【インタビュー】フライングドッグ10周年。その軌跡とアーティストとの関わりを、佐々木史朗社長が語る!

2019年01月31日 19:000

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「マクロス」と「ミンキーモモ」のヒットが起爆剤となった80年代


── MIX CD「NON-STOP FlyingDog MEGA MIX DOG RUN!!」は、80年代から現在までの100曲が繋げられていて、フライングドッグの歴史が一望できる内容になっています。kz(livetune)さんの監修で、DJ WILDPARTYさんによるMIXですが、収録曲について、どう感じていますか?

佐々木 有名な曲からマニアックな曲まで、さまざまな楽曲が並んだと思います。社内のディレクター陣からも選曲の要望を出して、きれいに繋げていただけました。僕も何曲か、これを入れてという提案をしましたね。

── たとえば、どの曲でしょうか?

佐々木 主に、僕のほかには社内でもわかる人間がほとんどいない80年代の曲です。「サファリアイズ」(松原みき/劇場版「ダーティペア」)、「輝く瞳〈BRIGHT EYES〉」(TAKU/TVアニメ「巨神ゴーグ」)、「背中ごしにセンチメンタル」(宮里久美/OVA「メガゾーン23」)あたりがそうですね。「巨神ゴーグ」はDVDで復刻されたので若い社員も知っているんですが、「ダーティペア」の楽曲までは知らないんじゃないかな。また、「愛は神話の果てに」(カルメン・マキ/OVA「戦国奇譚 妖刀伝-破獄の章-」)は、僕がディレクターの仕事を始めたばかりの曲で、思い入れがあります。

── 80年代は今とは違うアニソン文化があったような気がします。佐々木さんの印象はいかがですか?

佐々木 僕個人の歩みとしては、アシスタントディレクターから、メインのディレクターとして作品を担当し始めた時期ですね。OVAの全盛期で、TVアニメではできないような作品が多く作られてました。アニソンに関しては、現代はJ-POPのアーティストもアニメの内容を吟味しながら曲を作るようになってきましたが、当時は作品の内容とは関係ないただのタイアップか、作品に合わせて楽曲を作るかに大きく二極化していたように思います。僕らはどちらかというと、原作者やアニメの監督の意向を踏まえて曲を作ることをずっとやっていました。

── 佐々木さんが関わったOVAとしては、たとえば「メガゾーン23」はヒット作ですよね。

佐々木 僕がディレクターとして「メガゾーン23」を手がけたのは3作目からで、1作目のときはまだ営業職、2作目はアシスタントディレクターでした。

── 1988年には、「トップをねらえ!1&2」の映像プロデューサーと音楽ディレクター、そして大友克洋監督の映画「AKIRA」の音楽ディレクターを担当されています。どちらもアニメ史に残る作品です。

佐々木 「AKIRA」の芸能山城組の起用は、大友先生の判断だったんですけど、未来的な作品だからこそ土着的な音楽を選ぶということに妙があったと思います。いつ終わるかまったく見えないレコーディングが延々と続いて、現場は本当に大変でしたけどね(笑)。そのときの経験は、菅野(よう子)さんと「マクロスプラス」の劇伴を作るときに生かされました。


── 「トップをねらえ!」の庵野秀明監督にも共通することだと思いますが、トップクリエーターは、やはりこだわり抜きますし、自分のやりたいことを実現するパワーを持っていますよね。

佐々木 「トップをねらえ!」で覚えているのは、第5話のバスターマシンの合体シーンですね。そこで流れている「トップをねらえ!~Fly High~」という曲は、もともと本編には関係ない、イベント用に作った曲だったんです。日高のり子さんと佐久間レイさんがデュエットすれば、イベントとしても盛り上がるよね、というのがこちらの狙いで。それを庵野(秀明)さんが合体シーンの挿入歌として使ったのには驚かされました。しかも、楽曲に合わせた見事な演出で、「参りました!」という気持ちでしたね。

── トップをねらえ!~Fly High~」は残念ながら「DOG RUN!」には入ってないのですが、佐々木さんにとっては思い出深い曲だということですね。いっぽう、「DOG RUN!」に何曲も取り上げられているのが「マクロス」関連の曲です。80年代から今に至るまで、ビクター、フライングドッグが音楽制作を手がけ続けていることは、アニメファンなら誰もが知っていることです。

佐々木 最初のTVシリーズ(「超時空要塞マクロス」)は僕がビクターに入社した年で、当時は特にアニメに詳しいわけではなかったので、主題歌シングルというのは子ども向けの商品なんだろうなと、漠然と思っていたんです。すると、同じ年に「魔法のプリンセス ミンキーモモ」もあって、その2作品の主題歌シングルが大ヒットしたんですよね。しかも、買っているのは子どもやその親といったファミリー層ではなく、高校生や大学生だと。それでアニメやアニソンに対する認識が一気に変わりました。また、この2作のヒットによって、ビクターのアニメセクションが大きくなって、アニメの音楽をたくさんリリースしていくようになったんです。僕は当時、大阪で営業をしていたんですが、営業所にアニメがわかる人間がいなかったので、一番下っ端の僕がアニメを一生懸命勉強して、イベントの司会なんかもやったりしていました。そうしたら、東京に呼ばれてアニメの部署に配属になったんです。

── 佐々木さんのアニメの仕事も「マクロス」から始まったというわけですね。

佐々木 自分が入社した年のヒットであり、その後も長く関わっていく作品ということで、「マクロス」には運命的なものを感じています。

── 90年代には、OVAの「マクロスプラス」とTVアニメの「マクロス7」が同時期に登場するということもありました。

佐々木 この2作も印象深いですね。同じ「マクロス」シリーズと言っても両極端の作品で、その2作の制作を同時期にやっていたわけですから。

── 菅野よう子さんの作曲による「マクロスプラス」のサウンドトラックは、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるものでした。当時、とても豪華で大胆な制作をするなと思っていました。ディレクターは佐々木さんですね。

佐々木 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団は、菅野さんからの要請もあったんですけど、僕にとっては前段階があって、「劇場版サイレントメビウス」のサウンドトラック(音楽・和田薫)で、モスクワフィルハーモニー交響楽団によるレコーディングをしたことで、海外録音の手応えを感じていたんです。そして一番大きかったのは、当時の円高ですね。


── コスト的な面でも、海外に行きやすかったと。

佐々木 そうなんです。海外でレコーディングするには、非常にいい時代だったと思います。

── 菅野さんは「ぼくの地球を守って」の音楽を溝口肇さんとともに手がけて、ひとりで音楽を担当した最初のアニメ作品は「マクロスプラス」となります。佐々木さんにとっては、どんな作品だったんですか?

佐々木 僕としては、劇伴作りに悩んでいた頃で、その前に手がけたいくつかの作品はキャラソンを作るために、劇伴にかける予算を削らざるを得なかったんです。ほかの誰も思ってなくても、自分にとっては低予算で作った劇伴が物足りないというか、本当はもっとハイクオリティで作れるのに、という思いでダビング現場では針のむしろ状態でいました。そんなときに菅野さんと「マクロスプラス」をやることになり、これを機会に、劇判として勝負できるものを作ってやれと。ある意味、破れかぶれな心境で手がけたのが「マクロスプラス」でした。ラッキーなことにCDがヒットして、その後の一連の菅野さんの仕事に繋がっていくことになりました。

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