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曲ごとに主人公像が違っているので、歌い方もすべて変えました
── 「群青インフィニティ」は全11曲ですが、そのうち、既存曲は「灯火のまにまに」(TVアニメ「かくりよの宿飯」オープニングテーマ)のみで、10曲が新曲なんですよね。次から次へといろいろな表情の曲が出てきて、多彩なアルバムだなと思いました。序盤はノリのいい曲が続いて、リスナーの心を高める流れになっていますね。 東山 2曲目の「Action」は、おしゃれでノリがいい曲です。リズムが後からついてきて、自然に体が動いてしまうと思います。
── 日本のポップスよりも、K-POPに近いおしゃれさがあるように感じました。 東山 たしかもそうかもしれないですね。「Hey Shy boy」という、ちょっとセクシーな言葉から始まる、かわいい恋の曲で、ボーカルは少し大人っぽさを意識しました。でも、大人を気取っていながらも、内面はピュアで、少女感を忘れずに歌いました。
── 続く「空色ダイアリー」は、ストレートなポップナンバーです。 東山 これも恋の曲で、一段とかわいい曲になっています。あまりの女の子らしさに、「かわいいー!」って身もだえしながらデモのときから聴いていました(笑)。
── メロディもすばらしくて、特にサビは耳に残ります。 東山 脳内ループしちゃいますよね。ライブでは、サビの「青空ダイアリー 輝いてビューティフル」というところで、手を振ってみんなと盛り上がりたいです。それにセリフが途中で入ってくるのも、いいアクセントになっているんじゃないかなと思います。
── セリフがまた、かわいくて(笑)。この曲だけでなく、アルバムの新曲は声優としての演技力も、いかんなく発揮されているように感じました。 東山 曲ごとに主人公像が違っているので、歌い方も変えているんです。「Action」が少しお姉さんだとしたら、「青空ダイアリー」は10代まん中の女の子というイメージで歌いました。
── 4曲目「I Want You To Know Baby」はエレクトリックな曲で、主人公はもはや人間じゃないですよね。 東山 はい、AIかアンドロイドが、人間に恋をした曲です。無機質なボーカルで、ロボっぽく歌いつつ、さらにエフェクトでロボ感を高めていただきました。でも、「無機質な私のココロは ヒトとして動き始めた」という部分から、人間らしくなっていくんです。1曲の中で歌い方が変わっているので、そこも楽しんでいただけたらうれしいです。
── 5曲目に「灯火のまにまに」が入っていて、続く6曲目「さよならモラトリアム」はすごい曲でした。ある意味、アルバムでもっともインパクトがある曲です。 東山 インタビューしてくださる方々に、「どの曲が好きですか?」とおうかがいすると、この曲の人気が意外にも高いんです。私としては、みなさんに引かれちゃうかも? って思っていたので(笑)、うれしかったです。
── 1度聴いたら、絶対に忘れられない曲だと思います。まずは3拍子から始まって、レトロな曲なのかなと思わせられるんですよね。 東山 ゴシック風のワルツから始まるので、この曲はメルヘンタッチなのかなと思いきや、ボーカルの声色が変わって、いきなり子どもっぽくなって。
── 「大人になるとかどういう事か」と問われて、「こりゃ難題」って、問う側と問われる側で演じ分けをしていますよね。 東山 はい。問う側は女神のような存在で、問われて困る側は、自由奔放な女の子です。その2人だけでなく、ざますメガネをかけているような女性教師や、人生を導くヒーローも出てきて、めまぐるしく歌っているキャラが変わっていきます。
── まさに声優じゃないと歌えない曲です。 東山 キャラソン風に聞こえるかもしれませんが、キャラソンでは絶対にできない曲だと思います。私がその場で、ここはこういうキャラで歌おうって考えて歌っていったので、CDではこういう歌い方になりましたが、ライブではどう変わっていくか、予想できません。その時々の味が出てくる曲だと思います。
── 芝居で言うと、エチュード(即興による演技付け)のような。 東山 そうですね。エチュード的な曲と言っていいと思います。これも、ライブを楽しみにしていただきたい1曲です。
── 子どもが「わかんなーい!」と駄々をこねているような「さらならモラトリアム」から一転して、7曲目の「Living Dying Kissin'」はぐっと大人っぽいテイストになります。 東山 テクノボーイズ(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)さんの曲です。以前お仕事でご一緒させていただいてから大ファンになって、ぜひアルバムに楽曲を提供してくださいとお願いさせていただきました。「生きて、死んで、そしてキスして」というタイトルからしてかっこよくて、英語詞が多いのが特徴です。Dyingという毒を含んだ言葉が入っているのがステキで、アルバムの中で一番色っぽくて毒のある曲になりました。
── タイトルは、リビング・ダイニング・キッチンに掛かっていますよね? 東山 はい、「LDK」と略すのは実は正解で、この曲の裏テーマはルームシェアなんです。人生という部屋も、愛という鍵があれば、誰かと分かち合えるというメッセージがこめられていて、歌詞のところどころに部屋をイメージさせる言葉が散りばめられています。テクノボーイズさんが考えることって、本当に洗練されているなって思いました。
── 8曲目は「ゆれる」。この曲も大人っぽかったです。 東山 ジャジーな曲です。バンドネオンのサウンドが入っていておしゃれなんですけど、内容的にはかなりダークで退廃的です。歌手デビューしてから、いろいろな曲を歌わせていただいてきた中で、暗い曲というのはなかったので、今回のアルバムでは歌ってみたいですとお願いしました。歌詞にも「枯れていく」「消えてく」「落ちてく」というワードがいくつも入っていて、暗い闇の中に沈みこんでいくんですけど、最後に、「残された時間は あなたに捧げよう」という一節があって、まだ心の中には消えない情熱があることがわかります。
── 出だしの歌い方がウィスパーで、かすれた声に色気を感じました。 東山 ほとんど声が聞こえないような、アンニュイな歌い方から、少しずつ情熱を帯びて、人生にもがき足掻いている歌声に変わっていきます。低いパートが多いので、厚みや重みを意識して歌いました。夜が似合う曲になったと思います。
── 9曲目「奇跡」は、対称的に温かくて柔らかなバラードです。 東山 「神のみぞ知るセカイ」の中川かのんちゃんの代表的なバラード「らぶこーる」を書いてくださった川崎里実さんの作曲です。川崎さんはかのんちゃんの曲の仮歌をずっと歌ってくださった方でもあり、かのんちゃんを通して私のことを見守り続けてきてくださいました。今回は、かのんちゃんではなく、私にとってのバラードを川崎さんに書いていただきたいなと思って、お願いしました。
── 楽曲に感じられるやさしさは、川崎さんが東山さんを見る視線のやさしさでもあるんですね。 東山 近いけれど近すぎない、いい距離感で私のことを俯瞰してくださっている川崎さんならではの曲、という気がします。「奇跡」というタイトルも深くて、出会えた奇跡、一緒に歩んできた奇跡、そして今この場所にいる奇跡がこめられているように感じました。
── そうすると、「軌跡」という言葉にも掛かっているような気がします。 東山 確かにそうかもしれないですね。ここまで歩んできて、この先にある景色はどんなものなんだろうと、自分自身に問いかけるような歌詞も、本当にステキです。
── 10曲目「未来YELL!」は、とっても明るくて元気になれる曲で、タイトル曲に続く、もうひとつの応援歌ですね。 東山 この曲でアルバムが終わってもいいくらいの大団円の曲です。ブラスが入った曲をやりたいという思いは最初からあったんですけど、ここまでカラッと青空が似合う曲をいただけるとは思ってなくて、本当にうれしかったです。サビは特に元気で伸びやかで、コール&レスポンスもありますし、ライブで絶対に盛り上がれる曲になりました。