええこと」は、どんなイメージで作ったんですか?

コトリンゴ 北條家の秋のとある日の曲です。屋根の上でふとんを干したり、みんなで縁側でお茶を飲んだりと最初はのどかな感じなんですけど、小林の伯母さんがタイトル通り、「知らんでええこと」を話し始め、すずさんがちょっと経って、その言葉の意味に気づくというシーンです。


── もう1曲、劇中で使われる「りんどうの秘密」は、終盤のシーンのための音楽ですね。

コトリンゴ すずさんとリンさんのシーンです。最初に出したデモは弦が曲の雰囲気を盛り上げていたんですけど、監督さんがそこは抑えめでと。

── 楽曲の打ち合わせのとき、片渕監督はどんな感じなのでしょうか?

コトリンゴ 明確なイメージを言葉にして説明してくださいます。たとえば、「試験栽培」では絵の動きと音楽のリズムがたまたまぴったり合って、コミカルに見えすぎてしまった個所があって、「こんなにはっきり合わせなくても大丈夫です」と。この作品の音楽は基本的にはピアノが主体で、すずさんのフィルターを通して見た世界を表現していているんですけど、監督さんと話していて、すずさんの、すずさん自身でもよくわかっていない感情を表すのも音楽の役目だとわかったので、さりげない感じが好まれるのかなと思いました。

── 感情をはっきりさせない音楽が求められたということですか?

コトリンゴ 色を付けすぎないというか、お涙頂戴にはしないというか。私にとっても、それがすごくよかったです。

── 「たんぽぽ」が新しいバージョンになったのは、どうしてですか?

コトリンゴ 時間が長くなったのは単純にスタッフクレジットが長くなったからです。ミックスの段階になって、「あと30秒伸ばせませんか?」と言われて(笑)。もうレコーディングは終わっているので、どうやって伸ばそうか、エンジニアの浜田純伸さんと一緒に頭をひねりました。今回はテルちゃんが登場しているので、「たんぽぽ」に使っていたペダルスティールの音色に意味が出てきたから、それを有効に使おうと思ってコピー&ペーストで最初にも入れたんです。

── ペダルスティールの音色は、南国の雰囲気がありますからね。

コトリンゴ そうなんです。それで最初は波の音も入れてみたんです。南国に憧れるテルちゃんと「鬼ぃちゃんの南洋冒険記」にもかけて。そうやって30秒伸ばして、「たんぽぽ さらにいくつもの version」ができ上がったんですけど、「みぎてのうた」とともに描かれるラストシーンは、北條家の家の中じゃないですか。そこに波の音は合わなかったので、監督さんの要望で波なしバージョンが採用されました。


── では、「たんぽぽ」は伸ばした部分を除いては前回のままなんですか?

コトリンゴ いえ、前回はコンピューターで作っていた楽器の音をいくつか生楽器に差し替えています。印象は変わってないんですけど、生のほうがいいなと。ストリングス、木管、などをまず足して行きました。それからグランドフィナーレ感を出すのにトロンボーンを加えたりして、さりげなく底上げしました。

── 「私の居場所」は、「たんぽぽ さらにいくつもの version」の後に、エンドロールに流れる曲ですね。

コトリンゴ 前回のエンドロールで使われた「すずさん」の代わりに新しい曲を入れたいと、かなり早い段階で言われました。ボーカル曲にしてしまうと、「みぎてのうた」「たんぽぽ」と歌が3曲続くことになるので大丈夫かなと思って監督さんに相談したら、「言葉がこみ上げてくる感じで、少しだけ歌を入れたいです」とおっしゃって。それで最後のほうだけに歌を入れました。この曲は、監督さんからの直しがなく、すんなりOKが出ました。

── 最後にもう1曲、ボーナストラックとして、ドキュメンタリー映画『<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』テーマソング「かんとくさん」が収録されています。 

コトリンゴ 制作の方からのオーダーで、ピアノ主体で作りました。私にとっての監督さんは、ひとりで黙々と歩いて調べ上げて、という孤高の人のイメージで、その周りを監督さんを愛するファンの方々の気持ちが、妖精のように飛び交っている様子を想像して、曲を作りました。タイトルは最初、英語でかっこよくしようと思っていたんですけど、「かんとく(仮)」とノートに書いておいたのをプロデューサーの真木(太郎)さんが見て、「このままのタイトルでいいじゃん」と(笑)。それで、「さん」を付けて「かんとくさん」にしてみました。CDでは「すずさん」と並んでいて、いい感じになりました。

画像一覧

  • (C) 2019こうの史代・双葉社 /「この世界の片隅に」製作委員会

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(C) 2018こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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(C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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