【TAAF2019】「シンポジウム1 アニメーションのデジタル化に伴うアニメーターの将来像を探る」レポート:何がアニメーターを低賃金労働者にするのか? そしてデジタル化で制作現場はどう変わるのか?

2019年03月11日 14:550
【TAAF2019】「シンポジウム1 アニメーションのデジタル化に伴うアニメーターの将来像を探る」レポート:何がアニメーターを低賃金労働者にするのか? そしてデジタル化で制作現場はどう変わるのか?

2019年3月10日(日)、「東京アニメアワードフェスティバル2019(TAAF2019)」のプログラムの一環として、「シンポジウム1 アニメーションのデジタル化に伴うアニメーターの将来像を探る」が、にて開催された。

このプログラムは、日本のアニメーションの現場で活躍するクリエイターが集まり、世界の中江の日本のポジションを確認しながら、どのような日本のアニメーションの将来像を描けるかを探るシンポジウムのひとつ。

ここでは、井上俊之さん(アニメーター、日本アニメーター・演出協会 理事、「アキラ」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「人狼 JIN-ROH」「東京ゴッドファーザーズ」「電脳コイル」「おおかみこどもの雨と雪」「百日紅」など)、押山清高さん(アニメーター、アニメーション監督、「電脳コイル」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「風立ちぬ」「鋼の錬金術師嘆きの丘の聖なる星」「スペース☆ダンディシーズン2」「フリップフラッパーズ」など)、りょーちもさん(アニメーター、キャラクターデザイナー、アニメーション監督、「BECK」「夜桜四重奏 -ホシノウミ-」など)が登壇。フェスティバルディレクター・竹内孝次さんの司会進行で、たっぷり3時間もの時間をかけて議論が交わされた。

 

■デジタル化でアニメーターの賃金体系はどう変わる?

今回の話題の中心は、アニメーション制作の現場がデジタル化することで、アニメーターの職分がどのように変化するのか。そして、賃金問題は改善されていくのかという点。

まず竹内ディレクターは、日本におけるアニメーションの制作工程をフローチャートで示しつつ、現在どの程度現場のデジタル化が進んでいるのか。そして、今後どういった順序でデジタル化が進んでいくのかを解説。

編集、撮影といった最終工程は、すでにほぼデジタル化が完了しており、近年は絵コンテもかなりデジタル化しているのでは、と井上さん。絵コンテをムービー化することで、最終的な間やタイミングをこの段階で共有できるようになっているという。

また、井上さんは「デジタル化が進んできていることで、アニメーターが原画の段階で、簡単な撮影までできるようになってきていることは、よいこと」とコメント。デジタル化の進行で、アニメーターが従来の作画以外の作業にも手を出すことが容易になり、より完成形をイメージしながら制作できるようになっていることが語られた。

そのいっぽうで、誰がその作業の料金、コストを保証するのかという問題もある。かつて若い世代のアニメーターが、自発的にそのようなツールを導入し、さまざまな作業を行った結果、その費用をアニメスタジオに請求して問題になったこともあったそうだ。

「(業界には)早く、独自に動いて処理した作業についての価格を明文化していただきたい。今はそういう(自発的に技術を習熟する)行動が悪になっている」と、井上さんはコメントしつつも、「現状の日本の状況では単価の上がりようがない」という現状認識を示した。

また、デジタル化が進むことでひとりあたりのアニメーターの作業量が増えていく可能性もある。そこでアニメーターの賃金計算は、「枚数」ではなく「工数」で考えるべきではないのか、とりょーちもさんは提案。前半は現場から見えるアニメ業界の問題点と、なんとか状況を変えねばならないという問題意識が登壇者たちからうかがえた。

 

後半はアニメーション制作の現場がデジタル化することで得るもの。そこでアニメーターが考えるべきこと、とうテーマで議論が展開した。

 

現在、4か月かけて短編アニメを制作しているという押山さんは、「シナリオから仕上げの一部、時間さえあれば背景までも自分で手がけ、ほぼひとりで制作できた。それはデジタル化があったから」と語り、デジタル化の恩恵について語った。そのうえで、「今後は少人数で制作することが主流になるのでは」という見解を示した。デジタル化によって作業効率が上がることで、これまでの人海戦術的な制作から少数精鋭での制作への移行を実現させ、クオリティ管理も容易にできるようになる。その結果、ひとりあたりの報酬もあがる、とデジタル化によって状況の改善が実現することに期待を寄せた。ただ、「少人数で作るから、ギャラが安くてもいいという誤った情報を発信してはいけない」と釘も刺す。

また、現在多数のテレビアニメが制作されている都合で、スキルが不足しているアニメーター、納期を守らないなどのモラルが欠如しているアニメーターにも仕事がまかれている現状に対して、デジタル化が進むことで淘汰が進むのではないかという見解を示した。

 

終盤、現在の日本のアニメーション作品そのものが抱える問題についても語られた。

井上さんは、「今はキャラクターの線が複雑すぎる。かつてのアニメは線が圧倒的にシンプルだった。今は原案イラストを動かすことがいいことという風潮があるが、アニメーションはイラストを動かすものではない。たくさん絵を描いて動かしていくのが、アニメーションの表現様式」と、昨今のアニメの作風についてコメント。
線が複雑になることで、アニメーターが1日あたりに描ける動画の枚数が昔に比べて減っている。そこもアニメーターの低賃金問題の一因だとしたうえで、「シンプルな線に向かうべきで、それによって経済的な問題は解決される。近年はDVDも売れなくなってきているということもあり、考え直す時期ではないか」と語り、アニメ制作現場の課題を浮き彫りにする形でシンポジウムは幕を下ろした。

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