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不安を抱えながら、一定のテンションを保つボーカルを意識しました
── ボーカルのレコーディングはいかがでしたか? Tom-H@ck KIHOWとは一緒に活動して1年半くらいになって、お互いに落としどころがわかってきたように思います。だから、今回の2曲はどちらもレコーディングはすごく早かったですね。僕からKIHOWに「こういうふうに歌って」と指示した部分はほとんどなくて、彼女が作り上げたものが、そのまま完成形になりました。
KIHOW 最初の頃はTom-H@ckさんからディレクションを受けても、どんな歌い方を求められているのか、うまくつかむことができなくて、ボーカル録りに時間がかかっていたんです。だから、私にとって歌うのが一番難しかったのは最初の「HYDRA」で、次の「VORACITY」では爆発するような感情表現ができるようになり、自分の表現の振り幅が広がったような気がしました。「shadowgraph」は過去の2曲とはタイプがまったく違う曲ですが、それでも歌い方が最初からイメージできたのは、今までの経験のおかげだと思います。難しい曲ではありましたが、今の自分ならできる表現だという確信がありました。
── 感情の表出を抑えつつ、でも弱めることなく歌う楽曲だと先ほどおっしゃっていましたが、具体的に、どのように歌おうと思いましたか? KIHOW Tom-H@ckさんもおっしゃった通り、答えを出すことなく、ずっと問いかけ続ける歌詞で、「ここにあるものは何なんだろう?」「私とはなんなんだろう?」と考え続けることで陥ってしまう不安や焦りを内に秘めながら歌おうと思いました。ずっと不安を抱えながら、同じテンションを保って歌うというのが、一番強く意識したことです。A、Bは弱くして、サビで高めるというような抑揚は、今回は出しませんでした。
Tom-H@ck 楽曲の答えがない感じを、ボーカルでも表現してくれたと思います。クールで淡々としたボーカルに聞こえるかもしれないんですけど、実は違って、少しだけ語尾にニュアンスがついていたりするんです。そこが聴く人の耳を引きつける要因になっているんじゃないかと思います。楽曲が静かだからと言って、ボーカルのパワーまで削ぐようなことはやってないんですよね。
── すごく雰囲気があるボーカルになっていました。 Tom-H@ck KIHOWには天性の才能があって、どんな曲でも彼女のボーカルが乗ると、いい曲に聞こえるんです(笑)。もちろん、僕もいい曲を作ろうと思ってやってますけど、実際のところ、そんなに音数はいらないなと。KIHOWの声があるからこそ、他の音をどんどん間引いていくやり方を取っているのが、MYTH & ROIDなんですよね。「VORACITY」もかなり音数が少なかったんですけど、「shadowgraph」はその究極と言っていい曲です。
── KIHOWさんは、完成した楽曲を聴いて、どう感じましたか? KIHOW 不穏さがある曲ですが、その手の曲によくあるねちっこさは皆無のサウンド感でした。ボーカルもバックトラックもさらっとしていて、どちらかと言えば「爽やか」と言っていいと思います。それが今までのMYTH & ROIDとは違って、面白かったです。
── ミュージックビデオ(MV)も、印象的な映像になりました。 Tom-H@ck 今回、新たにご一緒させていただいた監督で、こちらからお願いしたのは、「神秘的であること」「恐怖を感じさせるもの」という2点で、あとは自由にやっていただきました。顔のない人間たちというアイデアも面白かったですし、クオリティの高い映像を作ってくださったと思います。すごく気に入っています。