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アイデアがあふれ出てしまう、サービス過剰な監督
── 90年代後半~00年代前半までは、とても自由な時代だったように思います。「ベターマン」はホラーテイストと言いながら、主人公の蛍汰の動きがコミカルで、不思議なバランスの作品に仕上がっていますよね。 米たに ええ、コミカルさは、とても意識しました。あまり怖くしすぎると、女性の視聴者に「あの時間に怖いアニメを放送されると眠れないので、もう見ない」と言われてしまう。「笑ゥせぇるすまん」はそれほど怖くしたつもりはないのに、怖がる女性が意外と多かったんです。それで、ちょっとコミカルなかわいい動きを入れました。
── 話は変わりますが、「ガオガイガー」から継続して日本ビクターのアニメ制作チーム(現・フライングドッグの映像制作部)が製作したことも、自由な作品づくりにプラスに働いたのではないでしょうか? 米たに 今だから言えるのですが、「ベターマン」は日本ビクターさんに持っていく前に、他社にもプレゼンしていたと思います。最終的に、「日本ビクターさんとなら、うまくいく」という流れになりました。
音楽の老舗ですから、エンディング曲についても、すごく勝手な要求まで聞いてもらえました。佐々木史朗さん(現・フライングドッグ代表取締役)に「歌は自分で作詞作曲して歌いますから」って(笑)。「どんな歌なのか、今ここで聞かせてくれ」と佐々木さんに言われたので、無関係の人も行きかうエントランス・フロアでエンディング曲を大声で歌いましたよ。
── それはメロディを口ずさむとかではなく、本気で? 米たに 本気で歌いあげました(笑)。その場に同席していた田中公平さんも、ビックリしてました。歌詞や譜面も渡して、強引に打ち合わせを進めて……。小林プロデューサーは青ざめていましたが、佐々木さんは「面白いから、監督が歌えばいいんじゃない?」と推してくれて通ってしまった。そういう、大らかな時代だったんですね。
── 今回の「ベターマン」のBlu-ray BOXには、「ガオガイガー」と世界観を共有した「覇界王~ガオガイガー対ベターマン~」のドラマCDが収録されますね。20年前、ここまで作品人気が持続すると予想してましたか? 米たに 当初は、してました。番組が終わったあとも、自分で続編や小説の企画を立てていました。だけど、作品の人気には波があるんです。企画が通らず、谷間に来たときに「ああ、この作品はもう終わったんだな」という気持ちになったこともあります。私の心の中では、「ベターマン」も「ガオガイガー」もずっと生きつづけて来た作品なので、小説やコミカライズ、CDドラマ化できる時代が巡ってきてうれしいです。
── ドラマCDを聴くと、声優の皆さんが当時そのままの声なんですよね。 米たに そうなんです。皆さん、当時の声に戻れるんです。そういうすぐれたキャスティングをした自分も偉いと思います(笑)。今でも第一線で活躍している実力派のベテラン声優さんたちが、20年前のテンションそのままで演じています。知らない人が聞いたら、現在収録したとはとても思えないでしょうね。
── そういえば、OVA「勇者王ガオガイガーFINAL」(2000年)に「ベターマン」を加えたテレビシリーズがありましたよね(「勇者王ガオガイガーFINAL -GRAND GLORIOUS GATHERING-」 2005年)。 米たに あのときは、「ベターマン」を加えざるを得なかったんです。何しろ、「ガオガイガーFINAL」は8本しかない。それなのに、12本のテレビシリーズにしてくれと、サンライズから言われたので、テレビの「ガオガイガー」と「ベターマン」の要素も入れないと、とても12本分にならないわけです。時間もなくて作業量も膨大だけど、「こんなチャンスは2度と来ない」と思いました。この機会を逃したら、作品を再興させる波が去り補完できない。脚本なしで構成表を書いて、自らVHSデッキで仮編集して……。追加アフレコに5.1chダビング、さらに、主題歌もバージョン違いをつくってもらいました。
いいか悪いかは別にして、私はサービス過剰な人間なんですよ。アイデアが、どんどんあふれ出てしまうんです。今のアニメで、こんなつくり方をしたらクドいと思われてしまうかも知れませんね(笑)。
「ベターマン」の話題に戻りますが、1999年当時は、ギャグテイストもあって美少女もいてロボットも出てくるホラー怪獣アニメに、視聴者がまだ慣れていなかったかもしれませんね。今はSFテイストの入った萌えアニメもあるので、若い人でも楽しめる気がしています。かわいい絵柄のSFアニメに慣れている人たちなら、「ベターマン」にスッと入ってこられるんではないでしょうか。
小説やコミックで盛り上がってきた「覇界王~ガオガイガー対ベターマン~」で、初めて「ベターマン」という作品の存在を知ったという方々も、この機会にぜひ観賞していただけたらうれしいです。アナタのウシロに……ベターマン!!
(取材・文/廣田恵介)
商品情報
■「ベターマン」20周年記念Blu-ray BOX 完全限定盤
●収録内容:「ベターマン」全26話
映像特典:米たに監督インタビュー/
※-mai-ミニライブin 「ガオガイガーFINAL」完成記念イベント
ノンクレジットOP/ノンクレジットED/
番宣・プロモーションクリップ/提供バック(新規収録)/CMコレクション(一部新規収録)(DVD全13巻の『ベターマン』映像特典を再収録)
●木村貴宏&まさひろ山根 描き下ろし三方背BOX付き
●特典ドラマCD
「覇界王~ガオガイガー対ベターマン~ number.EX 求-PROPOSE-」
脚本:竹田裕一郎/音楽:田中公平/音響監督:藤野貞義/監督:米たにヨシトモ
出演:蒼斧蛍汰:山口勝平/彩火乃紀:氷上恭子/ラミア、山じい:子安武人/天海護:伊藤舞子/阿嘉松滋:茶風林/牛山次男、三男、末男:石川ひろあき/チャンディー、ユーヤ:桑島法子/紗孔羅:岩男潤子
●特典主題歌CD 『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』
新OP「勇者王誕生!‐御伽噺(ジュブナイル)ヴァージョン‐」 歌:遠藤正明
新ED「鎮-requiem-juvenile-伽」 歌:※-mai-
●オーディオコメンタリー収録
一夜 闇 -yami- 米たに監督 山口 宏 木村貴宏
九夜 海 -aqua- 米たに監督 北嶋博明 岩男潤子
十七夜 夢 -yume- 米たに監督 田中公平 岩男潤子
廿二夜 生 -mogaki- 米たに監督 竹田裕一郎 まさひろ山根
最終夜 -mu- 米たに監督 木村貴宏 まさひろ山根
●解説書(全308ページ)
ベターマン対談
・米たに監督×山口宏(チーフライター)×竹田裕一郎(脚本)×北嶋博明
・米たに監督×木村貴宏(キャラクターデザイン)×まさひろ山根(メカニックマスター)
覇界王対談&インタビュー
・米たに監督
・山口勝平(蒼斧蛍太役)
・檜山修之(獅子王凱役)×伊藤舞子(天海護役)
・遠藤正明
・米たに監督×田中公平
初期企画資料/米たに監督アイデアメモ(ベターマン)/ベターマン続編「覇界王」
米たに監督劇伴構成メモ
イラストブック(全196ページ)
DVDジャケットイラスト/OPイラスト/アニメ誌版権イラスト/キービジュアル/番宣ポスター
キャラクターデザイン1稿~4稿/ベターマン初期設定/各種線画ラフ 他
2019年4月24日発売 価格:36,000円(税別)
BD4枚+特典CD2枚 発売元:フライングドッグ
(C)サンライズ