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アップデートバージョンには、アレンジャーMEGさんのファン視点が入り込んでいます
── Disc1は新録による「Brand-new Sky」からスタートして、新旧織り交ぜた曲が収録されています。 牧野 「Brand-new Sky」のライブバージョンはCDとはかなり違っていて、ファンのみなさんから音源化をずっとリクエストされていたんです。今回のアルバムのコンセプトを考えたとき、これを入れないと意味がないと思いました。ライブのときはドラムのカウントから始まるんですけど、音源でもそれを生かしていて、「UP!!!!」の幕開けを飾るにふさわしい楽曲になったと思います。そこから全11曲をライブを感じられるような流れで並べて、いつも最後に歌っている「Cluster」をラストに持ってきました。「Cluster」のエンディングに入っているドラムの音もライブのときと同じで、締めの雰囲気が出ていると思います。
── ライブのセットリストとしてもあり得る構成になっているということですね? 牧野 流れはとてもいいと思うんですけど、実際にライブでこのセットリストを組んだら、上がりっ放しで大変なことになっちゃいますね(笑)。Disc2とコントラストを付けるという意味でも、Disc1は勢いのある曲を選んでいます。
── Disc1の新録曲はすべて、MEGさんがアレンジを担当されています。 牧野 MEGさんは楽曲に対して、新しい風を絶妙な位置から吹かせてくれるんです。うれしいことに、私の1stアルバムからリアルタイムで聴いてくださっていて、その時々に私の曲を聴いて感じていたことを思い出しながら、アレンジしてくださいました。たとえば9曲目に入っている「夏休みの宿題」は、当時サウンド感が大好きだったけど、今回アレンジするうえで、こんなに切ない歌詞だったんだと改めて気づいた、とおっしゃっていて。お仕事でご一緒させていただくよりも早くから、長年私の曲を聴き続けてくださっていたMEGさんだからこそのアレンジになったと思います。
── 「夏休みの宿題」は、1stアルバム「天球の音楽」(2006年12月リリース)の収録曲です。 牧野 大学生の頃に歌った曲です(笑)。MEGさんには、ライブアレンジを意識しつつ、原曲のイメージも保ってくださいとお願いして。ご本人も私の曲を愛し続けてくださったひとりなので、長年のファンの方を裏切らないアップデートになったと思います。MEGさんはボーカル録りのディレクションもしてくださって、CDリリース当時の歌い方と今ライブで披露している歌い方の両方を把握したうえで、新しいバージョンに合った歌い方をアドバイスしてくださいました。
── MEGさんは、プロの視点と牧野由依ファンの視点の両方を持っているんですね。 牧野 そうなんです。「MEGさんレーダー」と呼んでいたんですけど、ファン視点のレーダーがあるんです。今歌ったボーカルのニュアンスが、MEGさんの琴線に触れたか触れないかというジャッジがあったりして、こだわりを持ってディレクションしてくださいました。
── ボーカルも、ライブを意識して歌ったというだけではないんですね。 牧野 ライブのときは自分のテンションも上がってますし、目の前のお客さんに歌を届けるために、中身が詰まったボーカルになるんですけど、CD音源を聴き返すと空気のように爽やかに歌っていたんです。それも考慮に入れて、むしろ軽めのボーカルを意識して歌いました。当時のニュアンスを生かした歌い方ができたので、私にとっても自分の軌跡を見つめ直す機会になりました。胸がこそばゆくなりましたね(笑)。
── 先ほど、新録曲のアップデートバージョンは、すべてライブのバンドメンバーによる演奏とおっしゃっていましたが、弦楽器もそうなんですか? 牧野 ストリングスに関しては、ライブ通り2人で弾いていただいた曲と、カルテットの編成にした曲があります。「Brand-new Sky」と「synchronicity」はライブと同じ編成で、弦2本でガツッとエッジの効いたサウンドにしていただきました。カルテットになっているのは「夏休みの宿題」と「Cluster」で、美しい音色が楽曲に乗っています。デビュー当時から一貫して私の曲の根幹にあるのは、クラシックテイストを感じさせるということで、ストリングスが担う役割が大きいんです。アップデートバーションでも弦の存在感が光る絶妙なサウンド感に仕上げていただきました。
── 3曲目に収録されている「synchronicity」は、2007年11月にリリースされた6thシングルです。OVA「ツバサ TOKYO REVELATIONS」のオープニングテーマで、作詞作曲を梶浦由記さんが手がけています。 牧野 「synchronicity」は、今の感覚で歌いたいなという思いがあって、アレンジも当時とはちょっと違うパキッとしたサウンド感になりました。ボーカルもより芯のある声に変わっていて、当時とは違うアプローチをした曲ですね。
── 5曲目の「Zipper」は、pal@popさんのアルバム「feat.PLUS」(2010年7月リリース)に収録されていた曲です。 牧野 pal@popさんがいろいろなボーカリストとコラボしたアルバムに、私も参加させていただいたときの曲です。pal@popというのは6曲目の「ふわふわ♪」を作詞作曲してくださった高野健一さんの別名義なんですけど、「Zipper」も「ふわふわ♪」も同じコードをずっとループさせていくのが特徴で、心地よいサウンド感を作り出しているんです。この2曲はぜひ続けて聴いていただきたいと思って並べてみました。ライブで歌い続けていて、ファンのみなさんからの人気もじわじわと高まっています。
── Disc1の中ではもっとも初期の曲である「夏休みの宿題」と、最新曲の「ハウリング」(2018年3月リリースのミニアルバム「WILL」収録)が並んでいるのも面白いなと。Disc1は流れを意識しながら、収録順の通りに味わいたい1枚だと思いました。