特に1話のヘヴィメタルから2話のヒップホップ、そして3話のアイドルへの流れは見事だった。今回、そんな「ゾンビランドサガ」の歌を1枚に詰め込み、さらに新曲まで追加したというアルバム「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」がリリースされるというのだから、こんなに喜ばしいことはない。ここではフランシュシュの楽曲を中心にレビューしたいのだが、あらかじめフランシュシュのメンバーを紹介すると、1号・源さくら(CV.本渡楓)、2号・二階堂サキ(CV.田野アサミ)、3号・水野愛(CV.種田梨沙)、4号・紺野純子(CV.河瀬茉希)、5号・ゆうぎり(CV.衣川里佳)6号・星川リリィ(CV.田中美海)、0号・山田たえ(CV.三石琴乃)の7人となる。これまでアニメBlu-rayの特典でしか聴くことができなかった劇中歌をたっぷりと楽しんでもほしい。アニメを知らなくても、音楽的に十分楽しめるクオリティだし、聴いたらアニメを見たくなるはずだ。
「DEAD or RAP!!!」は、2話でさくらとサキがやったラップバトルでの曲。体にリズムを取り込んで、しっかり韻を踏んでラップをしている。田野アサミのセンスはもちろん素晴らしいのだが、この曲の大半を歌っているさくら役の本渡楓も負けてない。ライムを刻みながら、そこに感情(ニュアンス)を入れることをやってのけているし、「特攻隊長ォォォ」のところで声がかすれるところもリアリティがある。そして、この曲の途中から加わる本格的なビートボックスを担当したのはビートボクサーのDaichi。いわゆる1~2話の音楽はこの作品の主流ではなく、ある意味つかみだったわけだが、そこで雰囲気だけの音楽を持ってきても、きっと視聴者には響かなかっただろう。そこをとことん本気でやる。そういう意味でもこの曲は重要な曲だったと思う。
愛、純子がメインの曲の次は、リリィがメインとなる「To my Dearest」。最初の語り口調がさだまさしさん風ということだが、某名ミュージカル曲っぽさもある。フランシュシュの中では、一番声を作っているのが田中美海だと思うが、この声がこの曲にとてつもなくマッチしていた。声で子供の純真さを出せるというのはすごい才能だと思うし、その語りも素晴らしかった。ラスサビをずっとメインで歌ってるところも泣けるし、最後をビブラートなしで歌うことによる余韻も鳥肌モノだった。
そしてサキの「特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~」。田野アサミがもうサキそのもので、(本人はヤンキーではないが)あまりにも自然なヤンキー歌唱が素晴らしい(※褒めてます)。最後の“あっfuー”の“あっ”の入れ方とか、本物です……。そして心のこもった「命なんて 儚い」のベタな名言。これも一度死んでるからこそ、実感して語っている感じが出ている。曲自体は、あのバンドのあの曲を連想させるし、あの曲のインパクトって基本的にイントロのギターだと思っているのだが、この曲も最初のギターのフレーズがキャッチーで、そこで完全に持っていかれる。
そのほか、アイアンフリルの新旧の曲や、パイロットフィルムにのみ使用されていた、源さくらが歌うアイドル曲「宣誓!ALIVEセンセーション」などを収録。「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」は、ジャンルの枠を飛び越えた昨今のアニソンのごった煮感がありつつ、J-POPの中に連綿と受け継がれ続けている歌謡曲へのリスペクトを忘れていない、本物の音楽が詰まったアルバムだ。この超濃厚でボリューミーなアルバムを聴きまくって、じっくり続篇を待ちたい。