【インタビュー】坂本真綾と椎名林檎のコラボが実現! 新曲「宇宙の記憶」は、ジャジーで哲学的

2019年07月25日 12:000

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「序曲」は、今の私が日頃しみじみ感じていることを曲にしました


── 2曲目の「序曲」は、坂本さんの作詞・作曲です。

坂本 今回のCDは、3曲目に「明日を知らない」を入れることを先に決めていて、林檎さんに料理していただいた曲とthe band apartのカバー曲の間に、今の自分らしい曲を入れたらバランスがいいのかなと思って書きました。

── 「序曲」はサウンド的にも、ジャジーな「宇宙の記憶」と、アコースティックな「明日を知らない」を繋いでいる感がありました。歌詞は、非常に大人の雰囲気で。

坂本 そう言ってくださるとうれしいです。私も39歳になって、未来というものの意味が変わってきたように思うんです。若いときの未来って半永久的というか、いつかはこうなりたいと思い描く時間の長さがすごく曖昧なんですよね。でも、年齢を重ねてくると、時間は有限で、あれもこれもやりたいって思ってきたけど、もはや全部は無理なんじゃないかということがわかってきて。そんな中で、今の自分よりももっとよくなりたいと努力するモチベーションを保っていくことは、すごく大変だと思うんです。そんなふうにしみじみ感じている今日この頃のことを、曲にしてみました。

── 「今を積み上げる」という言葉が歌詞に出てきますが、大人になると、はるか未来を思い描くのではなく、今やれること、やりたいことをきちんとやっていくことが大事になるような気がします。

坂本 私も、いつCDがリリースできなくなっても、悔いが残らないようにしたいと常々考えています。CDを出すときは、本当にいつも、「これが最後かな、これが私のクライマックスなのかな」という思いがよぎるんです。でも、ひとつの章の終わりは、次の章の幕開けかもしれないじゃないですか。そう思えるうちは、作品を作り続けていこうと思って、そういう意味での「序曲」なんです。それに、林檎さんのような同世代の素晴らしい才能を目の当たりにすると、「ここが自分のクライマックスかも。なかなかいい人生だったな」と考えている自分が、「アホか!」と思えてきて。「もっとがんばらないと。ここでは終われないでしょ!」という日々の葛藤の歌です。

── 過去を懐かしむより、ここから何かが始まると思っていたほうが、人生は楽しいですよね。

坂本 そうなんですよね、30代の終わりではなく40代の幕開けだと(笑)。今は、ひとつの終わりと始まりが交差するタイミングで、夜明けを待つような気持ちでいます。

── アレンジは、3曲目の「明日を知らない」と同じ、山本隆二さんです。

坂本 シングル「ハロー、ハロー」のカップリング曲「月の話」を作曲・編曲してくださったり、DREAMS COME TRUEのトリビュートアルバム「ドリウタ vol.1」で、私がカバーした「三日月」のアレンジをしてくださったりと、自分の中で山本さんブームが巻き起こっていたんです。それで今度は、私が作ったメロディをアレンジしていただいたら、どうなるかな、という気持ちでお願いしました。

── どんな曲に仕上がったと感じていますか?

坂本 ピアノ1本の質素な私の曲が、弦が入ったりして一気に広い世界になりました。歌詞を書いていて、たとえば「来光」というような大きな言葉が出てきたのは、山本さんのアレンジのおかげです。

── 「序曲」の弦は、ゆらいでいるような不思議な音を奏でていますよね。

坂本 それが山本さんの魅力のひとつです。不協和音になる手前ぎりぎりのラインを攻めてくる弦の響きやコーラスワークが、ソリッドで素敵なんです。弦のレコーディングを見ていて面白かったのが、山本さんがミュージシャンの方々に「ダークファンタジーみたいな雰囲気にしたい」とおっしゃっていたことでした。私自身は、この曲にまったくそういうイメージを持っていなかったので、「え、そうだったんだ!?」と(笑)。きっと山本さんは、割り切れない非日常感みたいなものを感じ取ってくださったんだと思います。

── ある意味、決意の曲と言っていいと思いますが、そこに不思議な揺らぎが入ってくるのが、「序曲」の魅力だと思います。そして、3曲目の「明日を知らない」は、the band apartのトリビュートアルバム「tribute to the band apart」に収録された曲の再録です。すごくやさしい世界観ですよね。

坂本 本当にいい曲だと思います。the band apartさんの20周年記念のトリビュート企画で、どれでも好きな曲をカバーしてくださいということだったので、「明日を知らない」をチョイスしました。「街の14景」というアルバムの中の1曲で、アルバム自体も好きなんですが、この曲はボーカルの荒井(岳史)さんのやさしい声とアコースティックギターの響きに、大きく包み込んでくれる父性を感じて、何度もリピートして聴いてしまうくらい好きなんです。アッパーで激しい曲が多い中で私がこれを選んだことは、ご本人たちにも意外だったみたいですけど。

── 歌ってみて、いかがでしたか?

坂本 想像以上に私の声や感覚にしっくりきました。私自身の中では原曲のイメージがすごく強かったんですけど、山本さんのアレンジで歌うと、私らしさが自然と出てきたんです。選曲やアレンジがうまくいくと、カバーってこんなに面白いんだと再発見できました。メンバーのみなさんも「曲を差し上げてもいいくらい、気に入りました」と喜んでくださったので、その言葉に甘えて、自分のCDにも入れさせていただきました。

── たしかに原曲を知らずに聴くと、the band apartが坂本さんのために書き下ろした曲かのように感じるかもしれません。歌詞については、どう解釈していますか? 個人的には、もしかして余命いくばくもない人の思いを歌っているのかも、と思ってしまったんですが。

坂本 どんな解釈も可能な、不思議な歌詞ですよね。でも、曲調のおかげで、ネガティブな気持ちにはならずに受け止めることができるんです。私は、お父さんが自分の息子か娘に語りかけているような印象を受けました。もしくは弟とか妹とかペットとか、自分よりも小さなものに対しての慈しみの気持ちなのかなと。

── 今回のシングルは、3曲とも大人を感じさせるものになったと思います。最後に今後の予定を教えていただけますか?

坂本 12月にライブツアーをおこないます。1年半ぶりになるのかな? それから、間もなく、新しいお知らせをお届けできると思います。お楽しみに。



坂本真綾プロフィール


1980年3月31日生まれ。東京都出身。
8歳より、子役としてCMソングや映画・海外ドラマの吹替えで活躍。1996年にTVアニメ「天空のエスカフローネ」の主人公・神崎ひとみ役に抜擢され、同作品のオープニングテーマ「約束はいらない」で、アーティストとしてデビューした。現在までに、29枚のシングルと9枚のアルバム、3枚のコンセプトアルバムほかをCDとしてリリースしている。
TVアニメ「BEM」では、“謎の女”役を担当。「私にも正体がわからない、まさしく謎の女で、不敵な笑いをずっと浮かべています」とのこと。


CDデータ

■TVアニメ「BEM」オープニングテーマ「宇宙の記憶」

1,400円(税別)

レーベル:FlyingDog/2019年7月24日発売


〈収録曲〉
01. 宇宙の記憶
02. 序曲
03. 明日を知らない
04. 宇宙の記憶 -Instrumental-
05. 序曲 -Instrumental-
06. 明日を知らない -Instrumental-


(取材・文/鈴木隆詩)

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放送日: 2019年7月14日~2019年10月13日   制作会社: LandQ Studios
(C) ADK-EM/BEM製作委員会

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