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「A WINTER STORY」は、8歳の私に仕事とは何かを教えてくれました
── Disc2は、先ほどもおっしゃった通り、牧野さんがピアノを弾いている楽曲をセレクトしたものです。1曲目の「A WINTER STORY」は、岩井俊二監督の映画「Love Letter」(1995年公開)のサウンドトラックですね。 牧野 私が8歳の時に弾いたピアノ曲です。
── 当時のことって覚えていますか? 牧野 レコーディング当日の記憶は鮮明に残っています。朝、レコーディングに行くのが嫌すぎて、布団の上で号泣したんです(笑)。母に「仕事でしょ」とピシャッと言われて引っ張り出されたんですけど、そのときに「どんなにイヤでも、仕事には行かなきゃいけないんだ」ということを学びました(笑)。
── 8歳で(笑)。 牧野 仕事というのがどんなものかわからなかったんですけど、母の言い方にイヤとは言えない何かを感じました(笑)。そもそものきっかけは、「Love Letter」の音楽を手がけたREMEDIOSさんと父(作曲家・演奏家の牧野信博)が仕事上の知り合いで、「A WINTER STORY」のアレンジには実は父も加わっているんです。私がその前年に出たピアノコンサートの映像をREMEDIOSさん経由で岩井監督がご覧になって、この子に弾いてもらおうということになったと聞いているんですけど、そのために学校も休んで練習三昧で。
── プロの映画音楽のレコーディングですから、そうなりますよね。 牧野 譜面がなくて、父が弾いたのを見て覚えるところから始めたんですけど、子どもですからとにかく怒られたくないという一心で。それでレコーディング当日もイヤでイヤでしょうがなかったんです。そこを引っ張り出されてキングレコードさんの関口台スタジオに行ったら、ブースの中のピアノをポロポロ弾いて遊んでいるお兄さんがいて。「なんなんだろう、あの人」と思いながら自販機に飲み物を買いに行ったら、その人がやって来てジュースを買ってくれたんです。後で知ったんですけど、それが岩井監督だったようで。
── 映画みたいな出会いですね。 牧野 Love Letter」のサウンドトラック盤には、8歳の頃の私の写真も載っているんですけど、岩井監督に買ってもらったジュースのパックを持って写っているので、もし持っている方がいたら、確認してみていただきたいです(笑)。
── 「A WINTER STORY」に始まって、Disc2は基本的には当時の音源がそのまま収録されています。 牧野 そうですね。私の軌跡をより感じていただける盤になっています。曲の並びは年代順ではなく、ただただ心地いい並びになっています。Disc2の出発点は自分自身のためのプレイリストだったので、自然にそうなっていったんですね。でも、みなさんに聴いていただくために曲順にある程度のロジックは必要だなと思って、私の原点である「A WINTER STORY」を1曲目にもってきたり、「横顔」「シンフォニー」と「ARIA」関連の曲を並べた後に、水がテーマの「雨の日の噴水」を繋げたりして、流れを作っていきました。「今日も1日大好きでした。」と「Precious」はどちらもpal@popさんの作詞・作曲で、ピアノ曲にも高野さんらしさが溢れているのでこれも繋げて、最後はDisc2唯一の新録曲である「アルメリア-弾き語り-」で終わらせました。
── 「アルメリア」は2015年10月発売の4thアルバム「タビノオト」の収録曲で、Disc2の中ではもっとも新しい曲ですね。 牧野 「これまで」と「これから」を繋ぐアルバムということで、最後は今の私を感じていただきたいと思いました。
── 「横顔」(TVアニメ「ARIA The ORIGINATION」挿入歌)と「シンフォニー」(TVアニメ「ARIA The ANIMATION」挿入歌)は、懐かしく聴かせていただきました。牧野さんは「ARIA」シリーズでも活躍されてましたよね。 牧野 大好きな2曲です。「ARIA」の世界観に、ただただ自然に寄り添った曲だったなと思います。お仕事をご一緒させていただいた役者さんから、専門学校生の頃に「ARIA」にハマっていましたというお話を聞いて、すごくうれしかったです。みなさんの人生の中に私の曲が入って、思い出の曲にしてくださっているというのは光栄ですよね。
── 8曲目の「碧の香り」(TVアニメ「ソウルイーター リピートショー」エンディングテーマ)は、2010年11月リリースの9thシングルです。しっとりとしたきれいな曲で、作詞は牧野さんご自身ですね。 牧野 海外のフェスに出演させていただくことが多かった時期で、初めて人前で歌ったのがフランスのジャパン・エキスポでした。本番のレコーディング前で、そのために琴の音を入れて和を感じるアレンジにしていただいたんです。歌詞も古い言葉遣いをあえて使って、ジャポニズムを打ち出した曲でした。「ソウルイーター リピートショー」のエンディング映像も素晴らしくて、歌詞と絵を合わせていただけたので感動しました。サビで、自分の大事な人のことを想って、一生懸命走って、パッと振り返ると誰もいない・・・と思いきや、笑顔でそばにいてくれたという感動のストーリーになっていました。