各スタッフのプラスアルファが集まってできあがった――「ゾンビランドサガ」Blu-ray第3巻発売記念、第9話~最終話振り返りスタッフ座談会!

2019年05月10日 20:100

第12話「グッドモーニング アゲイン SAGA」


ーーいよいよ最終話ですね。

 

竹中 前話回想がない!

 

ーーここに来て急にダイジェスト?って思いました。

 

 外画ドラマのアバンみたいにしたんです。

竹中 12話は、脚本にはないところだと、サキが鏡を割るところですね。

 あそこは演出の清水(久敏)さんがやってくれました。脚本ではもう少し時間軸があって、アルピノライブで稽古している中で、だんだん鏡にヒビが入っていって、「やっぱり持っとらん」みたいな感じにしてたんだけど、一発であそこまでの展開に持っていったのは清水さんの力かなと。

竹中 テンポも流れもすごくよくなりましたしね。

 サキのキャラもすごくよく出てて。

村越 あれは本当に見事でびっくりしました。この手があったか!と。あとで清水さんとお話したときに、「すいません」と謝られてしまって。勝手にシーンを入れてということだったんですけど、とんでもないです!すごくよかったです!とお伝えました。

 

 

ーーそれはもう脚本から読み取って、やっているんですよね?

 

村越 この作品では、全体的にすごくそれを感じていました。シナリオから「こういうことがやりたいのね」と狙いを読み取っていただいたうえで、さらにプラスのアイデアを監督や演出のみなさんがどんどん加えてくださって。

竹中 尺の都合もあったかもしれないけどね。

村越 それもプラスにしてくれるんですよ。決してしょうがないから切ろうだけではなくて、「切った」プラス「アイデア」があるんです。それが本当に素晴らしかった。

 ただカロリーを抑えようとするだけではなくてね、ちゃんと面白くなるように演出するというのを、みんなが大事にしてくれたのですごくよかったです。

 

ーーあの名シーンはそうやって生まれたんですね。ここは、さくらが一応アイドルに戻ろうって思い始めてるところですよね。

 

 そうですね。鏡のシーンの前にゆうぎりに説得されて、記憶は戻らないけど、やってみようかっていう段階です。

村越 まだ少し不安があるところですね。

竹中 これまでさくらが何かしらで引っ張ってきたから、今度は逆でっていうところだったんですよね。

 

 

ーーさらにさかのぼりますけど、その直前の山田たえちゃんも、いい味を出していましたよね。

 

竹中 三石琴乃さんが素晴らしかったんですよ。たえ、かわいいんですよね!

村越 活躍させることができましたね。

竹中 12話は、尺がないと言ってるのに、全員が横並びで長回しでさくらを説得しようとしてるのに「そういうのいいんで」って、バンと切るっていう。

 全然届いてない(笑)。

村越 あそこはシナリオ段階で意図的に長くしたんです。普通のアイドルものなら絶対にここで解決するであろう流れをつくって、そうしないのがこの作品らしさだと思います。

竹中 そして最後は暴力でしょ。めちゃくちゃですよね(笑)。

 でも、そのあとのゆうぎり姉さんの言葉もよかったじゃないですか。さくら抜きで成功するくらいなら、さくらと一緒に失敗するほうがいいっていうセリフも、すごくいいなと思いました。そこから愛の「私は失敗したり後悔したりすることを、全然ダメだと思わない」という言葉に繋がる。

竹中 そして、そこから爆弾低気圧の絵に。

 

 

ーーあの衛星からのカット、やたらとカッコよかったんですけど(笑)。

 

竹中 あれはシナリオに入ってたよね!

村越 決定稿間際に僕がいきなり「宇宙から見た地球」というのを入れ込んだら、境さんが「これは一体何?」と。

 いや、急に宇宙から視点になってて、めちゃめちゃ面白いなと思って。

竹中 佐賀の話なのに、スケールがでけーなって思った(笑)。

村越 どうやって爆弾低気圧を見せようかと迷ったんですよ。考えているうちに、もう上から見るのが一番いいのではないかと(笑)。監督に許していただいてホッとしました。

竹中 で、乾くんのシーンでしたね。

 

ーー巽幸太郎の過去シーンは驚きでした。

 

竹中 あそこは作り手としては議論があったんです。乾くんというセリフを残すか残さないかの議論。何度か外したり入れたりした結果、入れたんですよね。

境 僕はずっと入れたほうがいいと思っていたんですけどね。見ている人をかき回すけど。

 

 

ーー考察する理由にもなるし、さくらが幸太郎と昔会っていたことに気づかない理由にもなるかなと思いました。

 

竹中 情報としては入れたいんだけど、乾くんという名前が唐突すぎて、逆に不必要なんじゃないかって思ったんです。

村越 混乱させてしまうかもという懸念がでてきて。

 絵面的には同一人物だということは絶対にわかるから、大丈夫だと思ってましたけどね。

村越 それとここで名前を伏せると、「何で記憶が戻ったさくらが(会っていたことに)気付かないの?」という疑問が残ってしまうんですよね。

竹中 あと、そのシーンは劇伴も結構苦戦してましたよね?

 選曲の茅原万起子さんが、前日に何パターンか上げてくれてたんです。あの転調がすごく気持ちいいなと思って。

竹中 乾くんのところからの転調ですよね? タイミングがすごくよかったですよね。

 サキが鏡を割ったところから熱い曲を流してて、熱血青春ドラマの集大成のようなシーンになったかなと思ってたんです。なので、そのまま熱くAパートを締めくくったほうがいいのかなとも思っていて、実際にそのパターンもいただいてたんです。ただ、それだとやっぱり乾くんのシーンが死んでしまう。勢いのまま行くと「何だったの?」ってことになりそうだったんですよね。そこで、たまたま同じ曲の別アレンジがあったから、これを繋げて作ってくれたら、それが素晴らしくて。感傷的なところも表現できたと思います。

 

 

ーーそして後半はほぼライブシーンでしたね。「ヨミガエレ」は本当にさくらのための曲、みたいな感じがありました。

 

竹中 でも、「ヨミガエレ」自体は2話でちょっと流れてるんですよね。

 だから曲的には、ゾンビとして生き返ったメンバーに向けて幸太郎が作ったんだろうなって思うんだけど、結局その時は歌えず。

竹中 描写はされてないけど、たぶんどこかのライブでは歌ってたのかもしれません。ただ、絵的にはここで初出しになります。

 

 

ーーそして最後のライブでは、またステージが崩れるんだって思いました。

 

竹中 どういうものが障害になるのかを話してたんです。雪が降ったら、それでお客さんが来ないとか思うのかなって。だったらそれはなしにしようと。

村越 もう少し最初はおとなしい印象だったんです。そこで大塚さんから、もっとやっちゃっていいんじゃないかという意見が出て。もっと持ってない部分を出していいし、勢いがあったほうがいいんじゃないかと言われて、確かにそのほうが面白いと、ステージを崩すことが決まったんです。

竹中 なんか響きから決めた気もします。「アルピノ崩壊」ってしきりに言ってた気がするんですよ。そのテンションで決めた気がする。

 僕はそれを聞きながら「どうすんのそれ?」と思って、シーンとしてたと思う(笑)。お話的には盛り上がるし勢いが出るし、ゾンビっぽいとは思ってたけど「それを絵にするんだよね?」っていうことで、どういう絵面になるのかは自分でコンテを描くまでわからなくて……。

村越 嬉々として文字に書いて、「あとはコンテでお願いします!」と投げる感じでしたからね(笑)。

竹中 シナリオを作るときは、7話と同じにはならないようにしようという話はしてて、そこの調整はしてました。

 7話がオンエアされた時、視聴者の皆さんもすごく盛り上がってくれて、それは理想通りだったんですけど、12話はこれ以上に盛り上がらないとダメだよなっていうプレッシャーを感じていました。

 

 

ーーここでは、さくらの叫びがすごくよかったです。

 

 廃墟の中でゾンビが立ち上がったらカッコいいんじゃないかなっていうところだったんですけど。

 

ーーそれがイベントでも再現されたことも合わせて、よかったと思います。

 

竹中 でもプロデューサーとしては、最終的に作ることを全うしないといけない立場でもあるから、一度監督に「もうちょっと演出を削ったほうがいいんじゃないか」って話をしたんですよ。

 CGとかカットを減らしたほうが、って言ってましたね。

竹中 これ本当に作れるの?って話をしたら、監督が「これは行かないとダメだ!」と言ってて。

 7話のプレッシャーがあったから、僕は攻めないとダメな気がしてたんですよ。言ってることはわかるし、その中でも差し込んだカットはあるけど。

竹中 手拍子で回想にするところですね。

 ああいうところはCGのモーションをやめて編集でっていう。それもサキの鏡を割るところと同じで、カロリーをコントロールすることも作り手としては大事で、ちゃんと完成させることを目標にやっていかないといけないんだけど、それをやる代わりに、より面白くしなければいけないという思いがあったので、竹中さんにそれを言われたときも、カットを差し込んだほうが、より面白くなるから、やろうと思ったんです。

竹中 それでも不安だったけどね(笑)。ただ、さくらの表情のアップで歌ってる姿とか、CG班がすごくがんばってくれてたんですよ。

 

ーーあそこの表情も豊かなんですよね。

 

 CGでいったん上げてもらったものに深川さんの修正を乗せて、それをまたCG班にバックして、雰囲気を見ながら合わせてもらったり、いろいろなやり取りをしていたので、深川さんもCG班もすごくがんばってくれてたんです。

竹中 僕は全体的にもう少しカロリーを削っておいたほうがいいと思っていたけど、監督がやるって言うし、現場もそれに応えて一生懸命作ってくれてたから、見たあとに削らないでよかったなと思いました。ただ、本当にギリギリでしたよね。特にCGは後半ずっとだから、すごく大変だったと思うけど、本当によくやってくれました。

 

ーー「FLAGをはためかせろ」もよく動いてましたからね。

 

竹中 本当にギリギリまでやってくれてました。

 12話のオンエアはスタッフ・キャスト含めて、打ち上げの時に一緒に見たんですけど、この前できたばかりだよなって思いながら見てました(笑)。

竹中 あははは。でもあのスピード感はよかったですよね。みんなで打ち上げをして見るって、僕も初めての経験だったし。

 あれは面白かった。

竹中 熱量をみんなで感じられるんだと思って。初めて見てる人を見るみたいな感じで、キャストさんを見ながらどういう気持ちかなぁ?って感じでした。

 僕らは内容を知ってるから、みんなの反応を見ちゃうんだよね。僕らの前にキャストが座ってたから、「宮野さんが涙ぬぐってる!」って思いながら見てました。

 

ーーそして最後は、さくらの「おっはようございまーす」で終わるという。

 

竹中 それはもう最初から決まってましたね。サブタイも最初に決まってたから。

 

 

ーー幸太郎がずっと「おっはようございます」って言っていたのが生きましたね。

 

 それがちゃんと根付いているという。

竹中 テレビ欄にサブタイは書いてあるから、結論はわかってるけど、まぁいいかっていう。

 予告の段階で結末は読まれるんじゃないかっていうのはあったけど。

竹中 もうそれで大丈夫だろうみたいなね(笑)。

 

 

ーーそして、最後の最後はサガジンの編集がメンバーの謎に気づくところで終わりました。お話としては、あの歓声のまま終わってもいいんじゃないかなと思ったんですが……。

 

 ホントはそうなんですけどね。

竹中 でもそれも最初からあったよね。

 (シナリオ会議)1周目からあった。

竹中 ただ、この結末でよかったと思います。ゾンビものだし。

村越 区切りをつけるよりも、これからも苦難は続くのかなと思わせて終わったほうがいいということで。

竹中 まぁ、そこが「ゾンビランドサガ」らしさかなと思います。そのまま終わるとらしくないので。

 

ーーそうですね。というわけで、長時間のインタビューお疲れ様でした。最後に、ファンの皆さんへのメッセージをいただければと思います。

 

村越 この作品は「佐賀に行ったら、フランシュシュがほんとうにいるかも」と思っていただけるものにしたかったんです。小さい頃、でっかい雲を見ると「あの雲の向こうにラピュタがある」って言って騒いでたじゃないですか。ああいう感じで、「もしかしたらあそこに行けばいるかもしれない」と想像してもらえたらと思っていました。少しでもそう感じていただけていたら嬉しいです。あとは方言監修の藤野さんが素晴らしかったんです。いていただいたおかげで「どがんす」が「どやんす」になったりと、台詞にちゃんとした地元の色を出すことができました。皆さんに方言の魅力を感じていただくくとともに、あらためて藤野さんにもここで感謝を伝えられたらと思います。

竹中 僕も単純に関係者に、最後まで付き合ってくれて本当にありがとうと伝えたいです。演出さん、キャストさん込みで、思いを込めて最後までやってくれた結果、これだけお客さんに届いたのかなと思っているので。あとは佐賀の方がこの作品を受け入れてくれてるというのが放送後も伝わってくるので、それが本当に嬉しいです。佐賀から世界に広がっていってくれると、作った意味があったかなと。一生のうちに一度でいいので佐賀に足を運んでくれたら嬉しいです。

 スタッフ・キャスト含めてみんなが熱量高く作品を作ってくれたので、そこで勢いが増したと思います。みんな遊び心を持ちながら、プロとしての技も出しながら、持っているものを全部出してくれたなって気持ちでいたので、それがうまく作品の中で化学反応として作用したのかなと思います。あとは見てくれた方がすごく熱く見てくれて、僕らが思ってもいなかったようなことまで展開を作ってくれてたりしたので、そうやって入り込んでくれたことも嬉しいです。村越さんも言っていたけど、どこかにいるみたいな感じで、キャラクターに入り込んでフランシュシュというアイドルを応援してくれたので、ものすごく嬉しかったし、ライブでそれを見たときも疑似体験で実際に見ているような感覚になれて、なかなかない経験をさせてもらいました。

ちょっとしたアイデアや作業が、作品の面白さに作用していって、それがしっかり視聴者に届いたというのが、作っている最中からわかったので、もともと面白いものを作っていこうというモチベーションは持っていたけど、見てくれる人の熱量でそれが加速していった感じがします。すごく幸せな作品だったので、まだまだいろんな人に、その熱を広めていってもらいたいですね。

 


(取材・文/塚越淳一)

【イベント情報9
■『ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう!~in SAGA』
最終話の舞台佐賀県唐津市「ふるさと会館アルピノ」で凱旋LIVE開催決定!

・日時:2019年7月27日(土)
   開場14:00/開演15:00
・会場:佐賀県唐津市ふるさと会館アルピノ
   佐賀県唐津市新興町2881-1
・出演キャスト:本渡楓(源さくら役)、田野アサミ(二階堂サキ役)、種田梨沙(水野愛役)、河瀬茉希(紺野純子役)、衣川里佳(ゆうぎり役)、田中美海(星川リリィ役)
※出演者は予告なく変更される場合がございます。
※公演回数・日時は変更になる場合がございます。変更時は、公式サイトにてご案内申し上げます。
・チケット料金:7,800円(税込)
※1申し込みにつき2枚までとさせていただきます。
※未就学児入場不可
※整理番号順のご入場のオールスタンディング

Blu-ray「ゾンビランドサガ」SAGA.3にチケット優先販売申込券封入!
抽選受付期間:2019年4月26日(金)10:00~2019年5月12日(日)23:59
抽選受付URL: https://l-tike.com/st1/zombielandsaga-insaga

発売元・販売元:エイベックス・ピクチャーズ

【LIVEBlu-ray情報】
■ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう!~


・発売日:2019年7月26日

・金額:8,640円(税込)

3月17日に開催された「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュみんなでおらぼう!~」のBlu-rayが7月26日(金)にはやくも発売!

アニメの世界観を具現化したリアル“フランシュシュ”による伝説のFirstLIVEが初映像化!
大人気2話のあのRAP!伝説の7話のあの楽曲!最終話のあの衣装!などなど見所満載の内容となっております。
さらに1日限りの復活!?詩織(徳井青空)率いる伝説のアイドル「アイアンフリル」のLIVE映像も収録!

◆収録内容
M1:徒花ネクロマンシー
M2:DEAD or RAP!!!
M3:アツクナレ
M4:目覚めRETURNER
M5:ゼリーフィッシュ
M6:FANTASTIC LOVERS
M7:To my Dearest
M8:特攻DANCE~DAWN OF THE BAD~
M9:ヨミガエレ
M10:光へ
M11:フラッグをはためかせろ!
※M5は現アイアンフリル、M6は旧アイアンフリルによる歌唱

◆出演者
フランシュシュ
本渡楓(源さくら役)、田野アサミ(二階堂サキ役)、種田梨沙(水野愛役)、河瀬茉希(紺野純子役)、衣川里佳(ゆうぎり役)、田中美海(星川リリィ役)
現アイアンフリル
徳井青空(詩織役)、金子千紗(ユイ役)、日野向葵(真琴役)、真央(ひかり役)、遠野まゆ(じゅりあ役)
旧アイアンフリル
種田梨沙(水野愛役)、望月麻衣(ノノ役)、佐藤優希(薫役)、松井栞里(みゆ役)、大出千夏(仁奈役)
※商品の仕様は予告なく変更になる場合がございます。

発売元・販売元:エイベックス・ピクチャーズ

©ゾンビランドサガ製作委員会

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放送日: 2018年10月4日~2018年12月20日   制作会社: MAPPA
キャスト: 宮野真守、本渡楓、田野アサミ、種田梨沙
(C) ゾンビランドサガ製作委員会 (C) ZOMBIE LAND SAGA PARTNERS

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