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渕上 舞としての定番曲を目指して作った「Journey」
── 「バレンシアガール」は1stアルバムで「トロピカルガール」を作られたCMJKさんによる楽曲です。このアルバムで唯一の作詞提供を受けた曲でもありますね。こういう人物を声で表現していくのは人から提供された歌詞だからこそ演じやすい部分があったのでは? 渕上 そうですね。こういうおかしな歌詞は私には書けないです(笑)。これは褒め言葉です。「トロピカルガール」を作ったときも、「普段絶対私がキャラソンでも歌わないような、バカみたいに弾けた曲を1曲やってみたい」というリクエストから生まれたので、今回もと。歌詞をもらったときにみんな爆笑していました。最初は全曲私の作詞でという案もあったのですが、「トロピカルガール」の続編的な楽曲なので、この曲だけは私じゃないほうがいいなと思って。その世界観を是非CMJKさんにつなげていただきつつ、トロピカルではないガールを作ってほしかったんです。
── アルバム全体の渡り鳥のテーマで言うと、スペインのバレンシア地方ですから……。 渕上 情熱の国。気持ち的に熱い国ですね。力強い曲なので力強く、普段の生活に不満を抱いているOLの主人公になりきって歌いました。歌の世界観を考察するのがすごく楽しくて。「トロピカルガール」でも同じく地味なOLがアマゾンへ旅に行くという話だったのですが、それは妄想で実際に行ったかどうかわからない。この曲でも「太陽の国へ行きたいんです」と歌ってはいますが、全部妄想なんじゃないかって(笑)。でもそこでCMJKさんに「どうなんですか?」と聞いて答えが出ては、逆に楽しくなくなってしまうから、それは敢えて聞かず、想像力を働かせる曲になりました。自分で歌っていながらも、ひとつの物語を読んでいるかのような気持ちになりました。前作の「トロピカルガール」を聴いていただくとより楽しめる曲になってるので、このアルバムから入ってくださった方もぜひ合わせて聴いてほしいですね。
── 続いての「雪に咲く花。蜃気楼。」は、非常に世界観を想像させる歌詞ですが、これはどのようなテーマで作られていきましたか? 渕上 この曲は、1年中冬の間に日が昇らない国をイメージして書きました。そういう国って実際にあるでしょうし、ずっと寒かったり暗かったりすると、気分はふさぎ込んで行く。その光景は悲しい気持ちにさせるけれど、景色としてはとても幻想的で美しいと思うんです。それが表現できればいいなと思って。歌詞って一般的に聴いてる人がいい気持ちになったり頑張ろうと思う形が多いと思うのですが、この曲に関しては「救いがなくていい」というプロデューサーの許可のもと、救いのない歌にしようと思って。奇跡を見出して欲しい曲にするところを「奇跡なんてありませんよ」、「奇跡なんて蜃気楼」という歌詞に仕上げました。弾けた楽しい曲よりも、基本的に切なかったり悲しかったりする曲のほうが個人的に好きなので。
── 悲しい歌詞書くの好きなのはご自身では何故だと思いますか? 渕上 そもそも明るい人間ではないから(笑)。なので「ファインダー」が一番大変でした。「楽しい」って何?って(笑)。カメラが「笑顔になる瞬間だ」という考えに行き着くまですごく長かったです。この「雪に咲く花。蜃気楼。」は書き上げるスピードも比較的早かったです。
── 歌入れはいかがでしたか? 渕上 神経を使いました。人間ではない存在が雪の中に佇んでぼんやり歌ってるような印象の曲にしたいなって思っていたので、透明すぎるぐらい透明感のある歌い方にしたかったので、ちょっとした姿勢とか声の出し方とか結構気を使えました。キーも高めでスッと歌い上げるようなメロディなこともあり、そこで人間っぽさを主張したくなかった。なんなら機械的に聞こえたいという感じでした。
── 個人的には渕上さんの声にはどこかイノセントな響きの印象があり、この曲からは渕上さんらしさを感じました。 渕上 それはもうみんなで言ってました(笑)。一番、「っぽい」って。「っぽい」んですけど、歌いやすいかというと、そうではないなかったりもするんです。透明感はありつつ音数が少ないわけではなくて、結構いろんなカチャカチャした音が入っているのが面白く、とても満足度が高い曲になりました。
── そして最後の「Journey」はこのアルバム全体のテーマである「旅」。 渕上 はい。今回のテーマが渡り鳥・旅ということで、渕上 舞としての旅をこの曲で表現できたらと思いました。
書くときは、「ずっと歌い続けられる曲、ライブで定番になったらいいなぁ」といった、いろんな思いを込めて作っていきました。歌詞を書くにあたっては、「旅がこれから先も続いていく」ということを約束事にしました。「Fly High Myway!」ではアーティストを始めるにあたっての期待や不安を書いたのですが、この曲はアーティスト・渕上 舞だけに限らず、私自身のこれまでの旅をこの曲の中で表現していけたらなと。歌詞の最初が「子供の頃に」や声優を目指すときの気持ち、いろんな仕事に慣れてきて思うことだったりを書きました。私のことをずっと応援してくださっている方の中で、「この表現は、あのときの渕上さんの思いでは?」と気づいてくれる方がいたらうれしいです。私の中ではそういうテーマで書きましたが、聴いて下さる方、それぞれの人生に当てはめながら共感していただければと思います。
── 活動の中で長く歌い続けるであろうという、大きなテーマの曲を書くにあたっては時間をかけましたか? 渕上 自分のことを振り返ったり、書き始めるまで自分の人生に思いを馳せる時間が長かったかもしれないです。自分の思いと設計図が固まってからは比較的スムーズに。ただ、言葉数というか、歌のメロディがちょっと特殊だったりもするので、転がるように進む箇所に言いたいことを当てはめる言葉選びはちょっと苦戦しました。でも意外と長考せず、素直な気持ちで書き上げることができました。
── そうしたご自身の思いが強く乗った歌詞を歌ってみてはいかがでしたでしょうか? 渕上 自分の一番楽な声で、楽なテンションですごく気持ちよく歌えたと思います。楽というのは手抜きという意味ではなく、無理なくという意味で。今までで一番なんじゃないかってぐらい気持ちよく歌えた曲でした。このアルバムを作るときから、プロデューサーが最後の曲は「渕上さんの人生の曲・クロニクルみたいなものに」とおっしゃっていて、そのときはメロディも何もなかったのですが、「語るような歌とかもいいよね」と話していて、そのときは想像もつきませんでした。1年前の「Fly High Myway!」と、アーティストとして1年過ごしてきたこのミニアルバムとを聴き比べてもらえたらうれしいです。
── 2ndライブも決定しています。こちらも1年ぶり。 渕上 ステージの内容はまだなのですが、セットリストも先日決まりまして、4月末までがあっという間だと思います。今回も私らしく、背伸びをしすぎない楽しいライブにできたらいいなと思います。曲も増えているのでどの曲をどのタイミングで歌うのかを楽しみにしてもらえたらうれしいなと思います。前回よりも全体的に賑やかなライブになりそうです。お客さんたちは本当に慣れてらっしゃるからか、サイリュームがホントにピッタリ揃っているんです。色も私がイメージしたままですから。ぜひ付属するライブBDで昨年の公演をご覧頂いて、ご準備の参考にして頂けたらうれしいです。
(取材・構成/日詰明嘉)
CDデータ
■オリジナルミニアルバム「Journey & My music」
初回限定盤(CD+Blu-ray) 3,800円(税別)
レーベル:バンダイナムコアーツ/2019年1月23日発売
通常盤(CD) 2,500円(税別)
レーベル:バンダイナムコアーツ/2019年1月23日発売
〈収録曲〉
1.My music
2.BLACK CAT
3.雪に咲く花。蜃気楼。
4.ファインダー
5.バレンシアガール
6.Journey
〈初回限定盤Blu-ray収録内容〉
《渕上 舞 1st LIVE “Fly High Myway!”at 舞浜アンフィシアター》
1.おはようの合図
2.Fly High Myway!
3.Migratory
4.ラララ~君へ贈る歌~
5.A Crow
6.フラミンゴディスコ
7.アイTACTICS
8.Cute♡Appeal
9.Beautiful Sunday
10.君と雨に歌うソネット
11.おやすみのワルツ
Encore
12.トロピカルガール
13.Fly High Myway!
※初回限定盤・通常盤ともに2019年4月開催 2ndライブの先行応募案内を封入