1990年代のOVAブームを盛り上げた隠れた名作「機神兵団」! スペシャルイベント開催記念、石山タカ明監督インタビュー

2019年06月03日 18:380
1990年代のOVAブームを盛り上げた隠れた名作「機神兵団」! スペシャルイベント開催記念、石山タカ明監督インタビュー

1990年代はOVA(オリジナルビデオアニメーション)全盛期。その中で、特に勢いがあったのは、パイオニアLDCからリリースされる作品群だった。

「天地無用! 魎皇鬼」「モルダイバー」「幽幻怪社」「グリーンレジェンド乱」――TVアニメでは表現できないエッジなビジュアルや、ストーリー、キャラクター表現などで、一世を風靡したパイオニアLDCのOVA作品。その中でも、とりわけ異彩を放っていたのが「機神兵団」という作品だ。

 

第2次世界大戦前夜。謎の敵・エイリアンによってもたらされた技術をもとに、列強各国は巨大ロボット兵器「機神」の開発に成功。米、英、仏、日の連合組織「機神兵団」、ナチスドイツ、関東軍、そしてエイリアンといったさまざまな組織が、謎の装置「モジュール」を巡って死闘を繰り広げるという本作は、SF、サスペンス、アクション、ロボットものといった数多くのフックが存在する、名作アニメだ。

オリジナルビデオ作品として破格のスケールで製作された本作は、1993年のプレミアム試写会においても絶賛され、世のロボットアニメファンの熱烈な支持を受けながらも、その後は隠れた名作として忘れ去られようとしていた不遇の作品でもある。

そこで、「機神兵団」再評価の機運を高めるべく、6月8日、9日に全話一挙上映&スタッフによるトークショーが開催されることが決定した。

 

今回、イベントの開催を記念して、本作の石山タカ明監督にインタビューを敢行。改めて、「機神兵団」という作品で何を描こうとしたのか。そしてOVAが熱かったあの時代を振り返っていただいた。

 



いきなり絵コンテから描き始めました

――改めて「機神兵団」制作に至るまでの経緯を教えてください。

 

石山タカ明(以下、石山) 私の悪友から、「面白そうな作品があるんだけどやらない?」という話が来たのが最初です。とはいえ、もともと原作者である山田正紀先生の作品なので、あまり逸脱することはできないだろうなと思っていたら、当時のパイオニアLDCのプロデューサーである真木太郎さんと担当プロデューサーが「好きにやってください」っておっしゃってくださったので、本当に好きにやったらこういう作品に化けました。

もともと「機神兵団」では「まんが映画」「冒険活劇」をやりたかったんです。僕が1960年代生まれで、幼少期がちょうどアニメがドーン!って出てきた時代です。それこそいろいろなキャラクターが活躍する作品が多かったし、今とは違うジャンルもいろいろあったと思います。少女ものからロボットもの、アクションもの、忍者もの、ファミリーもの、いろんなアニメがありました。

そういう時代を経てきた自分としては、もっともっと暴れられるアニメをやりたいと思っていた時に出会った作品が「機神兵団」でした。第二次大戦中の話で、ロボットが3体出てきて、かっこいいお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいな見た目の人が出てくる。さらに列車も出てきて、とってもかっこいいぞ、と。

かといって、戦争の生々しさを描く方向性じゃなくて、エイリアンが出てきたり、モジュールという謎のアイテムが出てきたりとストーリーも奇想天外! こんなおいしい話はないですよね。

この原作をもとに、好きにふくらませていいということなので、原作を読んで要素を抽出して、担当プロデューサーに提案したところ、何か言われると思ってたら「大丈夫です」と。

 

――今だから話せる制作秘話などありますか?

 

石山 「機神兵団」は、まず原作の本を読んで、ブレーンの人とどんなアニメにしようかと話をしたうえで、いきなり絵コンテから描き始めました。最初、脚本はまったくありませんでした。

 

――えっ! それは第1話のお話ですか?

 

石山 いや、脚本ナシで最終話(第7話)まで絵コンテを描きました。パイオニアLDCには、プロットとハコ書きだけは提出する必要があったので、それは用意したんですが、あとはいきなり絵コンテでした。当時も今も、そういう作り方をしている作品はほかにあまりなかったと思います。今も必ずシナリオありきのようですね。

 

 

――キャラデザイン、メカデザインはその時点では固まっていたのでしょうか?

 

石山 それは別ルートで同時に走っていて、「だいたいこんな感じで」「これはでっかいロボットなんだ」って(メカデザインの)山崎健志氏には伝えて、(キャラクターデザインの)ゴトウマサユキ氏には「とにかくシンプルで、特徴ある、動きやすいデザインにしてほしい」と伝えていました。

 

――失礼ですが、現場のスタッフは困惑されたのでは……?

 

石山 どうなんですかね。混乱はしていたかもしれませんが、楽しそうでもありましたよ。その時の楽しい雰囲気は、この写真を見ていただけると……。(と、石山監督が撮影した、当時のスタジオの写真を見せてくれる)穏やかな現場でしたね。

あと、個人的には物語を俯瞰で見るために、「もし全52話だったらどういうシリーズ構成なんだろう」って全話のエピソードも考えていました。OVAの1話から3話が、そのままの最初のエピソードにあたり、20数話挟んでOVA4、5話のエピソードが描かれて、最後にOVA6話、7話で最終回。本来は各エピソードの間にも、何かストーリーがあっただろうという物語を、考えてはいました。


誰も作ってくれないから、自分で作った――ただそれだけ

――先ほど、監督が目指したとおっしゃった通り、本作を見て感じたことが、正しく正統派の少年冒険活劇をやろうとしているということでした。

 

石山 自分が映像の世界に入るきっかけになった作品が白黒の「鉄人28号」、「ガッチャマン」、そして「仮面ライダー」の最初の1クール。この3本です。なんかかっこよかったんですよね。「鉄人28号」はリモコンでロボットが動く! 「ガッチャマン」は、「歩くなら走らせろ。走らせるなら飛ばせ」という鳥海永行さんの演出手腕に惚れたし、「仮面ライダー」の1クールは、子ども向け番組なのに完全に大人向けの怪奇もののノリといっても過言ではないじゃないですか。小学生だった自分は、とても面白いと思ったんです。そのうえで、特にワクワクするものを感じたアニメーションをやりたくなったんです。

そんな想いの流れの中、「鉄人28号」あり、「ガッチャマン」あり、「仮面ライダー」ありの作品が、「機神兵団」だと思っていただけると、作品のルーツを紐解きやすいんじゃないかと思います。

 

 

――物語の中心にいるのは、アニメオリジナルキャラクターの鷹村大志やエバ、マリアたちでした。

 

石山 そのキャスティングについては、もう職権乱用ですね(笑)。本作の役者さんって、「機神兵団」前にやっていた「カルラ舞う!」からの流れなんです。「カルラ」の時、鶴ひろみさんと山本百合子さんが双子の役で出演されていたんですが、「カルラ」のシリーズの中で、鶴さん演じるキャラクターが、敵のお姉さんの印象とダブっているという設定でしたので、こちらの役も鶴さんにお願いしました。そこから、マリア、エバの双子の姉妹を鶴さんにお願いしました。逆に山本百合子さんは、「悪役を演じてみたい」とおっしゃっていたので、そこで生まれたのが、藤島芳子です。あとは塩沢兼人さん、屋良有作さんにも出ていただいて。

主人公の大志を演じたのは藤田淑子さんですね。藤田さんの少年役というと「遊星少年パピィ」など。このキャスティングで、王道路線が決まりました。

若いところだと、デビュー間もないの三石琴乃さんがいらっしゃいました。「セーラームーン」であんなかわいい演技をしてらっしゃったのに、フェイっていうおデブな男の子を、とてもかわいく演じてくださいました。

あとは前日譚を描くドラマCD「機神兵団ゼロ」では、大志のお父さん役に「エイトマン」の高山栄さんにも出演していただきました。

当時、パイオニアLDCのOVAは、そういった希望を通してくださいました。

 

――本作の魅力のひとつが、重量感を感じるロボットの描写だと思います。

 

石山 男の子の夢って、やっぱり大きな物を動かすというものがあると思うんです。ただ、大きな物を実際に動かそうと思ったら、それなりに時間がかかるんです。そういう醍醐味を表現するために、雷神が出撃するシーンも、じっくり見せるようにしました。そのルーツは何かというと、やっぱり「未来少年コナン」のギガントですよね。「あれだけの巨大なものが飛ぶんだったら時間がかかるだろう」といった宮崎駿さんのコメントを見たことがありました。確かにそう思いますし、それは、やはり見たいころでした。

 

――そのほか毎回、非常にていねいに出撃シーンが描かれていました。

 

石山 そう思っていただけるのはすごく嬉しいことで、「やっぱりこうだよね」っていうポイントがあると思います。TVアニメでも映画でも、そういうシーンがないと私は嫌ですね。だって見たいでしょ? ただそれだけです。誰も作ってくれないから、自分で作った。ただそれだけです。

 

アニメーションに魂を込めていく行為

――重厚なロボ描写は、やはり監督の好みなんですか?

 

石山 それもありますが、実は「機神兵団」の重量感って、自分のデビュー作「ゴールドライタン」の巨大感を参考にしています。この時の自分の師匠である真下耕一さんが「巨大なものは絶対に上から撮っちゃダメだ、あおりで撮れ」「小さいライタンの時は上から撮れ」とおっしゃってて、それを守っただけです。そして、特に見せたいところは、カメラや気持ち、意識を寄っていけばいいんです。新人の頃、真下さんからは「お前はこのカットで何を見せたいんだ」ってよく言われていました。

第1話冒頭の雷神が登場するシーン。これもゴールドライタンの登場の仕方と同じです。足がずーんと出てきて、本体が出てくる。これが定番だろうと。そしてメインタイトルが起きあがるところは、まさに「鉄人28号」です。

 

 

――火炎放射シーンの腕が回転するところとか、風神の腕が90度回転して弾頭が出てくるところとか最高です。1つひとつのアクションに理由付けがあるのがいいんですよね。

 

石山 こうなったらひょっとして動くんじゃないか、っていうところですね。それがリアリティだと思うんだけど、実際にはどうなるかわからないけれど、見せるならダイナミックに見せよう、ということです。そうすることで本物っぽくなる。そういうもんだと思わせられるかどうかなんですよね。山﨑氏のなせる技ですね。

 

──個人的には、スイッチがたくさんあるコクピットの描写も圧巻でした。

 

石山 とにかく動作のたびにスイッチを押す描写が欲しいですね。雷神の砲塔を動かす時も、手をぐるぐる回して一見せわしないけど、でも操作をがんばってる感じが、ワンタッチじゃないからこそかっこいい。その感覚って、セル時代のアニメの撮影代と一緒なんです

 

──枚数が増えると単純に作業が増えるし、時間、コストもかかる。そういったものが、そのままフィルムの熱量、リアリティに反映されていくわけですね。

 

石山 枚数が増えると面倒くさいし、セルの引きなんかも3枚重ねが限界だったり。でも、そういう雰囲気はありますね。それは理屈じゃなくて、アニメに魂を込めていく行為。まさにアニマです。アニメーションの語源ですね。

 

 

──メカ、ミリタリー描写だけでなく、ストーリーやサスペンス要素も本作の魅力です。

 

石山 やはりルーツには「鉄人28号」的なものがあったんだと思います。『機神兵団』少年探偵団に巻き込まれて仲間になったものの、かつての仲間からは裏切者扱いされたり。キャラクターそれぞれにドラマありです。そういう展開って見たいじゃないですか。

1話冒頭、雷神がエイリアンと戦うシーンだけで7~8分あるんですが、あそこで本作の世界観はほぼ説明できていると思います。それから数か月後、助けられた大志君が元気に生きていて、仲間がいる。この構成って元は「グーニーズ」なんですよ。「グーニーズ」のオープニングって冒頭でみんなの個性の紹介するのですが、それをやってみたかった。

 

――本作はロボットアニメの教科書のようなアニメだと思いましたし、監督の見てきたもの、学んできたことをここでいったん総決算した感もありますね。

 

石山 そう言っていただけるとありがたいです。かゆいところに手が届くでしょ。

 

──もしかしたら今のアニメしか見ていない若い子も、「機神兵団」を見たら、ここまで好きなものを突き詰めて作品つくりができた90年代OVAの空気を感じることができるかもしれないですね。

 

石山 うん。そうなってくれると嬉しいです。

 

 

現場が元気であれば、どんどん面白いものが生まれる

――制作が終わった時の感想は?

 

石山 やらせてもらえてよかったと思いましたね。いろいろな問題が起きて、途中制作を中断せざるを得なかった。その時の監督の責任は大きいですよ。結果的に制作会社も変わってしまいましたが、なんだかんだいって最後まで走らせてもらえたのは嬉しいことでした。スタッフも継続できる方は継続してもらえることになりました。真木さん、担当プロデューサーには非常にご尽力いただきました。

 

――当時の反響は?

 

石山 わからないですね。まだインターネットとかありませんでしたし。

 

――今回のトークイベントまでファンイベントもあまりなかったということで、6月8日に初めてファンの反応がわかると。

 

石山 やっと成仏できるって言うのはそういうところですね。だからとても楽しみです。

 

「機神兵団」実写予告映像に登場した、モジュールのプロップ

 

──この頃のアニメには、どういう印象がありますか?

 

石山 一番アニメが熱かった時代ですね。この作品はパイオニアLDC作品ですけど、その前は東芝映像ソフトさんで「カルラ舞う!」を作らせていただいていました。同時期に「おたくのビデオ」で庵野秀明さんたちが若いころにがんばっていたことを描いたアニメも作られてたのですが、そういうことをアニメ化できること自体も面白いですよね。

現場が元気であれば、どんどん面白いものが生まれると思いますよ。だってみんなアニメが好きでこの業界に入ってくるんだから。

 

──まさしく「機神兵団」という作品は、各クリエイターが自由に想像力を働かせて作っている印象です。

 

石山 こちらからも、むちゃくちゃな注文をした記憶はありません。何か表現したくて業界に入ってきたのですから、それをやってもらったほうがいい。僕自身は、「自分のやりたいことはこれ。これさえ守ってくれればそれでいい」という感じです。自分は作画出身じゃないから、自分が思ってる以上の作画ができればそれでいいやって。

 

──こういう尖った作品が作れたのは、クリエイターとして幸せなことではないでしょうか?

 

石山 そうですね。だけどその実感を抱いたのは、後になってからです。当時は好きなことができる!ってだけでした。でも本来の監督の仕事って、どのようにしてスタッフも観客も製作会社も幸せにするかを考えることだと、私は思います。それを知るのは、「機神兵団」が終わってから何年も後のことでしたね。今は縁あった方々に感謝しかありません。

 

──いろいろな意味で、監督にとって思い出の作品ですね。

 

石山 そうですね。関係者の何人かはもう亡くなっていますからね。26年って長いですよ。もう四半世紀前ですからね。

 

「機神兵団」の撮影で使用された、当時品のカメラ



【イベント情報】

■「機神兵団」スペシャル

・開催日:6月8日(土)&9日(日)

・会場:シネマノヴェチェント

 〒220-0051 横浜市西区中央2-1-8 岩崎ビル2F

・タイムテーブル

6月8日(土)

13時~「機神兵団」上映

16時50分~休憩

17時~トークショー ゲスト:山田正紀、山崎健志

18時20分~サイン会(おひとり1点)

19時頃終演予定

終演後、ゲストを囲んでの懇親会あり(要別途会費)、懇親会中撮影会あり

 

6月9日(日)

13時~「機神兵団」上映

16時50分~休憩

17時~トークショー ゲスト:石山タカ明監督 MC:ロボ石丸

18時20分~サイン会(おひとり1点)

19時頃終演予定

終演後、ゲストを囲んでの懇親会あり(要別途会費)、懇親会中撮影会あり

・入場料(両日共):前売4,000円 当日4,500円 懇親会費4,000円

※詳細はこちらから

http://cinema1900.wixsite.com/home/6-22-23

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