【ライブBDをプレゼント!】フランシュシュの楽曲はこうして生まれた──「ゾンビランドサガ」をサウンド面で支えた佐藤宏次(楽曲制作・プロデュース)インタビュー!

2019年09月27日 15:080

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

大盛況のうちに幕を下ろした聖地・アルピノでのライブ。そして念願の続篇制作発表と、話題に事欠かない人気TVアニメ「ゾンビランドサガ」。今回は劇中歌の楽曲制作・プロデュースを務めた佐藤宏次さん(スコップ・ミュージック)に、いかにして「ゾンビランドサガ」の歌が生まれたのかを聞いてみた。

人気アニメ「ゾンビランドサガ」の音楽の仕掛け人が楽曲・制作プロデュースを務めた佐藤宏次さん。今回は、本作の「歌」についてすべてを知る佐藤さんに、「ゾンビランドサガ」の楽曲がどのように作られていったのかをたっぷり語ってもらった。

ライブも一段落し、2019年11月27日にはこれまでの劇中歌を網羅したCD「ゾンビランドサガ フランシュシュThe Best」もリリースされるということで、改めて「ゾンビランドサガ」の楽曲について振り返ろう!

インタビューでは、クリエイティブな制作現場の空気感。そして、歌に命を吹き込んだキャストの声の魅力や、制作時の裏話など、知りたいけどなかなか聞けないレアなトークが数多く飛び出した。

なお記事の最後にはプレゼント告知もあるので、そちらもあわせて要チェックだ! 

 

面白い曲ができたら、それに乗っかってくれるスタッフ陣だったんです

ーー佐賀でのライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう!~in SAGA」はいかがでしたか?

 

佐藤 基本的に私がライブ会場に行くのは出音の確認と調整をする為なのですが、(ライブ会場のアルピノがイベントホールだったこともあり)今回は少し難しかったです。でもマニピュレーターを担当してくれたのが「ゾンビランドサガ」全曲のミックスを担当しているエンジニアだったので、出音を聴きながら、その場で細かく調整することが出できました。もちろんやり切れてない部分はあるんですけど、総じてPAの方もとても素晴らしかったので、出音がすごくよく、満足いくものになりました。歌も、フランシュシュの皆さんががんばってくれましたし。

 

ーーアルピノは体育館のようなところでしたけど、曲のすべてをわかってる人が音の最終調整をしてくれてたんですね。

 

佐藤 なので結構音源に近いバランスで聞こえるように出せたのかなと思います。会場の鳴りに対して、「音源ではこういう感じだったかな」というところで調整はしたので、だいぶ聴きやすかったと思います。

 

 

ーーライブ自体はいかがでした?

 

佐藤 品川で行われた1stライブよりも盛り上がっていた印象でした。音の収録もしていたのでライブ後にサウンドチェックをしてたら、ファンの皆様の声がすごく大きくて(笑)。音量感やばい!と思いました。

 

ーー本作は、ファンがそこまで熱狂するほど、歌が魅力的なコンテンツだと思います。そこで、今回はその歌がどうやって生まれたのかをうかがえればと思います。

 

佐藤 歌がよかったと思っていただけたのならば、とても嬉しいです。

 

ーーまず、「ゾンビランドサガ」の話を、どのような感じで受けたのですか?

 

佐藤 私は、「この作品、ホントにやるのかな?」ってところからスタートしてるんです。内容が内容なだけに、果たして本当に放送されるのか?という期待と不安がありました。

 

ーーどのあたりから、その不安に対して、期待が上回りましたか?

 

佐藤 オンエアしてからかなぁ(笑)。それまでは関わっているプロデューサー陣がとにかく少なかったんですよ。境宗久監督、MAPPAの大塚学さん、Cygamesの竹中信広さん。ここでほぼほぼ決まっていくので、すごくやりやすいというか。やっちまえ感やノリが心地よかったので、とにかく曲を作ることが楽しかったです。そのいっぽうで、これは大丈夫なのかな?って不安が常にある中、レコーディングに突入して……。でも、そのあとラフの映像を見たとき、すごく面白かったので、とても失礼な話なのですが「ちゃんとできてる!」って、そこで初めて思いました(笑)。

 

ーーこれまでアキバ総研では、何度かスタッフの皆さんにインタビューをさせていただきましたけど、どなたもかなり面白い方々ですよね。

 

佐藤 関係性にヘンな遠慮がないんですよね。近い世代ということもあるし、何でしょうね、あの感じは(笑)。MAPPAさんの映像制作チームの方々もすごく意見を出してくれてたみたいで、そのおかげでより追求していけるというか。で、それに乗っかる監督含めプロデューサー陣みたいな感じで、すごくいい関係性ができていたみたいです。だから、細かいところで「わかるわかる!」ってことがたくさんあった気がします。

 

ーー今回、劇中歌を作るというところで、キャスティングについて佐藤さんからは意見を出したりしたのですか?

 

佐藤 キャストに関して私はほぼノータッチでしたが、確認だけはしました。もともと田野アサミさんと種田梨沙さんとはお仕事をしたことがあったのですが、河瀬茉希さんと本渡楓さんは初めてご一緒することになったので、一度スタジオに入ってもらって、どのくらいのことができるのかの確認はしました。でも、そのくらいですね。

 

ーーライブのことは考えずに曲を作っていったとお聞きしましたが。

 

佐藤 そうですね。だから皆さん大変だっただろうなと思います。一応歌い分けに関しては、最低限再現が可能な範囲にはしてあったのですが、それプラス難しいことというのは存在していて、歌的にコーラスグループか!くらいのことは少しやっているんです。でも、それもがんばってライブで再現してくれたので、嬉しい半面申しわけないなという気持ちです(笑)。

 

ーー各楽曲を、どういう風に作ったのかを教えてもらいたいのですが、まずOP・EDはどういう発注をしたのですか? たとえばコンペとかもしたのですか?

 

佐藤 ほぼコンペはやっていなくて、作っては直しの繰り返しでした。OPテーマの「徒花ネクロマンシー」もオーダー自体はもらっていて、作曲家の加藤裕介にこういうオーダーが来てるけど、どう思う?という話から始まり、気づいたらここに至るみたいな(笑)。

 

 

ーーどんなオーダーだったのかは、教えていただけますか?

 

佐藤 言えることとしたら、戦隊モノという話は別にありませんでしたということくらいです。僕も加藤も戦隊モノとしては作ってなかったけど、フタを開けてみて、言われてみたらそうだなっていう(笑)。実際にオーダーは大きく2つあって、既存の曲を参考に出して、こういう方向かこういう方向の曲がいいですと言われていたんです。でも完成した音源を聴くと、どっちにも当てはまってない(笑)。掘り下げれば「なるほどな」とは思うけど、説明がすごく難しいんですよね。なぜこうなったのか、自分たちでもわからないから。加藤とも、何でこうなったんだろうねってたまに話すんですけど、結局「でも、すげーいい曲になったよね」で終わるという(笑)。

 

ーー「ゾンビランドサガ」って序盤に仕掛けがあって、放送当初は誰もこういう作品だと思ってなかったじゃないですか。そのうえでこの曲が来たことは驚きだったんですね。それに対する感触はどうでしたか?

 

佐藤 これも同じ話になるんですけど、パッと聴いて、オーダーと全然違うんですよ。でも面白い曲ができていたからとりあえず皆に聴いていただいたら、すごくいいです!っとなり、今に至るんです。「ゾンビランドサガ」のスタッフ陣って、いいものはいいって言ってくれる人達なんですよね。だから(オーダーを)忠実に再現したのは、TVサイズ版の最初の口上くらいかもしれません。

 

ーーオーダーとは違うけど、いい曲だからオッケーは、確かに僕らが作品を見たときの気持ちのままですね。想像と違うけど面白い、みたいな。

 

佐藤 作画スタッフの方達は曲ありきで考えてくれたみたいで、その線画を見て、「あっ、みんな戦隊モノと感じてたんだな」「絵の人たちすごいなぁ」って思いました。

 

ーーEDの「光へ」は、最初から合唱曲ということだったんですか?

 

佐藤 これも何で合唱になったのかわからないんですよね……。卒業とかそういうことも最初はなかったんですけど、打ち合わせしてるときに、なんとなくそんな話が出て、そのかけらに向かっていってしまった結果というか。話しててワードで面白いなというのが出たら、みんなそこに向かうという現場だったんです。

 

ーー作詞は両曲とも古屋真さんですが、本作ではほかにも多くの曲の歌詞を書かれていますね。

 

佐藤 この作品の軸になる作詞家として稼働してもらいました。特に「徒花~」に関しては、ほぼほぼ彼のセンスなんですよ。パッと聴いて何を言ってるかわからない歌詞にしてほしいというオーダーに対して、上がってきたのがあの歌詞でした。

 

ーー何を言っているのかわからないけれど、作品のことをばっちり表現している歌詞ですよね?

 

佐藤 シナリオをすごく読み込んでいたし、彼自身もゾンビが大好きで、ゾンビ映画を語らせたら1日中語っているような人なんで、ゾンビ愛はすごく入ってたと思います。いい意味で「ゾンビランドサガ」の大ファンになってくれました。

 

最初にできた曲が「アツクナレ」と「ヨミガエレ」

ーー挿入歌は、どのように作ったのですか?

 

佐藤 順番としては、挿入歌が先に仕上がって、OP、EDは最後の最後にできあがりました。そもそもゾンビがアイドルって「え?」だったし、佐賀が舞台っていうのも「どういうこと?」でした(笑)。そこから最初に作り始めたのは、「アツクナレ」と「ヨミガエレ」でした。で、「ヨミガエレ」の歌詞を先に仕上げたのかな。

 

ーーこの2曲はフランシュシュの代表曲というイメージが強いです。曲調がコロコロ変わるところも、「これぞフランシュシュの曲」という感じです。

 

佐藤 いわゆるプログレですよね。

 

ーーそうですそうです。その感じが、このアイドルグループというか、巽幸太郎が作る曲のベースにあるものなのかなぁと。この2曲はどう作っていったのですか?

 

佐藤 「ヨミガエレ」と「アツクナレ」は、挿入歌の代表曲候補として作った2曲なんです。デモの時はタイトルがどちらも「ヨミガエレ」だったんですけど、どっちの曲を彼女たちの代表曲にするかとなったときに現在の「ヨミガエレ」が選ばれたんです。でも「アツクナレ」もすごくカッコいいので、このシーンで使わないかという提案が上がってきて、純子と愛の曲になり、そこに合わせて歌詞とか歌い分けなどのいろいろな調整をしていって今の「アツクナレ」になっていきました。

 

ーー「アツクナレ」のAメロで愛と純子がソロを繋げるところも、そこで決まっていったんですね?

 

佐藤 シーンの流れがあったので、歌い分けをこういう風にしたら純子と愛の曲になるよねと、スタッフの皆さんに提案して聴いてもらって進んでいった感じです。

 

ーー改めて聴いても、両方使いたくなるくらい、どちらもいい曲ですよね。

 

佐藤 そう言っていただけると、がんばって作ってよかった!って思います。とはいえ、一番がんばったのは作家陣ですが(笑)。

 

ーー途中でハードロックみたくなるのも、オーダーなんですか?

 

佐藤 この2曲は、1話のヘッドバンキングシーンで流れ、3話の「目覚めRETURNER」の代わりにも流れ、最終話でも流れる予定の候補曲として作っていたので、その感じが残っているんです。でも「ヨミガエレ」が選ばれた時に、「この曲はメタルにならないなぁ、じゃあ新しい曲を作るか」ってことになって生まれたのが「ようこそ佐賀へ」でした。

 

 

ーーわりと偶然も重なってるというか。

 

佐藤 それも含めてアーティストっぽいと思うんですよ。いろいろな曲を作って、はめていくみたいな。私自身、今までいろいろなアイドルや作品に関わらせてもらっていますけど、こんなに曲に合わせていろいろなことをはめていく作品はちょっと記憶にないです。歌い分けに関しても私が作ったもので映像が作られていったので、微妙に責任重大だったなって思います(笑)。10話ではどこかで見たことのある歌い分け入り歌詞カードが登場したり(笑)。

 

ーーしかし、本編で一番流れてたのは「目覚めRETURNER」でした。

 

佐藤 そうですね。制作陣がこの曲を好きになってくれて、こっちのほうがいいんじゃない?みたいな感じでどんどん使われていったようです。この曲はもともと第7話の落雷後のライブシーン用だけのはずだった曲なんです。デモとして作ってるときは基本的に雷後を意識して作っているのですが、デモをケロケロのボーカルでは作れないので、最初は普通のボーカルで制作が進んでいくんですよ。そして知らない間にコンテ上の3話で歌ってるし、4話でも歌ってるし、みたいな(笑)。

そこからちょっと大変でした(笑)。3話の演出用の歌い分けや歌い方は通常のものとは違うので、3話用の別バージョンとして歌ってもらったり。この曲は基本的にオンエアされた話数分のバージョンを作りました。

 

ーー個人的にはTM NetworkからPerfumeまでの、デジタルポップの歴史のようなものを感じました。

 

佐藤 それはあまり考えてはいなくて、この曲ってサウンド的にも特殊で、ジャンル感が言い表しづらいんですよ。木下智哉という作曲家が作っているんですけど、彼の感じなんです。だから何とも言い難いサウンドで、エレクトロではあるけど、果たしてそう呼んでしまっていいのかという不思議なサウンドになっています。

 

ーーこの曲も、コロコロ曲調が変わるんですね。

 

佐藤 基本的に1曲1エンターテイメントというか、1曲ごとにテーマパークじゃないですけど、楽しく聴けるような感じを、個人的に意識はしました。。

 

ーー2話の「DEAD or RAP!!!」も面白かったのですが、サキとさくらのラップバトルに関しては、どのようにレコーディングしていったのですか?

 

佐藤 もちろんガイドはあったのですが、基本お2人ともにどう歌うのかとか、ニュアンスを考えてきてくれて、そのアイデアがそのまま盛り込まれてます。ちょっとだけタイミングの指示は出しましたけど、ほぼほぼそのままです。これは僕の仕事のスタンスでもあるんですけど、資料をお渡しして、基本的には歌う方に考えてきてもらうんです。歌って歌う人のものだと思うので。いくら作曲家やプロデューサーがいても、どうしても歌う人がその歌を背負ってしまう。この作品でも、フランシュシュが歌を背負ってるわけなんです。だから歌う方に考えてきてもらって、その考えたものをまずは出してもらって、そこからどうしようと言うやり取りが始まります。

 

 

ーーそうやってあの名シーンが生まれたんですね。

 

佐藤 そしてフランシュシュの話ではないのですが、とても衝撃を受けたのは、ボイパ(ボイスパーカッション)でしたね。最初、シナリオには「幸太郎の華麗なボイパ」って書いてあって、これどうするの?っていう(笑)。デモとして打ち込みで作ったものはあったのですが、誰かに演ってもらわないと形にならないなと。で、たまたまビートボクサーのDaichiさんの事務所の方に知り合いがいたので、その人を介して「お願いできませんか?」って聞いたところ、快く受けていただけました。そのおかげで最高のクオリティの“華麗なボイパ”になりました。

木村昴さんのレコーディング時に無茶振りをして御本人に演っていただいたボイパも素晴らしかったです(笑)。


ライブを通じて大きく成長した各キャラ担当曲

ーーそのほか各キャラの当番回があって、それぞれメインボーカルを取る曲もありました。いずれもかなりオマージュ感はあったのかなと……。

 

佐藤 「To my Dearest」はさだまさしさんだし、「特攻DANCE~DAWN OF THE BAD~」は、あの方々ですね。公然の秘密として、もうあちこちで言ってしまっていますが(笑)。

 

ーー(笑)。まず「To my Dearest」は、田中美海さんの語りが本当に秀逸だったと思っています。

 

佐藤 本当にお上手でした。すごくお上手でした。みんな上手なんですけど、この曲は特にすごかったです。そもそも曲が難しいんですよ。語りっぽいというところよりも、リズムに対してずっと後ろで溜めて溜めてみたいなことをやっているので、本人も悩みながら歌っていたとは思うんです。でも、まぁお上手でしたね。こちらがポッと何か言ったら、そこにちゃんとフォーカスを当ててくるみたいな。あと、8話と相まって聴くと泣けます!

 

ーーこれはオーダー通り作ったのですか?

 

佐藤 そうですね。ある意味オーダーに沿った曲になってはいると思います(笑)。唯一リテイクしてない曲かもしれないです。山下洋介から上がって来た瞬間から「もうコレ!」って思って、「いい曲できたよ~」ってスタッフの皆さんに持っていきました。

 

ーーライブでもすごく感動しました。

 

佐藤 それならぜひアニマックスでの放送を見てほしいです。録って出しみたいな感じではなくて、聴こえづらいところは聴こえやすく調整したりしてるんです。つまりBlu-rayとかになるくらいのレベルで音を調整しているので、楽しみにしていてください。

 

ーー「特攻DANCE~DAWN OF THE BAD~」も、素晴らしい歌声でした。

 

佐藤 僕は、こんなに歌録りの時に「もっと舌を巻いて」ってお願いすることは過去に例がないです(笑)。普段は巻かないでと言うことが多いので(笑)。

 

 

ーーライブだとめちゃめちゃ盛り上がるんですよね。

 

佐藤 曲が大きく育っている感じがします。それはフランシュシュが“アイドルになってきた”ということかもしれないですね。キャラクターであろうと中の人であろうと、曲が現場で育っていくというのは、ちゃんとアイドルになっていってるということだと思うので、それを目の当たりにしているのはとても面白いなと思います。盛り上がってるファンの皆さんを見て、自分もその中に入りたいな~って、後ろで観ながら思ってましたから。

 

ーーセリフのところも、すごく説得力があるんですよ。

 

佐藤 鼻で笑った瞬間に、ヤバイ!って思いました。そうしてとはお願いしていないのですが、聞いたときは「キタッ!」って(笑)。

 

ーー最終話、ラストに流れたのは「FLAGをはためかせろ!」でしたけど、これは最後のシーンのために作った曲なのですか? 

 

佐藤 「最後に歌う曲」というカテゴライズがあって、最後に歌うのであれば明るくいきたいなと思って、明るく楽しくというテーマで作っていきました。アイドルだし、楽しいほうがいいじゃないですか。一応劇中に流れているのは6曲だけど、フランシュシュって実際はもっと曲があると思うんですよ。じゃないと1ステージ持たないし、ワンマンでアルピノをやってるわけですから、少なくても15~16曲ある。その中には、きっと明るい曲もいっぱいあるのかなと。その中のひとつみたいな感覚で、みんなで歌えて、追っかけもある曲です。

 

ーーいかにもライブで盛り上がれる曲です。

 

佐藤 ライブ会場で皆さんがやっているあの感じをやってもらいたくて作っていたので、まさにそれが再現されたのが非常に感慨深いです。追っかけのフレーズは結構難しいんですよ。ただ、ファンの方の練度が高くて(笑)。わかりやすくて簡単なものも楽しいんですけど、ちょっとだけ難しいとハマったときの盛り上がり感はすごいので感動します。こちらも曲が育ってきているんだなと思いました。

 

ーーこの作品のメインとして、「アツクナレ」とか「ヨミガエレ」があるならば、この子たちがライブの最後でよく歌う曲がこれなんだろうなみたいな感じでした。

 

佐藤 私たちの定番曲、みんな最後に歌って盛り上がろうね~!みたいな感じですよね。やっぱしんみりライブが終わるのはよくないと思うんです。「また来てね!」みたいな感じで終ってほしいですよね!

 

 

アイアンフリルのプロデューサー陣は変わってない?

ーーそしてアイアンフリルの曲が、時代感が出ていて面白いと思いました。そこは作ったときにこだわりました?

 

佐藤 大事にしたかったのはわかりやすいということですね。掘り下げないとわからない曲だったりすると、ライブで見てても盛り上がらないじゃないですか。あの2曲は30歳オーバーだったら聴けば「あぁ!」」ってなるはずなんですよ。時代感を聴いて感じられるからわかりやすい、そこは大事かなと。逆にフランシュシュは時代感がわからなくていいと思うんです。地方のアイドルだし、言わば地下アイドルみたいなものですし、何よりできたばかりのグループなので。

でもアイアンフリルに関しては時代感がはっきりあって、愛がいなくなった今もまだやっているという時代背景というのが設定としてあるので、聴いてわかるほうが、それをより鮮明にイメージできると思うのでそこは大事にしたいなと。

 

ーー仮にアイアンフリルに愛がいた時代が’08年だとすると、歌のテイスト的にはもう少し前のはやりなのかなとは思ったのですが。

 

佐藤 結局何をしたかというと、これは実際の話ではないわけなんですよ。だから実際に’08年に「FANTASTIC LOVERS」みたいな曲が流行っていたかというとそうではなく、‘18年に「ゼリーフィッシュ」みたいな曲が流行っていたかというとそういうことでもないんです。日本におけるアイドル史の中で、すごくわかりやすくみんなが覚えている時代感というのがあると思っていまして、特にセンセーショナルに売れた時代というと、「モーニング娘。」をはじめとするつんくさんプロデュースの時代。そこからまた10年後くらいに、秋元康さんが48グループをやり始めた。この時代感って、音楽的にわかりやすいじゃないですか。だから10年くらい後ろにずれてはいるのですが、はっきりその時代を感じられるというところで参考にさせていただいたんです。

 

 

ーーその時代の音楽性って言葉で表現できたりするものですか? たとえば最近の曲のほうが複雑な傾向にあるとか、こういう音楽的はやりがあったとか。

 

佐藤 昔から複雑な曲は複雑だったと思います。SMAPさんの初期の曲なんて、すごくカッコいいですが難しいじゃないですか。だから複雑だからとかではなく、その時代に売れたもの、みんなの記憶に残っているものが時代感を生んでいると思うんです。だから音楽的にどうこうっていうのはないのかなと。もちろん機材の進化や変化で表現できる幅は変わっていっているので、そういった意味では最近の音楽は複雑になっているかもしれませんね。ただそれが流行りと直結しているかと言われたら、そうではないと思います。その時代時代でコード進行や展開に関しては特徴があるかもしれません。言葉でお伝えするのは私には難しいですね……。

なんと言いますか、“時代の音楽性”って上澄みというか、すごくデフォルメされた印象というのがあると思うんです。「あの頃はああだったよね」みたいな。たとえば物とか文化だと、ルーズソックスとかもそうですよね。言葉や物や音楽には、その時代を象徴するものがあって、今回はそれがわかりやすい形でちょうどよく見つかったので、参考にできたということですね。

 

ーーそれが再現できてることがすごいと思います。

 

佐藤 たまたまですよ。そういったお題があっても、その時代を象徴する音楽が存在してなかったら、また違ったアプローチになっていたんだろうなと思います。

 

ーー昨今は音楽ジャンルが多様化していますが、そういう事情もあり、たとえば後世のクリエイターが、今の時代の音楽を再現してみてと言われても難しいんじゃないのかなと、ふと思いました。そんな中でも、「ゼリーフィッシュ」は、今っぽい感じがありました。

 

佐藤 今っぽさ、出てましたかね?(笑)アイアンフリルに関しては、私の中の設定としてひとつ筋を通していることがあって、歌い分けの特性を似せているんです。センターがいて、センターに対して誰がどう歌うかっていう構成をほぼほぼ一緒の形にして、作詞を同じ唐沢美帆が担当し、あとコーラスを歌っているプロの方が一緒。つまりアイアンフリルのプロデューサー陣は今も昔も変わってなくて、いろいろなことがあったけれどそれを乗り越えて、今もまだ活動しているという設定です。あくまで私の中だけの設定ですが(笑)。

 

ーーそうなんですね! 同じスタッフで、時代の流れに合わせた音楽をやっていっていると。

 

 

この曲たちを、よくこんなに上手に歌ってるな!って

ーー曲のことはたっぷりうかがったので、それぞれの声優さんの声の魅力についても教えてください。

 

佐藤 まず本渡楓さん。彼女は高音の伸び。張ったときの声がすごく気持ちいいんです。パキーンと出てくる。それがどこまでも行ける感じなので、逆にこっちが不安になっちゃうんです。喉壊さない?大丈夫?って。そのくらい伸びていくので。田野さんは「特攻~」ですべて語られてるのではないかなと(笑)。サキらしさを出すためレンジが低めに設定されてるんですけど、巻きながら歌うあの感じはサキそのものだなと。種田梨沙さんの愛ですが、私は種田さんのシャクリがすごく好きなんですよ。語尾のシャクリがすごく好きなんです。なかなかあんなきれいにできないですよ! 紺野純子役の河瀬茉希さんは、レコーディング経験自体がないというところから始まったんですけど、曲を録るたびに進化をしていくんです。それが面白いしすごいなと思いました。昭和のアイドルで、歌がうまいという設定だったからすごく大変だったとは思うし、悩まれてはいたみたいですけど。

昭和のアイドルだから歌がうまい、というのは現場で勝手に追加した設定なんですけどね(笑)。

 

ーー「アツクナレ」のソロとかは最高ですけどね。

 

佐藤 私はドロップのところでいつも泣いてしまうんですよ。すごくいいですよね。で、衣川里佳さんのゆうぎりは、安定してうまいんです。ずっと歌がうまいんです。なんて言ったらいいんだろう。ぜひアルバム「ゾンビランドサガ フランシュシュThe Best」の新曲を聴いていただきたい! ゆうぎりのすごさが出たかなと思っていて、「うまい」という領域を超えたんじゃないかな(笑)。田中美海さんのリリィは、この中で唯一声をキャラクターとして作ってるんです。皆さんあまり声は作らない方向なのですが、美海さんだけは作っていただいているんです。それでよくあそこまで歌えるなぁと。あと、彼女は理解するスピードが速いんです。先ほども言いましたけど、こうしてほしいということに対してのレスポンスが速いです。

 

ーーこの顔ぶれの中でライブ経験が多いのは、田野さんと田中さんだと思いますけど、ライブでのみなさんのパフォーマンスはどうでしたか?

 

佐藤 こんなに皆さんステージでちゃんと歌えるとは!と思いました。ライブの音の素材をもらったときにびっくりしたんですよ。そこにまず感動したんです。品川での「みんなでおらぼう」のライブミックスの作業をするのに音をもらってエンジニアとファイルを開いたときに、すごいなと。とにかくみんないい歌を歌っているんです! 歌がメインの方々ではないのに、それでこの曲達をよくこんなに歌いこなせるな!って素直に驚きました。

 

ーー最近の声優さんは、本当にみなさん生で聴いてもうまいですからね。

 

佐藤 多分とても練習しているんだと思います。みんな努力して来てくれてるんだろうなって。レコーディングにもすごく練習してから来てくれているので、みんなプロなんだなって改めて思います。

 

(取材・文/塚越淳一)


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・当選発表:景品の発送をもって発表にかえさせていただきます
・景品発送:2019年12月末までに発送予定
・応募方法:以下の専用応募フォームにて受付

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・応募には会員登録(無料)が必要です。
・応募はひとり1回に限らせていただきます。
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放送日: 2018年10月4日~2018年12月20日   制作会社: MAPPA
キャスト: 宮野真守、本渡楓、田野アサミ、種田梨沙
(C) ゾンビランドサガ製作委員会 (C) ZOMBIE LAND SAGA PARTNERS

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