作曲家・羽岡佳 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第34回)

2019年07月14日 10:000

 

1990年代の香りを出した「かぐや様」


─愛用の楽器は? 


羽岡 ハードウェア・シンセサイザーは現在30台以上持っていますが、結構買ったり売ったりしていまして、「長年の相棒」いうのはありません。今一番触っているのは、YAMAHAの「CP300」です。いろんな意味で使いやすくて、このシリーズは、高校生の頃から20年以上使っています。


─どういったところが魅力なのでしょうか?


羽岡 タッチが弾きやすいのと、MIDIキーボードとしての機能がとてもよくできていること。あとは、スピーカーがついていることですね。多くのシンセはスピーカーがついていないんですけど、CP300はパソコンにつながなくても、単体で音を出せるのがいいんです。

─鍵盤楽器以外にも、いろいろお持ちなのですか?


羽岡 曲を作る時にあったほうがいいので、ギターとベース、それにアコギも持っています。以前は、マンドリンとかウクレレとかアコーディオンとか、その他にもいろいろ持っていたんですけど、あまり弾けないし、練習する時間もないので、手放しました。


─生楽器と打ち込みの使い分けは、どのようにしているのでしょうか? 


羽岡 作品によって、一番ふさわしいものを探している感じです。オーケストラにしても、バンド系にしても、生楽器系の音が作品に合いそうな場合は、打ち込みで生楽器の音色を再現することはあまりしないで、ミュージシャンの演奏をスタジオでレコーディングします。シンセサイザーが作品に合う場合は、ハードやソフトのシンセサイザーの中からふさわしいものを選んでいきます。MINI MOOGなど、魅力的な音が出るアナログやデジタルのシンセをたくさん所有しているので、そういったものも使ってみたりして、やっぱり現在の劇伴にはソフトシンセのほうが質感が合うなとか、いろいろ試しながら作っています。

「かぐや様」では1990年代の香りを出したくて、「KORG KRONOS」を多用しました。90年代当時のシンセも試してみたのですが、質感が微妙に古すぎて、2019年のアニメには合わない感じがしたので、最新機種でありながら90年代の音色も作ることができるKORG KRONOSを選びました。


─監督からその辺りのオーダーもあったりしますか?


羽岡 どの楽器や曲を生楽器で収録するかについては基本お任せのことが多いですが、「オーケストラっぽく」、「ロックっぽく」など、ジャンルや曲調のオーダーをいただくことはあるので、そのオーダーを参考に考えます。「かぐや様」では畠山監督から、「リズムボックスを使いたい」というリクエストをいただいたので、1970年代のリズムボックス、「Roland TR-66」を使いました。


─過去のインタビューによりますと、打ち込みで作った音は、AURORA AUDIOのマイクプリアンプ「GTP8」に通して、レコーディング・エンジニアに渡しておられるとか。


羽岡 今はもうやっていません。打ち込みはいつも試行錯誤していまして、その時々によっていろんなことをやっています。現在は、ハイクオリティな電源ケーブルや電源タップを使うことが重要だなと感じています。録音機材やシンセサイザーなどに、アコースティックリバイブなどの信頼できるケーブルを接続しています。それによって、スピーカーの音が格段に聴きやすくなってスケール感が大きくなるので、以前よりもだいぶスムーズに作曲できるようになりました。


─演奏者の選定方法は?


羽岡 ミュージシャンについても、毎回、どんな方がその作品に合うか考えてお願いしています。今回の作品にぴったりだと思う方がいれば、指名でお願いすることもありますが、基本的にはミュージシャン・コーディネーターの方に選んでいただくことが多いです。コーディネーターの方は、作品にふさわしい演奏家を呼んでくださるので安心です。


─鍵盤楽器は、ご自身で演奏されるのですか?


羽岡 自分では弾かないです。僕はそんなにいい演奏ができないので、うまい方に演奏していただきたいと思っています。


─よくお願いされるスタジオ・ミュージシャンは?


羽岡 安全地帯のサポート等もやっておられる松田真人さんには、何十回も弾いていただいています。譜読みがすごく早くて、クラシックベースでありながら、ジャズもポップスも演奏されるので、とても信頼しています。


─スタジオ選びについてはいかがでしょうか?


羽岡 今までにいろんなスタジオを使わせていただきましたが、スタジオによって部屋の響きが違うので、同じ演奏者でも違う音になりますし、機材もスタジオによって違います。東京にはよいスタジオがたくさんありますので、こちらも作品によって適切なスタジオを選ぶようにしています。

 

自然に触れ、自分を整える


─そのほかに、羽岡さんのお仕事のこだわりは?


羽岡 いきなり作曲するのではなくて、自分を整えてから作曲をする、というのはとても大切だと思っていて、いつもいろいろ試しています。ここ数年は、できるだけ自然に触れるようにしています。近くに自然の多い公園があるので、朝そこで木が多い中を少し歩いて、鳥や虫の声を聴き、木や土の香り、太陽の暖かさに触れると、充電完了します。


─ご趣味は? 2015年時点は、断捨離(だんしゃり)がマイブームだったとか。


羽岡 この時に徹底的にやりまして、機材や身の回りのものは、何もなくなりました。楽器の処分もその一環で、その時は「もうコンピューターだけでいいや!」とさえ思っていました。でもその後、またものすごく買ってしまいまして……(苦笑)。なので、断捨離はマイブームとは言えなくなりました。


─では現在は?


羽岡 最近はちょっとでも時間があったら、普段以上に、大自然に触れに行くようにしていますね。旅行に行ければ行きますし、泊まりで行けなくても、車で近くの山や滝に行ったりして、パワーチャージしています。


─自然をテーマにした作曲家もおられますよね。


羽岡 大学時代の作曲の恩師である綿村松輝先生は、僕が在学当時、「借景(しゃっけい)の音」というコンセプトで現代音楽を作曲されていました。借景はもともと、周囲の自然を取り入れて庭を作る造園技法なんですけど、綿村先生は音楽でもそれをやろうとされていた方で、僕もその影響を受けているかもしれません。関連があるかわかりませんが、最近は、大自然に触れて感動した状態を保ちながらそれを反映させていく感じで、作品を作っていきたいと思っています。

 

画像一覧

  • 羽岡佳さん

関連作品

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~

放送日: 2019年1月12日~2019年3月30日   制作会社: A-1 Pictures
キャスト: 古賀葵、古川慎、小原好美、鈴木崚汰、花守ゆみり、八代拓、鈴代紗弓、子安武人、麻倉もも、青山穣
(C) 赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

この音とまれ!

この音とまれ!

放送日: 2019年4月6日~2019年6月29日   制作会社: プラチナビジョン
キャスト: 内田雄馬、榎木淳弥、種﨑敦美、細谷佳正、石谷春貴、古川慎、井口祐一、松本沙羅、浪川大輔、蒼井翔太
(C) アミュー/集英社・この音とまれ!製作委員会

ぱにぽにだっしゅ!

ぱにぽにだっしゅ!

放送日: 2005年7月3日~2005年12月25日   制作会社: ガンジス/シャフト
キャスト: 斎藤千和、山﨑バニラ、折笠富美子、ゆきのさつき、植田佳奈、堀江由衣、野中藍、阪田佳代、大原さやか、櫻井孝宏、石毛佐和、中世明日香、花輪英司、樋口智恵子、広橋涼、日笠山亜美、大竹宏、神谷浩史、沢城みゆき、門脇舞以、松来未祐、生天目仁美、新谷良子、麦人、杉田智和
(C) 氷川へきる/スクウェアエニックス・ぱにぽに製作委員会

ネギま!?

ネギま!?

放送日: 2006年10月4日~2007年3月28日   制作会社: ガンジス/シャフト
キャスト: 佐藤利奈、白鳥由里、木村まどか、笹川亜矢奈、桑谷夏子、山川琴美、浅倉杏美、伊藤静、神田朱未、板東愛、渡辺明乃、出口茉美、Hazuki、野中藍、石毛佐和、小林ゆう、堀江由衣、大前茜、佐久間未帆、高本めぐみ、白石涼子、小芭美、こやまきみこ、狩野茉莉、門脇舞以、志村由美、松岡由貴、能登麻美子、相沢舞、皆川純子、井上直美、いのくちゆか、矢部雅史
(C) 赤松健・講談社/関東魔法協会・テレビ東京

憑物語

憑物語

放送日: 2014年12月31日~2014年12月31日   制作会社: シャフト
キャスト: 神谷浩史、早見沙織
(C) 西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

終物語

終物語

放送日: 2015年10月3日~2015年12月19日   制作会社: シャフト
キャスト: 神谷浩史、水橋かおり、井上麻里奈、斎藤千和、堀江由衣、沢城みゆき、花澤香菜、坂本真綾、早見沙織、ゆきのさつき
(C) 西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

続・終物語

続・終物語

放送日: 2019年5月18日~2019年6月22日   制作会社: シャフト
キャスト: 神谷浩史、斎藤千和、加藤英美里、沢城みゆき、花澤香菜、堀江由衣、喜多村英梨、井口裕香、早見沙織、井上麻里奈
(C) 西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

魔探偵ロキ RAGNAROK

魔探偵ロキ RAGNAROK

放送日: 2003年4月5日~2003年9月26日   制作会社: スタジオディーン
キャスト: 渕崎ゆり子、堀江由衣、三木眞一郎、森久保祥太郎、小松里歌、朴璐美
(C) 2003 木下さくら・マックガーデン/魔探偵ロキRAGNAROK製作委員会

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事