可動美少女フィギュアの世界で“オリジナルキャラ”はどう勝負する? りゅんりゅん亭・遠那かんし氏、インタビュー!【ホビー業界インサイド第49回】

2019年07月27日 12:300

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可動フィギュアなら“自分のやりやすい楽しみ方”が見つかる!


── 造形素材は、何を使っているのですか?

遠那 ワックスです。勤めていた会社がかつてキン消し(「キン肉マン」消しゴム)の原型をワックスで作っており、その流れで私も原型制作にワックスを使うようになりました。以来、ずっとワックスです。もっとも、ワックスは6割ぐらいで、最初はインダストリアルクレイで造形し、シリコンで型をとってその後、ワックスに置き換えます。最終的に再びシリコンで型をとってレジンに置き換えて、磨いて仕上げます。ワックスは細かい造形には向いていますが、広い面をきれいに仕上げられないので、やはりレジンに置き換える必要があります。

── こんな緻密なパーツ分割をしているのに、そこまでアナログとは(笑)。

遠那 そう、アナログなんです(笑)。今のところ、どうしてもデジタル造形に移行しなくてはならないメリットは見当たらないですね。幸いお仕事もいただけているので、アナログ造形でも困ってはいません。

── こだわっている造形上のポイントは、どこですか?

遠那 顔のかわいさです。原型師さんはみんな同じでしょうけど、自分の作っている顔が、いちばんかわいいんです。ファンの方から「りゅんりゅん亭さんのフィギュアは、やっぱり顔がかわいい」と言っていただけると、「自分のこだわりは間違っていなかった」と手ごたえを感じます。


── 次のワンフェスには出るんですか?

遠那 はい、もちろん出ます。「ワンフェスに育ててもらった」と私は思っているので、やっぱり特別なイベントだし、大好きですね。開催のたびに新作を持っていくようなテンションではないけれど、ワンフェスありきの生活を送っています。

── 生活のために商業原型だけ作っていくのは、いかがですか?

遠那 良いことだと思っています。商業原型を作って学べることは、とても多いです。独りよがりなものでは、決して監修OKはでませんし、自分では気づけなかったことを指摘いただけると自身の未熟さを痛感します。年をとると独りよがりになりがちなので(笑)、他人様が意見くださるというのはとても価値があります。
ただ、私の場合はそれだけではなく、自分が欲しいもの、作りたいものはまた別な場合もあります。オリジナルキャラを作っていると、気持ちがワクワクしまね。継続していくのはとても大変ですけど、ワンフェスなどのイベントやSNSや自分のサイトでの通販など、オリジナルキャラを発表する環境が整えられていることは本当に恵まれていると思います。

── 「ワンフェスが好き」というのも、そういう部分でしょうか?

遠那 そうです。お客さんとの距離が近くて、反応がダイレクトなんです。あと、自分でパッケージづくりをして箱につめて……という、お店屋さんゴッコができます。自分で、お客さんと直接やりとりできるのが楽しいんです。商業原型だけではそういう体験はできませんし、決してお金には代えられない充実感がありますよ。

── なぜ今、こんなに可動フィギュアが流行っているのだと思いますか?

遠那 まずはやはり、浅井真紀さんとマックスファクトリーさんで開発したfigmaの存在ですね。ホビー業界に“飾るフィギュアから遊ぶフィギュア”という、新たなコンテンツと常識を生み出したと思います。もの凄いことです。それから、新たにコトブキヤさんのフレームアームズ・ガール、メガミデバイスが出たことが大きいと思います。プラモデルで、安くて、かわいいだけでなく、“自由に扱える素材”という側面もあります。カスタマイズとの親和性が高いなど、いくつかの条件が揃ったことでしょうね。
ドール系のイベントを見ていると、メガミデバイス用の服がいっぱい出ています。プラモデルを楽しんでいる人たちが服を着せる楽しみを発見し、ドールを楽しんでいる人たちがメガミデバイスを買って組み立てて、アイメイクなどのドール要素を盛り込む。つまり、双方から入ってきた人たちが混在している状況だと思います。女性もプラモデルを買っているし、男性で布の服を作っている人もいる。自分のやりやすい楽しみ方に振ることができる、それが可動フィギュアの流行っている一番の理由ではないかと思います。ちょっと手を加えるだけで愛着がわく、自分のモノになる素材が、いま一番面白いんじゃないでしょうか。

── コトブキヤさんと勝負しようという気はありますか?

遠那 いえいえ、こちらがレジンで作っている以上、勝負にはならないでしょう(笑)。浅井さんやコトブキヤさん、アゾンインターナショナルさん、業界が切り拓いてくれた市場でおこぼれをいただいている自覚はあります。そんな中でも私は、私自身が面白いと思えるものを作り、好きな人が買ってくれる、なるべくコアなファンがついてくれるように頑張っていきます。



(取材・文/廣田恵介)

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